凹まされた日
真夜中のとあるバー。そこで一人の男が泣きに泣いていた。
「……ねぇ、いい加減泣き止んだら?」
「でも、でもさ、ママ、ひどいと思わなぃ?」
「はいはい、たかが女に振られたぐらいでそんなに泣かないの。と、言うか店閉めたいからもう出て行ってよ」
「そんなぁ……ママまでひどい……女は身勝手だぁ」
「はいはいはい、水飲んで、さ、さ、お帰りなさい」
「うぅ、ママはないの? 大恋愛の末の失恋……」
「うーん、まぁあるけど……」
「話してよ! そしたら帰るからさーぁ」
「そうねぇ……まあ、いいけど……。
昔、ある男性に恋をしていたの。美しい顔立ちだったわぁ……。
中性的で、それでいて男らしくてね。ただそれ故、何人も女がいたの。
女たちも他の女の存在には薄々感づいていたみたい。
そしてその何人かは彼が自分との関係を終わらせようとしている事にもね。
ある夜、いつものように彼の部屋のベッドで楽しんだわ。
でもね、我慢できなくなっちゃったの。どうしても彼を自分のモノにしたくてね。
だから、彼のアソコがもうこれ以上無いってくらい硬くなった時にバッグに入れていた枝切りバサミを取り出して」
「嘘……」
「……この世のものとは思えないような声を上げたわ。
でもそれはほんの少しの間だけ。だってすぐに気絶したからね。
切られたモノはどうしたか?
悲鳴の中、手から零れ落ちるのが見えたわ。
ふふふっ、血で滑ったのかそれとも出血でペットボトルロケットみたいに少し勢いづいたのね。
ま、それ以来、結局彼のモノは私のモノ。
でもまぁ残念ながら彼とはそれっきりお別れになっちゃったんだけどね」
「え、え? 冗談だよね? はははっ……」
「見る? 保存してあるの。どうしても手放せなくてね。
ん、いいの? ……っと酔いは醒めたようね。タクシーはいる? いらない? あ、また来てねっー……って聞こえてないか。すごい勢いね。
……ただ別れただけならまだマシって話よね。
私みたいに大事なところまで切られずに済んだんだから……」




