第67話 魔法を編むということ
獣皮紙を広げ、本を見ながらレシピを書き込んでいく。
ある程度書き終えたら、巻物に加工して持ち歩けるようにする……これで、自分が以前使っていた魔法の式はメモった。
「ミハイル、だったよな。
これ、見てみてくれ」
「え? うわっと!」
ミハイルは、俺が軽く放り投げた獣皮紙の巻物をキャッチして、それを開く。
中には加速魔法と雷属性の基本である麻痺魔法、雷装魔法等のシンプルな魔法とそのレシピが書いてある。
「これ……魔法のレシピじゃんか。
見せていいのかよ?」
「大丈夫。そこに書いてあるのは一番汎用性のある部分で、俺はその派生系を組むからネタバレにはならないよ。
そっちの方が使い勝手がいいなら使っていい。
写しは取ってあるから、遠慮なく持っていってくれ」
魔法のレシピは、通常解析されてはいけない。
何故なら、魔法使いが魔法のレシピをわかっている場合、その魔法を無力化する術を解っているのと同じだからだ。
魔法は供物を用意し、予め定めた儀式を行い、そこに人間の生命力────多くの場合それはマナと呼ばれる────を最後の一滴として落とすことで、ありとあらゆる現象を発生させることを言う。
同時に、定めた儀式とは反対の行動を取ることでその魔法に逆的負荷をかけることができてしまう。
魔法使いは"反転コード"なんて言ったりするが……まぁ流石に魔法を教えられていればミハイルも分かっているんだろう。
今彼に渡したのはレシピの基本形。
そこにアレンジを加えるつもりだから、彼の参考になればと思って見せてみたわけだ。
「さて……」
あとはこれから作る万理印に何を記録するかを決めなければいけない。
……嫌でも、熾天化したエリクのことを思い出してしまう。
アイツの魔法は、進化していた。
アイツの灰色の刃は、本来"魔法を強化・弱化"する力を持つ。
だから一度斬られると弱化の呪縛がかかって行使する魔法が極端に弱くなってしまうんだ。
だがあの時はそれだけではなく、間合いの中に入った雷槍さえも弱体化して見せた。
つまり、魔法が現象として表れた時点で、奴はそれを衰弱させることができる。
なら俺が今まで使っていた雷槍は役に立たない。
別の方法による攻撃魔法を備えるか、或いはエリクによって弱化させられない何かを作るか────課題は、山積みだった。




