死体万歳
「納得できねーですね」
通信機を使いクオルが本部で待機していたティビエへ一連の報告を終えた。ティビエの端正な童顔は気難しく顰められている。
「ティビエさんの言い分は最もです。責任は全て私が取ります。ティビエさんが希望するのであれば部署変更や一時的に休暇なども」
「……アンタにそこまで言わせる奴をぶん殴りてぇとこですが、今は異世界から保護した少女ってのが最優先で守らなきゃいけねーよな? 仕事に私情を挟むつもりはありませんよ。俺はアンタの部下だ。アンタに従う」
「ティビエさん……」
「それで、俺は他に何しとけばいいんです? その少女はどこで匿うつもりですか。上の連中にバレたら面倒なことになりますよ」
「私の家で滞在して頂くつもりでしたが、相手の裏をかくなら教会か村で過ごして頂いた方が安全かもしれませんね」
「……いっそのこと、降福亭で匿いましょうか。昔は宿屋もやってたから部屋も余ってます」
「よろしいのですか?」
「下手に隠すよりはマシじゃないんですかね。娘と弟もいますし悪くない手だと思いますよ」
「ですが、リディベさんは」
「奴と別の場所で会せるなら構いません。教会には上が飼ってる協力員がいます。すでに第二部隊には監視がつけられました」
「わかりました。スピレドを護衛につけても構いませんか?」
「むしろつけといてください。護衛は多い方がいいでしょう」
「では、一週間ほど預かって頂けると助かります」
「わかりました。手配しておきますよ……それよりも言われた通り記録部の資料を集めましたが」
ティビエは大きく溜息を吐いた。資料を手元に集め不自然な文章を睨みつける。日付からして古い物から新しい物まであるのだが、その全てが最近になって改変されたようだった。
「隊長の権限でも秘匿された穴あきばっかじゃねーですか。前の職場だったから勝手に拝借してバラバラにされてたやつを繋げましたが怪しさ満点ですよ」
「やはり、上は情報操作していましたか」
「本部で消された記録は現地で確かめるしかないが、俺も今回のことでマークされたでしょうね」
「協力員に情報収集を頼むとしても、ある程度の実力と階級を持った死神でないと探れないでしょう。そうなると頼めるのは……」
クオルは組んだ手に顎を乗せ目を閉じて考えている。それが集中して策を思考する時の癖であるとティビエは最近気づいた。通信機越しにクオルの表情を確認することは出来ないので黙ってクオルの判断を待つ。
数秒後に告げられた今後の作戦を聞きティビエは口元を隠して笑った。
***
仕事を残しているクオルとロプサは死神結社に戻らないといけないらしい。魔力制御以外には特に問題が見あたらなかった為、月世はスピレドのサポートを受けながらピクシン村で一週間を過ごすことになった。
「わぁーなんだかすっごくファンタジー」
真夜中のピクシン村はアンティークな街灯が辺りを照らしていて、とても幻想的だと月世は心を弾ませた。砦に沿って石造りの倉庫や家が並んでおり、そこから少し離れたところに壁がオレンジ色で屋根が濃緑色のレトロな一軒の店が賑わっていた。
祭りが終わっても有名な観光地であるため、広場は巡礼者や観光客で賑わっていた。




