Another5 "嘘"の世界5
「もしもーし」
いつもの陽気な声で彼女は言う。昨日となんら変わりはない。
「もしもし、さっきぶりだな」
「うん、さっきぶりー。言いたいことはわかるよー、ごめんね」
「どういうつもりなんだ?」
「どういうつもりでもないよー。ただの防衛だよー、自分のためだよー」
「なんでだよ、せっかく転生友達だと思ってたのに」
「え、まだ、その"嘘"続いてたの? 君の妄想話は今はいいでしょー」
「なっ、お前も転生者だろうがよ!」
どこまで人を馬鹿にしているのか。
「何言ってんのさー、違うよー、そんなわけないじゃん。君に話を合わせてただけ。いわゆる"嘘"だね。君のも"嘘"なんでしょー?」
「真実だよ! じゃあ、なにか? お前は元からここの国の住民なのか?」
「そーだよー、3日で家が手に入るわけないじゃん」
衝撃と呆れを通り越してもはや苦笑いしかできない。
最初から、何もかもが嘘だったというのか。クソッ。俺は最初から最後まで踊らされていたのか。トラに、エイネに、神に。
なんとか冷静を保ったフリをして話を続ける。
「なあ、お前、トラとグルなのか?」
「そんなわけないじゃん、ていうのも君には"嘘"に聞こえるんだろうね」
「ああ、嘘にしか聞こえない」
「それがこの世界だからね」
「お前はそれで満足なのか」
「なんとも思わないかなー」
おい、と警官に肩を叩かれる。そろそろ時間のようだ。話したいことはもっといっぱいある。言ってやりたいことはまだまだある。
「そろそろ時間だねー。君にはまた会える気がするよー」
「会えねーよ。お前が転生者じゃない限りな」
「またね、翔悟」
「もう会いたくねーよ」
「あー、そーだ。最後に一個だけ」
「なんだよ?」
エイネは咳払いを一つして、今までで一番可愛らしい声でこう言った。
「大好きだよ」
これほどまでにときめかない告白はない。最後まで俺をバカにしていやがる。
「どうせ"嘘"だろ?」
「……本気って言ったら?」
そこで警官から携帯を取り上げられて、通話終了となった。
これだから女心はわからない。どこまでが本気で、どこまでが冗談で、どこからが真実で、どこからが嘘なのか。
最初から、最後までが嘘だった。
地球だったら、悪いのはエイネたちだろう。
しかし、この世界においては、悪いのは俺の方だった。騙された俺が、嘘の中の真実を見抜けなかった俺が、全て悪いのだ。
考えてもどうしようもない。この考察は全て無駄なのだ。
俺は警官に連れられて、またパトカーに乗せられた。留置所に送られるのだろうか。
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「でさ、裁判になったんだけどさ」
俺は、いつもの場所『area』で女神に語る。
「そこで、死刑を宣告されちゃったのさ!」
「はえー、それはそれはお気の毒に☆」
自称聞き上手の女神は、全く心にも思ってないことを言ってくれる。
「それで、死んじゃったと〜」
「そーなんだよ」
「それで、エイネさんはどれくらいの刑罰だったんですか?」
「えーっと、たぶん懲役3年くらいだったかな?」
「ふーん、なんか海川さんってすぐ死にますね」
「俺のせいじゃねーよ。神様に言ってくれ」
「一週間以上生きてないんじゃないですか?」
「セミかよ、俺は」
「いやー、なにはともあれ、面白かったですよー!」
「俺はあんまり面白くなかったけどな」
「んで、海川さん。本当はどんなんだったんですか?」
女神は俺にニヤニヤしながら、そう問いかけた。
「ん? どういう意味だ?」
「本当はどんな世界に行ったんですか?」
「ん? どういう意味だ?」
機械のように同じ返ししかできない。
「だからー、"嘘"ですよね? 全部」
「ん? どういう意味だ?」
「とぼけないでください。知ってますよ。あなたが行ったのはそんな世界じゃないですよね。モニターで監視してたから知ってますよ」
「なんだ……知ってたのかよ……」
ーーそう、最初から最後まで"嘘"である。
「ていうか、知ってんなら俺が語る必要ないじゃん!」
「いやいやー、転生した人の口から語られるから面白いんですよー。一人称視点ってやつです☆」
「いや、その……」
「んー? どうしたんですかー? 話してくれないんですかー?」
「……ゲ、ゲームの世界だよ……」
「んー? どんなゲームなんですかー?」
「おい、イジワルすんじゃねーよ! 話しにくいんだよ! あの世界のことは!」
「あ〜、そりゃ、あれだけ女の子とラブラブチュッチュするゲームの世界のことは話しづらいですよねー」
「お前わざとやってただろ」
「てへぺろ☆」
本当は、18禁なゲームの主人公として転生し、浮気してヤンデレヒロインに殺される、というシナリオだった。生々しすぎて語れない。
本当に女心はよくわからない。
「にしても、即興にしてはなかなかいい話でしたねー、まあ、欠陥もありましたけど」
「え、たとえば?」
「信用が大事なのに不動産屋がある、とか。あと転生特典が出てきてないじゃないですかー」
「あー、そういえばそーだな」
「あと、エイネさんの過去の転生経験から、偽物ってことがバレバレじゃないっすかー☆ せめて、チュートリアルの世界から始めてもらわないと」
「もういいだろ、忘れてくれさっきの話は」
「でも、よくあんなポンポン即興で出てきますねー」
「妄想は得意だからな」
「いえ、ここまでくると一種の才能ですよ、それは」
「そうか?」
「自信を持ってください、あなたは妄想マスターなのです☆」
全く嬉しくない。そもそもそんな資格はない。だれでもなれるし。
「次はどんな世界がいいですか?」
「なんでもいいよ。どんな世界でも、それなりに楽しむって決めたし」
「えー、じゃあ転生特典はどんなのがいいですか?」
「どうせ言っても意味ないし、まあ、強いて言うなら……」
さっきの仕返しだ。渾身のイケボで言う。
「お前が欲しい、かな」
もちろん"嘘"である。
「ズキュン! いやー、今のは結構きましたよ! さすがエロゲで鍛えただけのことはある!」
「うるせー、冗談に決まってんだろ」
「えー、なんか、他にないんですかー? 女の子をオトすセリフ!」
「ねーよ。あってももう言わねー」
辺りが明るくなり始める。
なんかいつもより白みが強い。
「あ、神様、準備できたみたいですねー」
「どういうことだ?」
「ふふん、なんと! ついに! 海川さんは神様に会う権利を獲得したのです。パンパカパーン☆」
「なっっ!」
念願だ。なんで急に会えるのかはわからないが、やっと神に一言文句が言える。
会ったら何しようかと早速考え始めてしまう。まず、殴る。それから蹴りたいな。それから背負い投げしてやりたい。
「あー、会うといっても実体はないですよー。声だけです」
チッ。
「まあ、詳しい説明は神様からあると思いますよー」
さらに周りが光に包まれる。
「んじゃ、海川さん、頑張ってきてねー」
「ああ。次はどんな世界なんだ?」
「それはー……てか、神のいる世界ですよ。さっき言ったじゃないですかー」
「いや、なんとなくノルマかなーと」
そして意識を失った。
"あなたの考える展開の斜め下を行く"
これが異世研のモットーです。
オチはあなたの予想通りだったでしょうか。それとも斜め下だったでしょうか。
見ての通り、次は、Another6 神の世界です。
たぶん1話で終わります。




