旅立ち
無文書といいます。処女作ではありますが、今後ともよろしくお願いいたします。
物語には主人公を取り巻く周囲の存在がある。そして、物語に影響しない存在もいる。ただの商人や、主人公に選ばれることのなかった奴隷。また街を行き交う住人。そして物語に記載されることのなかった小さな村の人間。
この物語はその小さな村の人間が、脇役にすらなれなかった存在が主役へ、いや『英雄』へと成り上がる物語である。
◇◇◇◇
名もなきこの村に生まれた俺はジーク・イェハトと名付けられた。ジークというのは架空の存在としておとぎ話に出てくる英雄のことだ。
俺はかの英雄とは程遠い。
小さな村に、名もなき村に知られることもなく生まれ、知られることなく死んでいくのだろう。
そんな運命糞食らえだ。
もしもそれが俺の運命ならば、俺がその運命を変える。もしもそれが神の定めたことなら俺が神を倒してでも運命を変えてやろう。誰かに決められた人生ほどつまらないものはない。自分の人生は自分で決めるし、気にくわない運命ならば強引にでも変えてやる。
それが英雄の名を持って生まれた俺のやり方だ。
「王都に行くか……」
この小さな村から王都までは山を1つ越えなければ行けない。
父さんも母さんも俺が小さい頃に亡くなってしまったし、この村に深い思い出があるわけでもない。簡単な荷造りをしたら早速向かうとしよう。