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ロリウィッチは今日も戦う  作者: 夏目みゆ
6/8

ロリウィッチ魔物と会敵する

中ランク冒険者であるボウは、相棒のケンと冒険者ギルドで酒を飲んでいた。

彼等が居るのは、勇者達が召喚された国とは、魔の森を挟んでいる。

一仕事終えたばかりのボウ達は金があり、暫くはゆっくり身体を休めようとしていた。

しかし、無情にもその平穏は崩れる。


「た、助けてくださいっ!オーガが現れました!」


這々の体で、ボロボロな低ランク冒険者の青年が叫びながら入ってきたのだ。

オーガは危険度が中ランクであり、青年の様な低ランクの狩場には現れる事が殆ど無い。

彼等は4人であった筈だが、彼一人で此処にいる事が答えだろう。


「行くか」

「あぁ、若い奴らの命を無駄に散らせる訳にはいかねぇ」


魔の森は深部へと入る程強力な個体が増えていく、浅瀬にオーガの様な個体がいれば、それだけ周囲に被害が及ぶ。

下手をすれば、村が一つ無くなるのだ。


「シャーはどうした?」

「装飾品の冷やかしだろ、市場に行けば見つかる」

「女って奴は、キラキラしたもんが好きだよな」

「言うな、シャーは年頃の娘だ、血が流れる戦場よりもそちらの世界の方が似合っているさ」

「へっ、キザなセリフは本人に言ってやりな!」


お互いに笑い合いながら、彼等は再び死地へと向かう。



セブンスターはオレ様を抱えて、流星の様に空を掛ける。

オレ様、流星の事が嫌いになりそうだぜ。

巨大な森を木々を踏み台に跳ぶ、跳ぶ、飛ぶ。

跳びすぎだボケェッ!

お前どんな体力してやがんだ、宇宙レベルか!


だが、不意にセブンスターはオレ様を抱えたまま態勢を崩す。

絶叫マシンの様な浮遊感を感じながら、オレ様達は地面へと叩きつけられた。

勿論衝撃は全て奴が喰らったが、ザマァねェな。

猿も木から落ちると言うが、セブンスターもサルって訳だなッ!

ヒャハハっ!!


「す…まない、七瀬」

「安藤、さん?」


何故か変身が解けるセブンスター、息も荒く顔が真っ赤である。

なんダァ?

オレ様達が集団で襲った時もこんな風になって無かったんだが、初めてだな。

オレ様が奴の額に手を当ててやる。

くそっ、熱が高えな!

病原菌か?なんだかワカンねぇが……。

ラッキーだなっ!!

遂に、遂にセブンスターを葬れるゼェェェ!!

ヒャッホーウ!

やったー!!

やっぱり、オレ様が良い子にしてるから、神様のサービスだなっ!


「……七瀬、俺を置いていけ。俺一人なら、何とかなるが、お前を護れない」

「何を言っているのですか?」


あったり前だろうがァァ!

貴様は此処で死ぬんだよセブンスターァァッ!

つーか、病原菌か何かか知らねェが、奴が抗体を持たない病ならかなり有効みたいだな。

こんな弱点があったなんてな、案外気がつかねぇもんだ……って、オレ様もヤバくない?

慌てて身体を確かめるが、特に問題は無い。


そうか!

セブンスターは人造怪人故に、人間の部分があるせいかっ!

オレ様は完全な怪人故に病にならないが、コイツは違うからな。

やっぱり、怪人は最高だぜっ!


「安藤さん……」

「す……ない」


セブンスターは意識を失った様だ。

さて、トドメを……。

いや、待て。

此処でコイツが死んだら、オレ様の功績に出来ねェじゃねーかよっ!

評価上がんねェのかぁ……いや、でもこれまでの屈辱をっ!!

オレ様は奴を殺そうと右手に魔力を集める。

くたばれセブンスターァァァァァァ…ァァ………ぁ?


そしてふと気がつく。

右を見ても森、左を見ても森。

今のオレ様、迷子じゃん。


「あ、安藤さんっ!?」


返事が無い。

セブンスターァァァァァァァァッ!

せめて人里に連れて行ってから死ねやっ!!

うわ、急に不安になって来たぞ!

知らない土地での迷子ってやだァァ!!

どうする!どうするぅ!?

オレ様は暫く葛藤し、覚悟する。

コイツの弱点は分かった、だから今は生かす。

決してソロぼっちの迷子が怖いからって訳ではない。


「魔法創生、診断能力、作成」


魔力の少ないオレ様は、普段からコツコツと地道に魔力を貯蓄してきた。

魔法創生はあらゆる奇跡を可能とするが、対価の魔力も比例する。

それでも、コイツを助けるくらいの魔力は十分溜まってるだろ。

あー、クソッ!

セブンスターとの決戦の為に溜めてきたのに、助ける為に使うなんて付いてねぇゼェェ!


