死に場所を探して :約500文字
横断歩道。行き交う人々をぼんやりと眺める。
車、車、車。
大きなタイヤ。
頭を一瞬でぺしゃんこに潰してくれそうなほど、大きい。
白線、白線、白線。
並ぶ白線。その隣に、影のような黒いシミがあった。誰かが飲み物をこぼしたのか、それとも車の燃料が漏れたのか、理由はわからない。だが、こうして俯瞰で見ると、そのシミは奇妙なことに、人が横たわっているような形に見えた。
もしかしたら……。
僕はシミの前に立ち、その上に重なるように横になろうとした。
「おい!」
その瞬間、背後から突然怒鳴り声が飛んできた。
男だ。
「どけ! おれの場所だ! やっとだ……やっと……!」
男は僕を乱暴に押し退けると、シミの上に横たわり、ぴったりと重なった。
そして、安らかな顔を浮かべたその瞬間、男の体は静かに、じわじわと溶け始めた。
アイスが炎天下に晒されたように、輪郭が崩れ肌の色が溶けてアスファルトに染み込んでいく。
やがて、男の姿は完全に液体となった。
それから、端から徐々に乾いていき、消えていった。
すると、あの黒いシミもじわじわと薄れ、ついには何も残らなかった。
おそらく、あそこがあの男が死んだ場所だったのだろう。
ああ、僕が死んだ場所はどこだった?
断片的な記憶を頼りに、今日も彷徨う。
死に場所を探して。




