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死体少女《デッドボディガール》  作者: 小川幸子
【第一章】生かすも殺すも君死体
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死神に求められるモノ


 ロプサが簡単に世界情勢の話をする。月世ツキヨは知れば知るほど、ウェルノエアがファンタジー系RPGの世界に思えてきた。


「――こうしてウェルノエアは女神スオルによって成り立ち、今に至るとされています。女神の御許みもとへ魂を送り送られた魂が女神の元で清められた後に再び次の器に宿るとされ、ここからは死神についての話をさせて頂きます」

「あの、魂って存在がよくわからないのですが……さっき左目で視えてた光の球みたいなやつですよね」

「転移直後にお話しした魂の説明は覚えてらっしゃいますか?」

「……すみません、あの時は放心状態だったので覚えてないです」

「それでは改めて説明させて頂きますと、魂とは誰もが持つエネルギーであり存在の証です。視え方は人それぞれと言いますが、おおよそ光の球ですね」

「光以外だと、どんな風に視えるんですか?」

「よく視える方は光の中に模様などを確認し魂の状態が把握できます」

「へぇ。なんだか霊能者みたい」

「霊能力?」

「私の世界では第六感とか、とにかく不思議な力のことです」

「特殊能力のようなものでしょうか。とても興味深いですね……さて、話を戻しますが魂を持つモノは、場合によって前世の記憶を保ちながら輪廻転生を繰り返します」

「転生が公式なんですね!?」

「公式がなにかは、よくわかりませんが転生は一般的ですね」

「魔物にも魂はあるのですか?」

「いえ。魂とは別にかくと呼ばれる魂とは少し違ったエネルギーを持っています」

「知性や言葉を喋る魔物とかっていないんですか?」

「いますよ。魔力量や歳月によって進化し器が死を迎えたら、核は魂へと変化すると云われています」


 月世ツキヨは自分が倒した魔物に魂がないと聞いて少しだけ安堵した。命を奪ったことに変わりはないが、自分が生き残る為にしたことなので許して欲しいと心の中で祈りを捧げる。


「死神は魂を集めるのが仕事なんですか?」

「そうですよ。死神は亡くなった方から魂を回収し神の御許へ送る国際組織です」

「えっと……葬儀屋さん的な存在なのでしょうか?」

「いいえ、葬儀は死神の管轄外なので提携している教会が行います」

「どうしてですか?」

「死神が特殊な職業だからです」

「やっぱり死神ってなるのは深い事情が……」

「死神になるためにはいくつかの条件があります。その中で最も重要なのが魂を視て触れることです」

「もしかして魂って普通は視えないんですか?」

「普段は見ることができない魔族がほとんどです。その中で先天的に視える者もいれば、死にかけて後天的に視える方もいます。ですが、触れるとなると一握りの存在となるので死神になれる者は少ないのです」

「訳アリかと思いきや才能の部分が大きいということですね」

「なので触れることが出来るかを洗礼式の時に国が調べます」

「洗礼式?」

「ウェルノエアへ生まれたものは七年経つと魂が器へ完全に定着すると考えられ、降誕祭レナフェロから三か月後に教会へ集められ女神の祝福を受けます。その際に素質がある者を見極めるのです」

降誕祭レナフェロ?」

「毎年10月31日に行われる、女神生誕の日であり死者の魂が戻ってくる事を記念した祭日です」

「まさかの昨日だったんですね……祭日に働く死神ってブラックな職場なんじゃ」

「ブラック?」

「長時間労働、低賃金、各ハラスメントのある働き方を私の世界ではブラックと言ってます」

「なるほど。異世界の言葉は面白いですね。死神の仕事は忙しいですがブラックではないですよ。降誕祭レナフェロの日は持ち回りですし、やりがいのある安定した職ですよ」

「ちなみにお給料の方は」

「職種の中でも高いです。手当がつけば一年で家を建てられると比喩されてますから」

「すごい高給取りですね!お休みとかはあるんですか?」

「休暇制度はもちろんあります。交代制勤務なので取り方は個人によりますが」

「思ったよりも充実しててビックリです」

「部署によりますがね」

「あ、一気に怪しくなりました」


 ロプサが両手を振ると今度は組織表と要塞のような建物、そして月世ツキヨとロプサが初めて会った時と同じく顔をフードで隠すローブ姿の死神の絵が浮かぶ。


「死神が属する組織を死神結社しにがみけっしゃと言います。今いるレアノグ王国に本部を、各国には独立した支部が設けられてます」

「お役所仕事かと思いきや、軍事的な感じですね……」

「あながち間違ってはいませんよ。死神の役割は管理、回収、送昇そうしょう、討伐などの部署に分けられています」

「ロプサさんやクオルさんは回収の仕事をされてるんですよね?」

「えぇ。回収部隊も種族や有権者など担当を分けて六部隊あります。私は特殊案件と異世界担当の第二部隊所属です」

「今更なんですが、どうして異世界で魂を回収しているんですか?」

「理由は様々ですが、ウェルノエアの魂が何らかの影響で異世界に渡ってしまいウェルノエアで転生が出来なくなるからです。また、放置された魂が魔厄まやくとなることを防ぐためでもあります」

