表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
雉白書屋短編集  作者: 雉白書屋


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

10/705

マリーさん         :約1000文字

『わたし、マリー。今、あなたが住んでいるマンションの前にいるの』


「え、え? な、なに言って――」


 突然かかってきた電話は、話し終える前にブツッと切れた。

 マリー? 似たような名前の怪談話なら聞いたことがあるが、「マリー」というのは初耳だ。子供の悪戯だろうか? 小学生くらいの女の子の声だったし、ありえなくはない。でも、今時わざわざ……あ、またかかってきた。


「あ、あ、あの」


『わたし、マリー。今、エレベーターの前にいるの』


 またも一方的に電話が切れた。おれの部屋は三階だ。この流れだと、次に電話が鳴るときはおそらく部屋の前にいるはず。今から逃げても鉢合わせする可能性が高い。それにまだ半信半疑だ。でも、もしこれが本当なら、良くない展開が待っていそうだ。ああ、電話なんか出るんじゃなかった。久々の着信だったからつい嬉しくて出てしまったけど、まるで時限爆弾を手渡された気分だ。

 ん? 考えてみたら、携帯の充電すらしてなかった気が……じゃあ、あれは本物で……ああ、また着信が……


「……もしもし?」


『わたし、マリー。今、あなたの部屋の前にいるの』


 やっぱりだ。逃げるならベランダしかない。そう考えたおれは、携帯を手に、ベランダに出た。悪戦苦闘の末、なんとか下まで降り立ったちょうどそのとき、電話が鳴った。


『わたし、マリー。今、あなたの部屋に……何これクッサ! 痛っ! なんか踏んだ! もう、汚いし足の踏み場が……え、今、何か動いた……あっ、ちょ、何この部屋! いや、いやあああああああ!』


 部屋を最後に掃除したのはいつだったか。引きこもり生活を始めた頃と同じくらいだと思うけど、思い出せない。確かに、あんな部屋に入ったら、おれ以外のやつは気が狂うだろうな。何しろ、得体の知れない虫がそこらじゅうにいるのだから。

 少しかわいそうな気がしてきたけど……久々に吸う外の空気は思った以上に心地いい。悪いけど、もう少しこの満天の星空を少し楽しませてもらうとしよう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