第82話 そういうことなんだよ
「そして、そのままこっちに来た。
旅の途中でいくらでも後悔したし、吐くほど泣いたし、整理もつけたよ」
「うん……」
「俺の目的は、熾天化っていう魔法の情報を集めて、真相を突き止めること。
そもそも、あのシャーロットとかいう女だって何者かわかっちゃいない。
それらを全部調べて、そして……叶うなら、エリクとマリィと仲直りしたい」
嘘だ。
何となくわかっている。
もうマリィは帰ってこないと思う。
エリクも俺を許さないだろう。
分かっているけれど、まだ俺が飲み込めてないだけ。
自分で言っていて気付く。
俺は、ガキみたいな我儘言ってここまで来た。
そして、アオザホース牧場やカンメラ、セツナを巻き込んだ。
俺は、ここに来るべきでは────────
「そっか。
なら、今回のことはきちんと解決しないとね」
「────」
「? どうかした?」
「いや……なんか、何とも思わないのかと思って。
あ! いや別に反応が軽いって意味じゃない……俺は何かも逃げ出してきたから。
だから、その、偉そうな事言って、カッコつけてあんだけお前を説得したのに、こんな……」
言えば言うほどずしりと自分に暗い感覚がのしかかる。
でも、セツナの返事は驚くほど軽かった。
「え? だってそれはそれでしょ」
「えっ」
「えっ」
二人で顔を見合わせる。
「いや、だって過去に何があったからって、アラタが僕を助けてくれたのは変わらないだろ?」
「い、いやそうだけどよ」
「もう、なんだよ、情け無いなぁ。
僕はアラタと組みたいって言ったんだぜ。アラタはそれを受けた。
だからもう、そう言う事なんだよ」
ニカっと、セツナが笑った。
その顔には少し赤みがあって、照れ臭がってるような気もした。
なんだかいつもそうな気がする。
案外他人を勇気付けようとする時、何かを叫んでる時、俺は自分も不安になっていることが多い。
そういう時に限って、いざって時に限って、セツナに勇気づけられたことが、割とあるような気がする。
それは、信じて貰えているっていう安心感なのだろうか。
暗く冷たい儀式部屋の中で、ほんの少しだけ指先が暖かくなったように思えた。




