第64話 事情聴取
「まさか、お互い少年と一悶着あるとはなぁ」
「確かに。けれど、やはり問題に一番近い場所に居るのがこの子達という証左なのかもしれません」
「ん、なら取り敢えず話を聞かなきゃね。
僕はセツナ。君の名前と、最近変な事とか無かったかを教えて欲しいな」
俺とセツナとクリスティナの3人は、談話室に2人の少年を座らせて話を聞いていた。
2人は緊張した様子で縮こまっていたが、俺たち全員の前に供されたミネストローネを見つめている。
軈てクリスティナ達が連れてきた方の子がミネストローネに口をつけ、ぽつぽつと話し出した。
「名前は、無い。気づいたらあの辺に居たってだけだ。
変な事ってのは、さっきの化け物と、死体が消えることかな……」
「ちょっとまって、メチャクチャ物騒じゃない?」
「んーん、人が冷たくなってるのなんて偶にはあるよ。
でも普通は言ったらここでお祈りしてもらえるのに、人を呼んでまたその場に行くと消えてるんだ!」
死体を何かに使っているのか?
いや……今回の発端は人攫いだ。
無闇に結び付けると分からなくなるかもしれない。
「死体が消える、ねぇ……」
「クリスティナ、ロザリア達の首尾は────」
「丁度、今終わったところですね」
「うおぁ!?」
ノータイムの返しと共に談話室の扉が開く。
運び込んだドープの調査を行っていたロザリアとカトレーヌだ。
「結論だけ言おう、ドープが動いたのは間違いなく印章士の仕業だ」
「! やっぱりそうなのね、ローザ」
「はい。
ドープの死体から明らかに人為的なマナ流動……即ち魔法の形跡が見られます。
熾天化しているという可能性も否定できませんが……それはそれで人為的なのでどの道違いはありません」
「付け加えるなら、死体の胃袋からはそれなりの物が出て来たので。
今"副院長さんに確認をとっていただいている"ところです」
「「「!!!」」」
カトレーヌの言葉に俺を含めた3人が息を呑む。
副院長が確認する必要のある、胃袋の中身──────。
即ち、そういう事なのだろう。
「……やっぱり、そうなんだ」
「? ミハイル君?」
「やっぱり印章士なんだ!
畜生、シスターや俺たちを馬鹿にしやがって……!!」
「お、落ち着け、いったいどういうことなんだ」
目に涙を溜めて、ミハイルは話し出す。
「シスターは魔法が使えるんだ、だから俺たちに魔法を教えてくれたんだよ。
木材からちょっぴりの水を出したり、火を起こしたり、色々。
全部俺たちが生きるために教えてくれたんだ……それを、犯人は知ったんだ!
シスターが言ってた。魔法を一度でも使った人とそうじゃ無い人では、イケニエにしたときに差が出るって!
俺たちが、魔法をこっそり練習したせいか? そのせいで俺たちが狙われて、シスターに迷惑がかかって……!」
「……」
副院長の教育方針には、あまり口を挟むべきではないだろう。
魔法は危険な代物だ。
こうやって、魔法犯罪者の温床を作ってしまいかねないこともその危険の原因の一つ。
そう思う。そうは思うが同時に────────。
「君は悪く無い。
悪いのは犯人だ。だから、安心しろ」
「………くそっ」
小さく吐いた捨て台詞は、先程の暴れようからは想像できないほど弱々しかった。
「ふむ、であるならば魔法の使用痕を探す必要がありそうですね。
では今度はクリスティナ・アオザホースさん、ロザリア・アオザホースさん、セツナ・ニシティさんの3名で探ってきてください」
「? どうしてメンバー替え? 何か理由があるのかい?」
「教会で護衛をする必要があると判断しましたので提案しています。
そしてアラタ・ミアズマは教会に固定です」
「え? なんで?」
「……忘れているのですか、貴方は万理印が破損しているのですよ。
そんな顔をしている暇があったら早く構築を始めてください。
修復であれば、3日程度で可能でしょう?」
「あ゛ッ!!」
そうだ思い出した、俺の万理印はエリクに斬られて────────。
「……アンタ、もしかして魔法使えないのに前に出たのか?」
「ふ、ふふ……丁度いい、俺も印章術の勉強を実演してやるよ」
ミハイルからの容赦ない一言に、俺は顔が熱くなるのを誤魔化しながら見栄を張った。




