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悪と呼ばれた女が聖女なら  作者: いしこ
2/2

魔法

途中までですが

ガローレ国の最南端。


ハカラの街の裏側に、ギルドとスラムと娼館のある花街が隣接している。

お互い持ちつ持たれつ。協力し合うことで生き延びている人間も数多くいた。

誰でも受け入れ、そして誰も引き止めない。


そんな場所のギルドに、ひょっこりと顔を出してみる。

「いらっしゃい」

古い木造で二階建てのギルドに入ると、ギシ、と床が軋んだ。その奥にあるカウンターから、若いがやや嗄れた女の声がする。

髪の長い、妖艶な女が、くわえタバコでコップを磨いていた。

「わたくしーーーー。いえ、私、初めてですの、、、んん、なんですが、登録をしてもらえますか」

口調がまだ定まらず、戸惑いながら女性に話しかける。


「登録?そんな細腕で?あんた、何ができるってんだい?」

訝しげにわたくしを見てくる。

「回復魔法を少々」

にこり、と笑ってみると、更に眉間に皺を寄せられた。

急に聖女の力などと言うとおおごとになりそうだし、普通職の回復師ということにしてみたのに、何がそんなにおかしいのでしょうか。

「、、、回復できるからって、誰でも連れて行ってもらえるわけじゃないんだよ。それだけの経験と知識と体力が必要でね」

なるほど、わたくしが弱そうに見えたわけですね。回復魔法が使えても、冒険の邪魔になってはならないと。

まぁそれはそうでしょう。

しかし、わたくし、武術、剣術もそこそこたしなんでおりますのよ。

「大丈夫と思いますわ、、、よ」

語尾を言い直すと、ちらりと疑わしい視線を投げつけてきたので、そのまま受け流すように、視線を反らしてみせた。

「、、、ふぅん」

くわえタバコの煙が顔にかかる。女性が顔の前まで近寄ってきた。

町娘の格好。顔がバレないように、あえて地味な化粧をしてみたのだけど。何かおかしいところでもあるのでしょうか。マジマジと皮膚を眺められます。


「、、、没落貴族、、、ってところか」

ーーー没落???


「身なりは悪いが姿勢や物腰は隠せてないからなぁ。しかしこんなところに来ると言うことは、金に困ってるんだろ。ーーーとなると、没落貴族様だ。わかった。身を粉にして働きなよ」

にか、っと女の人は私に歯を見せて笑ってみせた。意外と悪い人ではなさそうでした。


しかし、子供扱いされたのか、頭をポンポンと叩かれたのはいただけません。

この17年という人生の中で、気軽にわたくしの頭を叩く人なんて、ひとりもーーー。

(ポン)

「お。この子、回復師か?美人じゃん、俺のところ来るかぁー?」

また頭を叩かれた。

口を開いた途端、酒臭くて私は鼻がよじれるかと思った。

何日か風呂に入ってないようなベタベタした長髪の、おじさんが後ろに立っていた。

「バァカ。あんたなんかに任せられるわけないだろ。一緒のチームにしたら、明日のマハ川にボロボロの姿でこの子が浮かんでるだろうよ」

なんと。

「てめぇ、アリス。人聞きの悪ぃことを言うんじゃねぇよ。怯えさせるだろぅが」

「人聞き悪いんじゃなく真実だろ。この前のあんたの横にいた女の子、泣いて街から出ていったらしいじゃねぇか。絶対ヤガンのせいだろ」

ヤガンと呼ばれた男が少したじろぐ。

「あれは俺のせいじゃねぇ。あの子が薄着してたから、俺がちょっと触ったら泣き出したんだよ」

「クソ野郎じゃねぇか」

「お前みたいなオバハンじゃねぇからなぁー。つい触っちまうんだよ。悔しかったら若返ってみろってんだ、へへへ」

開き直ったヤガンに、アリスが回し蹴りを食らわした。鮮やかな一撃。

「大グソ野郎が!!!肥溜めに入れてやろうか」

確かに。

ふっとんでいったヤガンに構うことなく、アリスはわたくしを振り返った。


「まぁ、あんな男に関わったら大変だからな。ギルドに入るなら、ちゃんとこっちで仲間を調整することもできる。だが、まずは力量を確かめさせてもらわないとな」

おい、とアリスはギルドにいる連中に大声で話しかける。

「この中で怪我してるやついねぇか?」

ぐるりとアリスは見渡す。

「今なら出血大サービス!美人回復師様が回復してくれるぜぇ」


言うと、わらわらと男どもが手を上げだした。

包帯で巻いた傷口をあけて、治療して欲しいと我先に近寄ってくる。

並ぶ男ども。

見ると、普通に切り傷もいれば、あかぎれ程度の人もいる。

さて、とわたくしは考える。

おおごとにならないように聖女と言わず回復師と名乗ってるわけで。ここで全ての傷を治すことも可能だけど、あえて、切り傷を少し痕が残るくらいにするべきだろうか。

傷を治すかなおさないかの微調整で終了して、次の人に代わってもらう。

数人手当したところで、アリスから

「疲れてないかい?」

と聞かれる。

やろうと思えば一瞬でこのギルド中の怪我から病気を治せるだけの力があるので、このくらいの怪我、一人一人なおしたくらいで全く疲れるはずもないけど、聞かれるということは、『普通』は疲れる程度のものなのかもと思い、少し疲れたふりをする。

「そう、、、ですね。ちょっと疲れました」

よろっとよろけてみせたら、アリスはじわりと目を細めた。ふぅん、と鼻を鳴らされる。

「、、、ミナギ」

「はい」

アリスの後ろで黙って立っていた男が返事をする。かなり背の高い男で、ボディガード的な補佐役だと思われる。

「おじょうさん、この男の足も治せるかい?」

明らかに屈強そうな男だけど、確かに1歩前に出ると、わずかに体のバランスの悪さは感じた。最近ではなさそうなので、昔の怪我をひきずっているようだ。

このくらいの怪我なら、治すほどでもなさそうだけど。

だけど今までと同じように、少しだけ残して怪我を治してみせる。

すると、男ははっとした顔をして、アリスと目を合わせた。瞬間、アリスはさも可笑しそうに笑った。

「、、、なるほど」

なにが、なるほど、なのかわかりませんが。








途中までですみません

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