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Another4 壊された世界〜異世界再興物語〜2


【異世界研究活動記録84(?)】


 これだ。これが俺の求めていた異世界なのかもしれない。最強の能力、最高の仲間、仲間の辛い過去、その復讐。最高のシナリオだ。

 なんだよ、神。やればできるじゃん。今までのバカみたいな話がウソのようだ。どういう心境の変化だろう。


 ようやく俺は主人公になった。何かを守りたい気持ち、それを可能にする力、主人公力。すべてを得た俺は無敵だ。


 なのに、なんだろうこの喪失感。楽しいはずなのに楽しくない。何かが引っかかる。何か大事なことを忘れている。これは神の仕業だろうか。


 なんとか思い出そうとする。このひっかかりが、今回神の用意した罠なのかもしれない。


 まあ、いい。思い出せないということは、そんなにたいしたことではないのだろう。


 とにかく今は明日の決戦に備えよう。まあ俺の勝利は確定しているがな。俺のチート能力さえあれば余裕だろう。俺が勝つシナリオなのだ。自信しか湧いてこない。


 しかし、最近、頭痛がしたり吐き気がしたりと体調が優れない。疲れもあるが、やはりこの慣れないチヤホヤにあてられているのだろうか。自己陶酔というやつかもしれない。油断は禁物だ。



 さあ、決戦の時だ。魔王。


 仲間の前のリーダーは、前魔王と死闘を繰り広げたらしい。そのせいでそのリーダーは亡くなった。彼らは命からがら逃げだしたが、その悲しみはとても深いものとなった。その仲間の悲しみを俺が受け継いだ。


 なんでも、新しい魔王がまた魔界の王国を立て直しているらしい。また悪事を働く気だな。

 その前に俺が止める。二度と悪事が働けないくらいまで、破壊してやる。

 俺以外に誰が止められる? 完膚なきまでにぶっ壊してやる。


 すべては、この世界の平和のために。


 ーー正義は必ず勝つ。悪は必ず負ける。

 魔王と勇者は戦う運命なのだ。そして魔王は勇者に負ける決まりなのだ。


 さて、正義を執行するときが来た。


 これにて〈俺のチート能力『爆破』が最強すぎる件(仮)〉は最終回だ!


 神先生の次回作にご期待ください!



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー








「止まれ! 貴様ら何者だ!」


 そう言われて振り返った。どうやら魔王軍のお出ましのようだ。

 あのマントのやつが魔王か。確かにただならぬ魔力だ。顔は甲冑でよく見えないが体格からして若者の男。


 しかし魔王自ら先陣を切るとは。なかなか度胸のあるやつだ。他の敵はリザードマン、鳥人、ゴブリン、他数名。やはり復興は進んでいないのか。軍は少ない。俺ら四人で十分だ。一度やってみたかった自己紹介から入ろう。気持ちはさながら戦国武将だ。


「我こそは勇者海川翔悟だ! 魔王! これ以上の悪事は許さん!」


「……」


 魔王は驚いた様子でこちらを見ている。俺のオーラに恐れおののいたか。と、思ったら笑いながら尋ねてきた。


「……勇者よ。お前は楽しいか」


「どう言う意味だ?」


「お前は、今の人生を楽しんでいるか?」


 意図のわからない質問だが、俺にとっては愚問だ。


「ああ、楽しんでるさ」


「……そうか。なら俺はお前と戦うよ」


「よくわからんが、望むところだ!」


 俺と魔王の魔弾の撃ち合いの開始と同時に、戦闘は始まった。






★★★★





 俺と勇者の魔弾の打ち合いの開始と同時に、戦闘は始まった。


 なんで勇者なのに剣を使わないねん、というツッコミもする暇はない。


 あっちの俺はこの破壊活動が楽しいらしい。英雄ごっこが楽しいらしい。正義だの何だのと掲げているのだろう。俺はこのマントをもらった時から、自分に"魔力"が流れ込んでくるのがわかった。それでも自分が"悪"の魔王になったつもりはない。正義だの何だのに成敗される筋合いはない。


