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第31話 脅威の機動力

 その時は、唐突に訪れた。



「発見! アメノハヤテ、距離4000、3600────向かってきますッ!」



「あ〜〜っ!? なんでまた見逃したんスかァ〜〜っ!!」



 操舵石脇で頭を抱えるシンシアをよそに、船内の緊張が高まり各々が戦闘態勢を取る。



「よっし! 乗ってアラタ!」



 甲板上までマギビークルを持ち出していたセツナがその万理印(パレット)を起動させた。



 飛び乗ってセツナの肩を掴む。左手には鍵。素早く槍を喚び出した。



 操舵席から声が飛ぶ。

 アドルフ船長だった。



「ミアズマァ! あの野郎は進路を島に取った途端に来やがった!

 "間違いなく阻みに来ている"ッ、やるしかない!」



「了解だ! いくぞ、セツナ!」



「おっけー、出るよッ」



 勢いよく駆動音が轟き、甲板を飛び出す。



 マギビークルの車輪が角度を変え、ふわりと水上に浮きながら滑るように加速していった。



「面舵を取れ! 魔法操舵班は万理印起動、印章士(アーキテクト)臨戦態勢用意ッッ!!!


 おいシンディ! お前も構えろ、ウェイブゾーン撃域展開急げッ!」



「う〜〜〜、絶ッッッッ対ブッ飛ばしてやるっスよォ!!!」



 船に響く怒号を背に、俺たちは駆けた。



 方向としてはトラヴェス号から10の刻の方向。



 船に対して正面から来ていたアメノハヤテ。

 それに対して船は右前方へ進路を変えている。



「僕たちは左から大きく回って、ヤツがこっちに来るならそれでよし。

 船に向かうなら、そのまま横っ腹を叩くよ!」



「あぁ、了解だ!

 そのまま向かってくれ、取り敢えず撃ってみる」



 槍を追加で引き抜く。

 だが今回はかなり細かく、小さく……ナイフくらいほどに短く小さな雷。それを5本ほど。



「それは?」



 セツナが後ろ目に見て訊ねた。



「まぁ見てな。

 ハヤテ種だってならある程度はコアが予想つくけど、それでも一応ってやつさ」



「……? ま、僕の仕事は変わらないか。

 さてもうすぐ近付くよ……アイツ、やっぱり船の方に行ってるぜ。なら斜めから突かせてもらおうじゃん!」



 速度を上げる。

 アメノハヤテは船側に逸れた。相手の斜め前方から槍をブチ込むのに絶好の向きだ。



 距離が徐々に縮まっていく。



「……っ、セツナ気をつけろ!

 アイツも撃つ気でいる!」



「おっけー。

 船かこっちか……来るなら来い────」



 アメノハヤテ、その翼の周囲の空気が僅かに揺らいだように見えた。



 奴が攻撃に集中しているというのなら、そこを突かせてもらおう────!



 直後、アメノハヤテの体がくん、と沈む。



 今だ────────!!



「おらぁっ!!」



 雷を放つ。



 小槍5本を先に投げ込み、遅れて通常の長さを1本。



 空中でアメノハヤテへと向かいながら5本の雷が後ろから飛ぶ槍の先端に吸い付き、六叉の槍となる。



 ハヤテ種は高速飛行を得意としている。



 なら、当たりやすくするように出来るだけ攻撃の着弾面を拡げたほうがいい。



 掠めるだけでもいい、そうすればその大してデカくもない図体に雷が染みるはずだ────────!!!!



 だが、雷は俺たちの思惑と共に外れる。



「なっ!?」



「うっそ、潜った!?」



 セツナも驚愕の声を漏らす。



 アメノハヤテは低空飛行に移行し、船へと向かいながら墜落した。



 ここで、先程の光景が浮かぶ。



 海に落ちてもなお、水棲魔獣を捕獲する機動力。



 普通のハヤテ種では考えられない。

 でも奴は、普通じゃない!



「まさか……っ!」



 突如、轟音。

 それは"足元から響いた"。



 少しして船が大きく縦に揺れ、その頭を斜め空へと向ける。



 それを確認してからとでも言うように、船の後ろからアメノハヤテは浮上した。



「水空両用、ってか。

 馬鹿げてる────────!!!」



 きっと船内の焦りようは尋常じゃないはずだ。

 早くアメノハヤテの注意を惹かなければならない。



 ヤツはそれを見透かしたように船の背後を取り、翼を大きく広げて見せた。

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