3・騙された気がします。
・・・・先人達よ、一言言いたい。君達の身体はスライムだ!!
核を除けば、ほぼ水だ!!!
しかし、拳大の核が付いている事を忘れるな!!
寒い所に行けば当然凍る
暑い所に行けば当然蒸発する
塩水に入れは身体が縮みます・・・
いくらスライムでも、貴方達の身体には核が付いてるでしょう!!そんな細い隙間を通ろうとしたら、核が引っかかりますから!無理矢理 通ろうとしたら、核が取れますから!!
いくらスライムのボディーでも、その高さから落ちて、核を守りきれるわけが無いでしょう!!核が割れたら死にますから!!
いくらスライムでも、密閉された容器の中で、生きていられる訳が無いでしょう。貴方達は身体はスライムでも生物なんですよ!!
そして、何故あなた達は、先人達が経験した事を、やろうとするんですか!!
貴方達、先人達が死にかけたの見ましたよね!
何故自分は大丈夫だと思ったんですか!
自分だけ特別とか、無いですから!!
何でしょう?何なんでしょう?この核の先人達は・・・しかも運が良すぎるんですよ。
何で死なないんですか!!
普通のスライムなら死んでますよ!!
そして、目の前のお二人・・・
えっと、右側におられる、ボボコさんの先人たちは、いたって普通のスライム人生を送られておりました。
のんびり、優雅にスライム生活。良いですね、できるならこの世界で、僕もこんな人生を送りたいですね。
そして、問題は左にいるコボコさん・・・無謀な事を繰り返す先人達のお孫さんですね・・・
・・・・・
アンタ何やってるんですか!!!
魔王を作ったのアンタじゃないか!!!
しかも、世界の半分を吹っ飛ばす、魔法とロウ術のハイブリットを作り出したのもアンタかあああぁぁぁ!!
ええ、この世界での僕の核の半分の作り出した先人達、運がいい事は分かってましたよ。異常なほど運が良い!!
だからって、魔王になろうとしないで下さい!!
ハイブリットを生み出さないで下さい。
ですが問題は、目の前のコボコさん・・・魔王じゃないんですよ・・・
「あの・・コボコさん。」
「何だい?コポ。」
「何で、コボコさんは魔王では無いんですか?」
僕の核の中にある、コボコさんの記憶では、魔王になろうとした所までしか無いんです。
先人達の記憶と言っても、完全なものでは無く、所々抜け落ちていますし、その時の先人達の気持ちなどは、分かりません。ただ、その時の光景が、先人達目線で見えるだけです。
コボコさんの記憶では、世界最強になろうと、様々な者達の核を集めていた事。そして、その核を合わせ魔力で一つの核にして、自分の中に取り込もうと
した事までしかないんです。
「ああ、記録が途中までしか残ってないんだね。僕が世界最強になろうとした所まではあるのかな?」
「・・・はい。」
「それがさぁ、いざなろうとした瞬間、ボボコに止められてね。中止したんだけど、それを一緒に研究してたボロンにあっさり持って行かれてしまってね。」
ちょっと、そこに置いていた饅頭を持って行かれた感覚で話すコボコさん・・・笑っているのか、スライムボディがボヨボヨ揺れてます。
あれ?何でしょう。
この感覚。
この軽さ。
知っている気がしますよ。
「しかも、研究資料も丸っと持って行っちゃって、困った困った。気付いた時には、ボロンが魔王だなんて、言いながら世界を荒らし回ってるし、腹が立って、適当に怒りを魔力にぶつけてたら、何だかんだ強力なの出来たから、それをぶつけてやろとしたら、ボボコに止められてね。」
ボボコさんありがとう!!!
世界の崩壊は貴方が食い止めてくれていたのですね!
「でねでね、ボボコに相談したら、僕とボボコで最強の子を作って、ボロンを倒してもらったら良いんじゃ無いかって。」
さっきのありがとうを返せ!!
他人任せかよ、この場合他人では無いから、子供任せか!!
