第37話 不穏な気配
現在、トラヴェス号では船員達によるアメノハヤテの解剖が行われていた。
俺の槍が命中し間も無くして撃ち込まれた副長の衝撃波は、奴を絶命させるまでに至った……のだが。
アメノハヤテは消滅することもなく、ただ絶命したのみだった。
俺の予備知識では、"熾天化"にかかった印章士が万理印を壊されると消滅してしまうということしか知らない。
というわけで、現状謎多き存在であるアメノハヤテを引き揚げて生態を調べようということになった。
幸い開拓に向かうにあたって魔獣の研究員もいるし、もしアメノハヤテについて情報が得られるなら、今回の調査の実績の一つにもなるだろう。
「……お嬢様、やはりお顔が青いですよ。
無理をせずに休まれては」
「いいえ。大丈夫よローザ。
相手を殺す気で対峙したのです、ならば目を背けるべきではありませんから……」
アメノハヤテがバラされていく中で、クリスティナは少し青くなった顔で立ち会っていた。
「お嬢様は慣れてないのかい?」
「我が牧場は食肉用は繁殖させていない。
お嬢様がもちろん牧場のブル達を可愛がっているからというのもあるだろうがな……」
セツナも少し心配そうだ。
まぁ無理もない。血も出るし中々ハードだからなぁ魔獣の解剖は。
と、そんなふうに解剖している横で待っていると────────
「うわぁ!?」
「っ、どうした!」
解剖している研究員が悲鳴をあげる。
素早いレスポンスを返しながらアドルフが近づき、俺たちもその様子を見た。
そこには、異様な光景が写っていた。
「コアが……万理印に……!!」
アメノハヤテの首の付け根、ハヤテ種によくあるコアの位置。
そこにあるはずのマナの結晶体が、まるで万理印そのものになったかのように変形していたのだった。




