第71話 弄ばれた肉体
闘いの音が止む。
ヒビの入った家屋の壁や、土のままの整備されていない路面には、黒く澱んだマナの鎖で縫い付けられた死体達が散らばっていた。
「も、もう終わりか?
もう出てこないよな…うぷ」
「お、おいおい大丈夫? 倒れたりしないか?
肩なら貸すよ」
少年は死臭に毒性の強いマナのが相まって、その不快感を足元へと吐き出した。
セツナはその背中をさすってやり、他の3人は動く屍どもの解除方法を調査していた。
正直、全員が消耗している。
早く敵の手がかりを見つけ出し、この場を立ち去らねばならなかった。
「見つかりましたか、ロザリア・アオザホース。
私も一体解体してみましたが、魔導具らしき物体は確認できませんでした」
「…………」
「? ローザ?」
カトレーヌが声をかけるも、死体の前で動かないロザリア。
クリスティナも心配して名前を呼ぶが、ロザリアは黙ったまま死体を頭から順にゆっくり撫で……終いに、口を開いた。
「皮膚の上からマナを流し、探しましたが私の医療術ではわかりませんでした。
さらに皮膚に縫合の痕もない。
恐らく毒属性……しかも生物にとって極めて"有害と感じにくい"成分でできている可能性があります」
カトレーヌが目を見開く。
彼女はこの魔法の危険性をいち早く見抜いた。
有害と感じにくい……即ちそれは、"混ぜ物として適している"ということ。
この魔法が重大な魔法犯罪に使われる可能性を示していた。
ロザリアが続ける。
「そして、もう一つ」
「もう一つ?」
「体にかかっているはずの魔法の証拠が物質として目に見えない……つまり、身体を捌いても尚見えない場所に仕込まれているかもしれないということ。
そう、例えば……」
ロザリアは、カトレーヌが分解した死体の、腰骨の一節を掴み、祈りながら……引き抜いた。
「「「!!!」」」
カトレーヌ、クリスティナ、セツナが眉を顰める。
ロザリアが引き抜いた、死体の脊椎。
その断面が、生きた魔法陣のように、歪な紋様のまま脈打っていた。




