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第57話 敗北の果てに

 ヴァイス・トラヴェス号から漏れる灯りが、月に負けじと海面をゆらりと照らす。



 現在船の医務室には、船長副長、セツナらを含め5人が詰めかけてアラタの容体を見守っていた。



 セツナ達が駆け付けたあの後、シャーロットとエリクは無言で立ち去った。



 シャーロットの転移魔法は優秀で、セツナ達の攻撃も躱し瞬く間に空間の切れ間へと溶けていった。



 アラタを回収して急ぎ帰還しそのままアラタの治療へと移ったのだった。



「どうなの、ローザ?」



「────分かりません」



「分からない?」



「外傷がない。


 なのに目を覚さない……脈は荒れているので、恐らくはマナ流動の異常を喰らっているのだと想像できます。


 しかし……マナ流動の経路そのものが焼き切れてしまっていれば、私の医療魔法もかえって毒になりかねないのです」



「ええっ、それじゃ治らないって事っスか!?」



「こら、不吉なことを言うな…」



 アドルフ船長がシンシアの頭を小突く。



「なら、私の焱を使うのはどうかしら。


 (シャーロット)は熾天化を他人にかけることができる……熾天化した焱に触れさせれば、何か分かるかも」



「その手がありました、さすがお嬢様です。


 セツナも、それで構わないか」



「え? あ、あぁ、うん。


 任せるよ。治癒は二人の領分だしね。


 僕はマギビークルの整備してくる、また何か襲ってくるかも分からないし」



 セツナはそう答えて医務室の扉をそっと閉じて行った。



「……彼女も歯痒いだろう」



 アドルフが呟く。



「でしょうね。


 ですが連中の狂言に真っ先に立ち向かったのも彼女です。


 なれば、私は彼女の想いに報いるべきでしょう」



「ええ。失敗なんてしないわ、必ず────!」



 横たわるアラタに向かうロザリアとクリスティナの目は、燃えていた。



「おお、二人とも気迫凄いっス〜……んで、狂言ってなんすか?」



「あぁ……それはだな────ッ!?」



 感嘆しながら問うたシンシアに対して、ロザリアが答えかけ────そして止まった。



 ロザリアの目の先には、アラタの手首に仕込まれていた万理印となる鍵。




 そこから漏れたマナが映し出した円形のはずの印章の輝きは、不気味なほどに歪な形へと変容していた。

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