そうじゃないだろ、何で子にやらせようとする。
ここまで黙っていたボボコさん、不満たっぷりの僕に気付いたのか、ようやくしゃべりだしましたよ。
「安心しろ、コボは俺とコボコの最高傑作だ。魔王なんてあっというまに倒せるだろう。」
行けと!!
産まれてまだ30分程度の僕に行けと。
「それに、神の加護も付いてるからな。」
・・・・
今、聞き捨てならない言葉が聞こえたんですけど・・・・
神の加護ですか?
神って、あの神ですか?
まさかねぇ・・・・
「ボロンの事をどうしようか、悩んでいたらさ、突然神が現れて、僕とボボコが子供を作れば、その子がきっとボロンを倒してくれるだろうって、言ってね。」
「その代償として、コボコは最強の幸運と、ボロン対策に作った魔法を無くしたが、まあ自己責任だから、その辺はしかたがないだろう。」
ああ、スライムが上下に揺れてます。
伸びたり縮んだり、ボヨンボヨンしてますね。
ははははは・・・・・はぁ・・・
これで一つ目の目的である、ロウ術と魔法のハイブリットは解決ですね。
ですがこれは、神様にハメられと見て間違いないでしょう。
なんて回りくどい事をするんでしょうか、まったく面倒ですね。
でも、まあ適当な神様ですが、何か考えがあっての事なんでしょう。ハメられたのは腹が立ちますが、どのみち魔王を討伐する気ではいたので、今のところは良しとしましょう。
「神様、他に何か言ってませんでした?」
「確かコボに、『ガンバレー』って伝えて欲しいって言ってたね。」
コボコさんが、態々声真似をして言ってくれた『ガンバレー』の言葉は、間違いなく、神様の言葉でした。
絶妙にイラッとさせる言い方そっくりですよ!
仕方がないので、魔王退治に出かける事にします。
産まれて1時間で魔王討伐に出るなんて、どんな人生なんでしょうね・・・
しかも、身体がスライムなので・・・遅い!!動きが遅い!!
一応高速移動はできるんですよ。二足歩行の人間が全力で走ったくらいのスピードですが、スライムのノロノロな動きに比べれば、100倍早いです。
ですが、一つ問題が。
これをすると、漏れ無く身体が削れます!
身体のほぼ全部が水で出来てるんです。そんな身体が高速移動なんてすれば、勿論、地面との摩擦で削られますよ!
なので、この世界にも馬みたいなモノがいますよ。
馬小屋に行くまでに、かなりの時間をとってしまいましたが、付いてしまえばこっちのものです・・・・
ん?
馬・・・馬・・・馬・・・??
僕は、僕としての記憶を持ったまま転生した為に、先人達の記憶を見る事が少し苦手なようです・・・見ていれば・・・見ていれば・・叫ばずに済んだことでしょう。
「ぎゃあああああぁぁぁぁぁ。」
腹の底から声が出ましたよ。
同時に僕のボディが、ボヨンボヨン高速でうごきます。
そこに居たのは・・・巨大な、チョウチンアンコウでした。
丸い身体に、餌を誘う誘引突起を頭部に持ち、深海で暮らすあの、チョウチンアンコウです。
巨大なチョウチンアンコウというだけであれば、少し不気味ではありますが、まだ叫ぶ程では無かったでしょう。しかし・・胴から伸びる無数の足?
昆虫さんに付いている黒光りする無数の足が、胴から伸びてカサカサいってます。
誰だ!こんな生物作ったのは!!!
気持ち悪!!
鳥肌立つわ!!
「ポコ大丈夫?」
「どうした?」
ボボコさんとコボコさんが慌てて駆け寄ってきます。
ええ、駆け寄ってくるんです。
そんなに高速移動したら、スライムボディが・・・・
「ぎゃあぁぁぁ・・」
ボボコさんとコボコさんの足下というか、下には・・小さなチョウチンアンコウ虫が居ましたよ。しかも、止まっている時の数倍気持ち悪い!!
僕・・失神しました。
なんてメンタルが弱いんでしょう・・・数多の世界で、色々なモノを見てきたのに、まだまだ度胸が備わっていなかったのですね・・・・不甲斐ない自分に腹が・・・・