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雉白書屋短編集  作者: 雉白書屋


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エア・キャット

 あたしは空想の猫を飼っているの。

 と、待って。哀れまないで。

 ……いや、仕方ないことなのかもしれないね。事実、猫を飼いたいというあたしの再三の要求は両親に全て却下され、空想の猫を生み出すことを余儀なくされたのだから。


 やり方? まずは外見を想像。ちなみに成猫ね。

 ホントは子猫がいいけど成長していく段階を想像するのが難しいのと、成猫の方がよく外で見かけて動きのイメージがつきやすかったから。

 次に色決め。模様があるよりも一色のほうがイメージしやすいのはわかるよね。黒か白。

 黒は……不吉っぽいかな。迷信だけどね。カッコいいし。白だけってのもうーん。茶色にしておこうか。

 お次は集中し、歩いてくる姿を想像する。と、そんな具合で、もちろん最初はうまくいかなかった。 でも石の上にも何とやらで、小学校高学年から始め、中学二年生の今、だいぶ形になった。

 姿だけじゃなく、鳴き声も聞こえる。それに何も自分の部屋限定じゃない。外でも、学校でも自由に連れて行ける。


 だからクラスの馬鹿たちがちょっかい出してきても気にならなかった。

 ほら今も膝の上に、温もりまで感じる。

 ……で、あいつらがまた絡んできて、場所が場所だけにさ、階段の近くで、それで、正直怖くて、だから、あの子に


「……と、そんな感じだったんだけど。まあ、信じてもらえないよね。

でも本当なんだよ? ほら、あたしの膝の上。まあ、見えないよね。

とにかく、あたしがあいつらの首を切り裂いたんじゃないってば。本当に、本当で……」


 少女は次第に声に力をなくし、取調室の壁の一点を見つめ始めた。

 時は次の授業のために移動中で、現場は階段。事が起きた瞬間のクラスメイトの目撃証言がないのは、我関せず。普段から彼女が苛められていることについて、一様に目を逸らしていたからだ。

 だが、彼女がやったに違いない。少女の爪にはまだ被害者の肉片が入り込んでいる。

 この少女は頭の悪い子ではない。精神鑑定狙いかもしれない。

 そう考えた刑事は気合を入れ直し、もう一押しかけてみるか、と椅子の背もたれに背をつけ、ふっーと天井を仰いだ。

 

 その瞬間。

 背後から唸り声がした。

 そして首筋にかかる息遣い……。

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