 こいつらがお前に何の害を与えた? ただ強く生きているだけじゃないか。悪事を働こうとしているわけがない。


 魔界に住むものはみんな"悪"なのか。正義って何だ。悪って何だ。


ーー正義は必ず勝つ。悪は必ず負ける。



 昔から正義の味方が苦手だった。嫌いなわけではない。教育上、素晴らしいものであるのはわかるが、ただ理解できなかったのだ。


 悪に対して、時には暴力や数の暴力によって正義が執行される。悪は負けることが決まっているのだ。悪は総じて"悪"だから。悪からしてみればたまったものじゃない。




ーー正義の味方は、悪の敵だ。



 お前が正義を名乗るなら、俺は堂々とその敵を名乗ろう。これが俺なりの正義だ。

 こちらに失うものはなにもない。



 戦闘はなかなか長引いた。しかし、相手には余裕の笑みが見られる。まだなにか隠している。俺は、あとはマントと特典に期待するしかない。






★★★★





 魔王といえどこの程度か。俺の攻撃を打ち消すので精一杯のようだ。仲間たちも健闘している。完全に有利なのに変わりがないが、押しの一手がない。

 そろそろ出すか。"必殺技"。


「お前ら! あれやるから下がってろ!」

「了解、翔悟!」

「おう! 俺らはガード貼っとくわ〜」

「最初からやればよかったのに……」

「チャージ時間が必要なんだよ!」

「あー、なるほどねー」




 仲間は一時退避させた。本当はチャージ時間なんて必要ないけど、もったいぶってきた俺のチート能力、今こそぶっぱなすぜ!最大火力だ!


「いくぞ魔王!」




★★★★



 大技が来る。どう見ても俺に勝ち目はない。

 ただ、この戦いで気づいたことがある。まだ可能性は残されている。


「みんな下がれ! 大技が来る!」

「でも、お前はどうする?」

「海川も下がったほうがいいっすよ!」


 俺が止める。俺が受け止める。


「いくぞ魔王!」



 目の前の空間が切り裂かれ、一瞬にして炎が広がる。爆発だ。俺の最大限の魔力で爆風に立ち向かう。


 これを待っていた。俺の予想が正しければ、俺の特典は"コピー"だ。相手の攻撃と同等の攻撃で、威力を相殺できる。俺の攻撃で相手は倒せないが、相手の攻撃と同じ攻撃を出せる。言い換えれば、なんだって器用にこなせるのだ。


 悔しいが、これが唯一の解決策だ。このままやられっぱなしというわけにはいかない。おそらく奴の能力は文字通り『最強』なのだろう。その最強をコピーする。矛盾の逸話ならぬ矛矛といったところだろうか。

 

 最強のお前は、お前の最強の能力で、"必殺"だ。



ーー『正義は必ず勝つ』とかいう正義の神話を終わらせる。喧嘩両成敗か、あるいは引き分けハッピーエンドか。


 こんな終幕を喜ぶ者はいない。教育に悪影響だろう。喜ぶのは神様くらいか。



 これにてお前の〈異世界最高物語()〉も、俺の〈異世界再興物語〉も最終回だ。






 視界は一瞬で炎に包まれた。熱さは感じる間も無かった。


ーーその2つの爆風は、"全て"を破壊した。












ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





「おかえりなさーい! お久しぶりです! めがみんです☆」


「……知ってるよ」


「元気ないですね〜」


「なんつーか、もう、疲れたよ」


「お疲れ様です〜、どうでしたか今回の世界は?」


「特に感想はない」


「もう〜それじゃつまらないですよ〜」


「つまらなかったよ」


「まあ、そんな時もありますって! 元気出していきましょう!」


「……」


 腹の虫が収まらない。感想がないことはないが、言ってどうなるものでもない。気になることはただ一つ。


「……なあ、あの世界はまだ続くのか?」


「というと?」


「また同じことを繰り返すのか?」


「どうでしょう〜? 次の転生者があなたのような人なら同じシナリオになるでしょうね〜」


 何も言い返せない。今回ばかりは俺も"俺"も

悪い。


「あいつらはどうなる?」


「また次の転生者に期待する、というところでしょうか。どちらにしろ人口は減る一方ですかね」


「聡明な勇者と魔王が来れば助かるのか?」


「どうですかね、勇者と魔王は戦うって相場が決まってますからね。終わりを迎えるのは、神様が飽きたときでしょうね」


 大きなため息が出た。神に文句を言おうとしても言えない。一発ぶん殴ってやりたいが実態が見えない。


 代わりに俺は自分を殴った。しかし、反射的に少し手加減をしてしまう。なんだかんだ言って、無意識で自分は自分を大切に思ってしまっている。口から出る心配は"嘘"に過ぎないのか。