魔厄まやく?」

「回収されず消滅しなかった魂の成れの果てです。堕ちた魂が別の器へ入り込み、他の魂を取り込む災厄の存在……要するに魂の天敵ですね。死神が持つ大鎌ザダゼイクスでしか消滅させられないので、魔厄まやくと戦うのが討伐部隊となります」

「死神って危ない仕事なんですね」

「場合によっては魂を取り出すことを拒否する方との戦闘があるので死神には一定の戦闘力が求められます……ですが穏便に済ますことが重要なので、その為に礼衣レオブという認識阻害と防御性に優れた魔術具を死神は身に着けています」


 ロプサが言った魔術具は黒いローブと礼装の事だった。黒づくめのせいで怪しさが増加するだけかと思ったが魔力を通すことで効力を発揮する。だが、ローブとは別に月世ツキヨは疑問に思っていたことを口にした。


「死神の制服ってスーツなんですか?」

「喪に服すといった意味と王侯貴族に求められた礼儀作法の結果ですね。後は、異世界へ渡った時に違和感のない服装だからとも云われています」

「そういえば、どうして私の世界にあるような文化や服装があるのでしょう?」

「ウェルノエアは他の世界の影響を大きく受けているんです。転生した魂が別世界の知識を有していたり、死神が渡った世界で学んだ事を持ち帰る場合もあります」

「なるほど」

「前世の記憶や別世界の記録をまとめた書籍などもありますので、興味がありましたら本部の図書館へ案内しますよ」

「是非ともお願いします!」


 月世ツキヨは内心で飛び跳ねるほどに喜ぶ。異世界の知識は月世ツキヨにとってファンタジーそのものだった。


「次に管理という部隊ですが、死神結社の内務などを担当しています」

「人事とか経理ってことですか?」

「それらも担当の重要な仕事ですね。他にも死神になるための教育機関などを管理しています」

「魂に触れられたら死神になれるんじゃないんですか?」

「死神には戦闘力の他に教養なども求められるので、一から教育を受けます」

「うわぁ……思った以上に大変そう」

「洗礼式で素質のあった者に死神結社から黒い手紙が送られ招集されます。また後天的に触れられる方もいるので、その場合は志願制ですね。そして各支部で行われる面接に通ると本部で試験を受け、合格すれば最短で十年間デハト養成所というレアノグ東部に位置する教育機関で死神になるための教育を受けます」

「十年は長いと思ったのですが、最短ってことは」

「卒業試験に合格しない限り死神にはなれませんね」

「求められるモノが多すぎる……!」

「合格すれば見習いになり、さらに数年ほど実践を重ね番号をもらい部隊へと配属されます」

「死神になるのが難しすぎる……ちなみにロプサさんは死神になって何年目なんですか?」

「ほんの百年ほどです」

「長っ!?」

「いえいえ。ようやく若手から中堅になったばかりです」

「いつから死神になったんですか?」

「百十をすぎたくらいに養成所デハトへ入りました。それまでは家業を継ごうと思ってましたが、あるきっかけで死神を目指すようになったんです」

「ん?七歳の時に手紙がくるんじゃ……」

「年齢制限がないので、よほどの訳ありでない限りは成人後を過ぎてから死神を目指しますから」

「この世界の成人って何歳いくつなんですか?」

「種族で違うこともありますが、だいたい魂の安定する百ですね。成人といっても魔族にとって百はまだ半人前だと判断されることが多いので実際には百五ひゃくごじゅうを過ぎて一人前とも言われています」

「さすが異世界。魔族の寿命が長いが所以ゆえんなんですね」


 人間ヒトとは違うのだと月世ツキヨは思った。目の前にいるロプサだって見た目を遥かに超えた年齢をしているから魔族は容姿での判断がつきにくい。月世ツキヨがあれこれ悩んでいる間に、ロプサは両手を動かして床全体に魔術陣を展開していた。



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