5・ごめんなさい
ハッと目覚めれば、目の前にはボヨボヨ揺れるスライムが二体・・・と、気持ち悪い生物が、心配そうに僕を見ています。
「大丈夫か?」
「まったく、心配したよ。出発の準備を整えているうちに、居なくなってるし、見つけたと思ったら、アンコム見て失神してるし。」
あぁ、あの気持ちの悪い生物は、アンコムと言うのですね・・・
「すみません、ちょっと見た目が・・・アレで・・・。」
アンコムに乗って居た人達に、アンコムが気持ち悪いとは言えませんでした。
「ああ、アンコムって見た目が気持ち悪いからね。」
コボコさん・・・せっかく濁したのに、ハッキリ言うんですね。しかも、気持ち悪いと思いながら乗ってたんですか?
「ボッテリとした体に、鈍い目、大きな口に、無数の足・・・気持は悪いが、慣れれば可愛いものだぞ。」
その説明のどこに、可愛いと思える要素があるのか分かりません。ですが、コボボさんとコボコさんの気持ち悪発言を聞いたアンコム・・・・何だかしょんぼりしている様に見えるんですが。
「そうそう、ちゃんと躾ければ、簡単な言葉も理解できるし、飼い主には噛まないし。飼い主にはね。」
何故飼い主を二度言ったのでしょうか・・・
「ポコは僕達の家族だから大丈夫だよ。安心してね。」
安心できないんですが・・・家族以外が近づいたらアンコムは何をするのでしょう。やっぱり大きな口でガブッと・・・・
今は、考えない事にしましょう。それよりも、魔王退治が先決です。サックっと倒して、あの神様に・・・会いに行かなければなりませんからね。
「ところで、ポコ何で一人で行こうとしているんだ?」
あれ?ボボコさん怒ってますか?
「え?一緒に行く気だったんですか?」
てっきり、一人で行けと言われているんだと思っていましたし、途中で二人から神様の話を聞かされた辺りから、神様への怒りで、実は話を殆ど聞いていなかったんです。
「出発の準備が終わるまで、ゆっくり先人達の記憶を眺めておくように言っただろう?」
「・・・ごめんなさい・・・聞いてませんでした。」
「まったく、何の知識も無いのに、旅に出るなんて無謀だよ!」
そうですね、知識は大事です・・・ですがコボコさん、貴方にだけは無謀だなんて言われたくない!!
貴方の人生の方が無謀に溢れてますからね。
ですが、神様のカケラも絡んでいるので、一概にはコボコさんのせいとは言えませんから、ここは素直に謝っておきましょう。
「・・・ごめんなさい・・・。」
シュンとしている僕に、二人は長い手?触手?を伸ばして、ナデナデしてくれます。
「ポコは俺たちの子だからな。一人で行かせる訳がないだろう?」
「それに、魔王作ったの僕だしね。ポコに丸投げなんてしないよ。ちゃんとポコの勇姿を見届けるよ。」
それって、ついて行くけど手伝わない宣言ですかね?
「大丈夫、ヤバそうだったら弱点教えるから。」
「それ、最初っから教えとして下さいよ!!!」
僕の叫び声に、コボコさんとボボコさんはボヨンボヨンと身体を震わせています。多分笑っているんですね。
ちなみに、弱点は冗談だそうです。
・・・まったく。