 そんな自分にムカついてもう一発殴る。


「わ、わぁー! 何してるんですか! 死んでるとはいえ自分の体は大切にしてください!」


「俺が転生しなかったら、あいつらが死ぬこともなかったのかなって、思ってしまうんだ」


「……そうですねー。確かに、結果から見るとそうですが……」


「やっぱり……」


「まあ、そんな気落ちせずに〜。もう少しらしいですから」


「もう少し?」


「あ、やべ☆」


「なんだよ?」


「聞かなかったことにしてください〜。まあ、そのうち神から説明がありますよ」


 もう少しということは、俺のこの生活がということだろうか。

ーーそれはそれでもういいかもしれない。俺は他人を不幸にしている。そもそも俺がなぜ転生したかったか、何を探し求めているのか、忘れかけている。


「なあ、お前は別の"俺"も担当してるんだよな?」


「?? 何をおっしゃいますか。私が担当しているのは海川翔悟さんですよ?」


「まあ、いいや。その俺は、何で転生を続けるんだ?」


「それはあなたが一番わかっているのでは?」


「わかんなくなった」


「じゃあ、私にもわかんないですよ〜」


 そりゃそうか。何でこんなことを聞いてしまったんだろう。


「でもですね、昔のあなたは熱意を持ってましたよ。異世界を現世の人々に信じてほしい。異世界を経験して感じた魅力を、いろんな人々に伝えたい。そんな、人々に夢を与えることがあなたにできることなんじゃないでしょうか?」


「そんな大層なものじゃない。ただ自分の興味で突っ走って、一人の女の子を追いかけた結果だよ。それを建前にしていただけだ」


「自分のことよくわかってるじゃないですか」


「うるさい」


「それでいいんです。あなたはそのままでいいんです。あなたの興味は本物ですから」


 何が"本物"で、何が"嘘"かなんて俺にはわからない。


「あなたが意識しなくても、あなたから希望と夢をもらえる人が必ずいます。知らない所であなたに助けられる人がいるんですよ」


「いるのか? そんな人?」


「そうですね〜、たぶんいますよ。私もその一人なのかもしれません」


「お前が……?」


「な、なんですか! おかしいですか!」


「いや、俺はお前に何もしてないだろ」


「そうですかね?」


「まあ、ありがとう、めがみん。やるべきことが何となくわかった気がするよ」


「その意気です! またここでバカみたいな異世界話を聞かせてくださいよ☆」


「ああ」


「えへ、柄にもなくカッコつけちゃいました☆」



 

 俺が英雄になろうとしたのが間違いだったのかもしれない。英雄はヒーローになろうとしなくてもヒーローだ。

 俺は、俺にできることをやろう。そのために俺は、自分の気持ちに嘘をつき続ける。

 

 たとえ、神様の敷いたレールの上でも、またとない経験であることは確かだ。その上で踊り狂ってやる。

 たとえ、その世界限定の付き合いでも、彼ら彼女らの笑顔と友情は確かなものだ。それが一時のものだとしてもいい。それを感じる瞬間が、楽しいのだ。


「とりあえず、異世界旅を続けるよ。次はどんなところなんだ?」


「それはー……神のみぞ知る☆」



 目の前が光に包まれる。やけに今回はその光を温かく感じる。



「じゃ、行ってきます」


「行ってらっしゃい☆ ふふ、なんか夫婦みたいですね!」


 突っ込む間も無く意識が飛んでいく。


 



 未だに、神がどこまで介入できるか計り知れない。

 いや、もとから人生なんてそんなものなのかもしれない。俺は運命論者でも、神話を信じていたわけでもないが、今思えば偶然と必然の狭間で生きていたのだろう。


 ーーわからないから、おもしろい。

 だから俺は研究を続ける。



 見せてみろよ、次のシナリオを。とりあえずはお前に付き合うよ。その代わり俺が今までに体験したことのないようなものしてくれよ。それがハッピーなものなら、なお良しだ。


 まあ、お前はそうはしないだろうな。





Another4 壊された世界~異世界再興物語~  完






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