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雉白書屋短編集  作者: 雉白書屋


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その怪物

『怪物』見ればどんな人間であれ、そう言うであろうそれは目は血走り爪は鋭く伸び、伸びた体毛。汚れた歯。口から涎を垂らしている。小柄ではあるが気性が荒く、街に出れば好き放題暴れ、散らかし、店の商品に噛み付く。

 店主は抵抗せず、その様子を興味深そうに眺めている。衆人もそうだ。逃げようとせず『怪物』の一挙一動に「おお」や「わー」と声を上げる。


 何故、誰もその『怪物』を恐れず、怒らないのか。叩かれ、噛み付かれても嬉しそうなのか。

 飼い主が権力者。それは否定しない。事実、『怪物』にはお供がいる。それは言わば見張り。『怪物』が逃げようとすれば直ちに捕らえるために存在し破壊行為を止めようとはしない。

 では衆人は彼らの怒りを買わないように媚びへつらい、無抵抗でいるのか。いや、そうではない。


 かつて『人間』と呼ばれたそれは一度滅び今はロボットが支配する世界に、彼らの科学技術によって再び生まれ落ちた。

 この世界唯一の人間。取り決めにより、教育を含む一切の手を付けることは許されず、天然、そのままの姿。その物珍しさは非力による、ささやかな破壊行為など許容に値する。その証拠にロボットは先程、腕につけられたわずかな歯型を自慢げに見せ合う。


 鉄と銀の冷たく無機質な街。その景色に不釣り合いな『人間』はどこか悲しげに涙を流す。

 それを見てロボットたちはまたしても「おお」と声を上げるのであった。

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