「診断……?特に異常は無いのです」


セブンスターはあらゆる毒や病の抗体を持っているし、特に異常は見当たらねェ。

何故か心拍数と体温上昇、内臓の不調。

一見病気だが、病となる病原菌はいねぇ。

魔力も普通に身体を巡って……アァン?

セブンスターに魔力だァ?

オレ様の専売特許の魔力を、ナンデェ此奴が……。

魔力が荒ぶってんな……。


オレ様は周囲を見回して気がつく、異常な魔力濃度に。

此処は、地球なのか?

今までこんな魔力濃度の高い場所は見た事ねェぞ?

魔の森なんて名前付けたくなるくらいに、魔力が濃いって事は、此奴は魔力に当てられたのか?

今まで摂取した事ない魔力を、突如大量に身体に留めた事による過剰摂取……急性魔力中毒?

まぁ、良くワカンねぇけど、魔力の過剰症なら体力付ければ何とかなるだろ、セブンスターだしな。

取り敢えず、水分補給でもさせて寝てりゃ治んだろっ!


って、待て待てっ!

魔力の過剰症って、病じゃねぇし、今を逃せば2度と無いんじゃねぇか?

どどどどど、どうする?


オレ様は頭を抱えるが、やはり日本に戻るまでは生かしておこうと結論する。

なんというか、取り返しのつかない予感がするが、良い子なオレ様の為に神様は微笑んむに違いねぇ。

そして、最後に笑うのはオレ様だっ!


「安藤さん、頑張るのです。魔力変換、物質作製」


オレ様は魔法でスポーツドリンクを作って宙に浮かせ、奴の口元に持っていく。

だが、寝てる所為でむせやがった。

オレ様の貴重な魔力を粗末にしてんじゃねぇよっ!

こういう時は、口移しが良いとか聞いたことがあったので、実行してやる。

マジでメンドクセェなぁ。

はよ死ぬなら、死ねよ。

魔力で物質作んのはめちゃくちゃ消費デケェし。

さて、後はセブンスターを担いで行くか、起きるまで待つかだが……。

オレ様の使った魔力から残り魔力を考えると、セブンスターを連れての移動は魔力がもたねぇかもしれねぇなぁ。

なんか、拉致られてからオレ様、自分の残り魔力がイマイチワカンねぇんだよなぁー。


「っと、お客さんなのです」


灰色の犬っころが複数やってきた。

群れなんだろうが、オレ様からすれば怪人以外が徒党を組んだ所で、ゴミ虫をまとめて潰せる良い機会になるだけだぜ。

犬っころ共は、オレ様の外見がプリーチでミニマムボディだから勝てると判断したんだろうが……。

チラリと後ろを振り返り、木に持たれかけたセブンスターの様子を伺うが、しっかり意識はねぇみたいだな。

オレ様はニヤリと獰猛に笑う。

尖った八重歯が最高にカッコいいぜ!


「ガウッ!」


リーダーらしきひと回り巨体な犬っころが吠えると、群れは一斉にこちらに駆けてくる。


「クソ犬共ガァッ!オレ様の獲物を狙ってんじゃねーぞッ!!」


オレ様が魔力を解放すると、金色の長髪が電気を帯びて蠢く。

磁力を発し、周囲の砂鉄を開いた両手に集め、槍を形成。

磁力のS極とN極を切り替え、高速回転させた槍を磁力の反発で放つ。

射線に入った犬っころ7.8匹に風穴を開けて即死した。

衝撃で怯んだ犬っころに接近し、超振動を繰り返す砂鉄の刃で次々に首をはねていく。


「只の犬共がぁ怪人様に勝てるワケねぇだろうがよぉッ!!」


背を見せた犬共には次々と砂鉄のナイフが突き刺さる、肉壁が無いなら貫通力はイラネェ、連射をするのだっ!


「グオォンッ!」


ひと回り巨体の犬が叫ぶと、赤いオーラを身に纏う。

んだありゃ?

彼奴も怪人なのかぁ?


「話がわかんなら、格上に手を出すんじゃねぇ。尻尾を巻いて逃げたら、見逃す事も考えてやるぜ?」


オレ様が笑って問いかけてやるが、此方の言葉が解らない様で、赤いオーラを纏って駆けてくる。

その速度は他の犬とは一線を引いている。

外国の怪人なのか言葉が分かんなかったみてぇだ。


「オレ様に勝てるわけねぇだろ」


犬の前に巨大な水球を作り、自ら水に飛び込んで慌てている所に、電撃を浴びせる。

自ら水……くっ、オレ様自分の才能が恐ろしいぜ!

ダランと下が伸び、白目を剥いたところで水球を解除する。


「魔力がなぁ……」


新たに現れる別の異形に、オレ様はため息つく。

周囲に溢れる魔力を、どうにも上手く吸収する事が出来ない。

オレ様自身の魔力を感じる事が出来ない所為だろう。

セブンスター早く起きろよォッー!

お読み頂きありがとうございます

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