第79話 アラタの過去⑦
「進化……だと?
あり得ない、印章術を外部からの介入で変化させるなんて!」
印章術とは、自身で行使した魔法を記録して、後から即時行使出来るようストックしておく技術だ。
即ち、一度組み上げた印章術は、出力の違いはあっても同じ魔法────効果しか発揮しないはず。
勝手に他人が弄ったり、まして現象そのものを変化させるなんて聞いたことが無い!
「ふふ、なら試してみるといいわ。
彼女の魔法の、その進化の有様をね」
「ほざけよッ!!」
叫び返すと同時、化け物の腕が再びこちらへ伸びる。
足元の槍を4本抜き、2本ずつで束ねる。
槍は二又になり、迸る光が増した。
2本の二又槍で迎え撃つ。
マリィの瀑流城塞には弱点がある。
それは、来る攻撃を"彼女が分かっている必要がある"ということ。
認識している魔法を返すのは自動でやるが、認識できてないモノは跳ね返せないんだ。
だから、この二又槍はマナコントロールで先端を何重にも僅かに割いている。
見てくれは二本の槍、だがその実は数百の雷撃の連続。
目の前のコイツをマリィだと言うのなら! これで聞くはずだッ!
そう思い、槍を振りかぶる。
が。
「!!?」
目の前の化け物の眼と視線が重なった時、異変が起きた。
振りかぶった後ろの刃先から感じる引力。
まるで中空に槍が引っかかったような────────
横を見やる。
俺が食らわせようとしていた雷槍が、歪んでいる。
迫る爪へとぶつけようとしていた刃先が、"力を込めれば込めるほど俺の身体へ向かってくる"……!!
直後。
「がっ……!」
化け物の腕が俺を吹き飛ばし、壁へ叩きつけられた。
まさか、こいつ……触れる前から魔法を反射させるのか……ッ!?
「あー君」
化け物が目を閉じ、声を発する。
畜生、その声で喋るな。
お前がマリィだなんて、俺は、俺は────────
「あー君」
(クソ、いい加減────)
化け物を睨みつける。
その時、奴の臍のあたりで何かが煌めいた。
(!?)
しかし直後に目が開き、腕を伸ばしてくる。
すかさず雷槍を自身に刺し、身体を加速させて回避する。
……脚が軋む。もう、長くは戦えない。
同時に、考えていた。
あー君という声……あの時光ったのはなんだ?
そもそも、離れた位置から反射させられるならハナからそうすればいいのに態々そうしない理由はなんだ?
多数ありながら、何度も開閉するあの眼────────
──────思考が、繋がる。
俺は一つの仮説を試すべく、雷槍を追加で脚に刺し足す。
雷が、踵から走った。
シャーロットが表情を変える。
「へぇ、あの自由度。
カムイの後継は伊達じゃ無いのね」
「四式雷蹄陣……物は試しだ。
マリィ待ってろ、すぐ戻してやる────!!」




