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雉白書屋短編集  作者: 雉白書屋


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マスクを投げ捨て

 その男は家の扉を乱暴に閉めた途端、これまた荒々しくマスクを取って投げ捨てた。

 こんなご時勢だ。警戒しておくに越したことはない。とは言え煩わしかったのだ。

 冷蔵庫からビール瓶を取り出し、栓抜きで開けると険しかった彼の顔がようやく緩んだ。

 ビールを飲みながら請求書の紙を踏み潰しながら歩く。そして所々穴があいた茶色の一人用ソファに腰を下ろすとテレビを点けた。

 リモコンの効きが悪く、あと二秒遅かったらこの部屋の壁同様、テレビに穴を開けていたことだろう。そのテレビから目に最初に飛び込んできた映像は今日のウイルス感染者数の発表。

 流行り風邪だ。街の様子と題され、テレビに流れる映像にはマスクをつけ、下を向いて歩く人々の姿。

 彼はケッと悪態をつく……その時だった。


 家のドアがブチ破られ、窓も割れた。そこから入ってきたのはウイルスによって凶暴化した人々……というのは、このあと放送予定の映画の話で実際は重装備の警察官が彼に銃を突きつけた。

 彼は両手を上げ、ビール瓶はその手から落ちた。

 警察官は距離をとりつつ、彼を取り囲む。

 と、一人の警官が床に落ちていたマスクを彼に投げつけ言った。


「店からここまで街の防犯カメラに映っていたぞマヌケ」


 嗚呼、間抜けなこの男は、この防犯カメラたくさんのご時勢に警戒しコンビニ強盗したときのまま、着けたマスクを外さなかったのだ。

 膝の上で目出し帽がニヤケ顔で彼を見上げていた。

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