Another3 星の降る世界
七夕ということで……
※ストーリーの本筋から少し離れます。
飛ばしていただいても大丈夫ですが、読んでいただけると、この物語を最大限に楽しむことができるかと思います。
目を開けて周りを確認する。ここはどこかの街のようだが、荒廃している。荒びきっている。人っ子ひとりいない。店はあっても店員がいない。街の中を歩き回ったが第一街人が見つからない。
まずいぞ。異世界生活の初日にお金もアテも、繋がりも作れなかったら詰みだ。
恐る恐る一軒の家の中に入った。人が住んでいた跡があるのに人はいない。しかし、前に住んでいた人が残していった食料が大量にあった。ちょっと罪悪感はあったが、RPGの勇者ではないけれど、誰もいないし、取っていっても怒られない、はず。生物は腐ってしまっているが、加工品は無事だ。食事は何とかなるかもしれない。
そのまま空き家の一軒をお借りして、身を落ち着かせた。しかし、これからの方針が定まらない。ここがどんな世界かも分からず、誰にも会えず、おまけに街は荒れてしまっている。今まで運がよかった分、今度は最悪を引き当てたか。どうにも気分が上がらない。なんだろう、このパッとしない世界は。
とりあえず、ご飯を食べよう。もう一度食材を漁る。偶然にも空き家に置いてあった食材は全て地球にあったものに似ていた。インスタントや冷凍食品がないのが残念だが、まあ当たりまえだろう。久しぶりの自炊と洒落込もうではないか。といってもほとんどの食材は腐っているので、安全そうなものを選び、十分に加熱して調理した。
出来上がったのはパンケーキもどき。何かの粉に水を入れて、こねて、焼いたらできた。さらにもう一枚焼いて2段重ねにしていくスタイル。さながら原宿の人気おしゃれパンケーキだ。栄養が取れた気はしないが、腹は膨れた。我ながら上手くできた。
いつのまにか、外はすっかり暗くなっていた。結局、誰とも話さずに一日を終えようとしていた。静寂に慣れている俺でも、その反動か、独り言や鼻歌を口ずさんだりしてしまう。もちろんそれらに反応は返ってこない。それどころか物音一つ聞こえてこない。
「なんて魅力に欠ける世界なんだろう」
独り言をつぶやいてみる。
ーーふと、窓から外を眺めた。
その景色に、言葉を失った。言葉にできない、舌筆に尽くし難い、そんな夜空が窓の外に広がっている。そこには満天の星空。満点の星原。暁天に散りばめられた輝石。仰天の奇跡。例えるなら、万華鏡を両目、或いは全身で感じているような感動と震撼だった。
俺は、何かに駆り出されたかのように外に飛び出した。窓からでは一部しか見えていなかった星空の全貌を見たくなったのだ。
見上げた先の星空は、日本にいた時とは全く異なっていた。周りの建物の明かりもなければ、月明かりもない。高い遮蔽物もなく、芸術を邪魔するノイズもない。ただ、星の輝きだけが暗闇を照らすのだった。
それから道端に寝転がって、その空を眺めていた。このままここで寝てしまうのも悪くはない、と思っていたその時だった。
流れ星だ。しかも、一個や二個ではない。次々と天から星が投げられる。こういう時は願い事を三回唱えるんだっけか。
ーー何事もない素敵な生活になりますように。
ーー何事もない素敵な生活になりますように。
ーー何事もない素敵な生活になりますように。
欲を言えば、彼女が欲しいとか、海賊王になりたいとか願いたかったが、そもそも他人がいない。そう思った時、隣から声が聞こえてきた。
「おぬし、最近ここに来たのかい?」
老人に声をかけられた。この世界で初めてのひとだ。突然の第一街人に戸惑ったが、待望の待ち人だった。
「あ、はい。海川といいます」
「わしは、リブラじゃ」
リブラと名乗るその老人は、杖をついてはいるが、背筋は伸びていて、年齢よりも若く見られそうなお爺さんだった。髭を伸ばしており、髪も髭も白く染め上がっている。
「して、海川殿も星を見ておったのかい?」
「はい」
「どうじゃ。綺麗じゃろう?」
「はい、とっても。俺が元いた世界とは比べ物にならないくらいに綺麗です」
「ほう。海川殿は別の所から来たのかい」
つい、元いた世界とか言ってしまった。ここで、地球から来たと答えてもわからないだろうし、とりあえず濁しておく。
「まあ、はい。そこは周りが明るすぎてこんなに綺麗に見えなかったです」
「そうかい。せっかくの宇宙からの贈り物を、もったいないのう」
「え、宇宙なんですか!?」
「……? 宇宙以外の何物でもないじゃろう」
この世界は、ウチュウなのか? もしそうならここから地球に行ける可能性だってある。
「あの、地球を知っていますか、同じ宇宙にある惑星なんですけど……」
「チキュウ……? ……聞いたことないのう」
「そうですか……」
「おぬしはそこから来たのかい?」
「はい。気づいたらここに飛ばされてました」
「そうかい。不思議な話もあるもんじゃ。やはり宇宙は広いんじゃのう」
もしかすると、地球から遠く離れた星なのかもしれない。宇宙は遥かに広い。しかし、俺は宇宙よりも広いものを知ってしまっている。
「あの、リブラさん、この星に他の人はいないんですか?」
「あぁ。わし一人になってしまったわい」
「以前は人が住んでいたみたいですけど……」
「そうじゃよ。それはそれは賑わっておった。じゃが、みんないなくなってしまった」
「なんでですか?」
「みんな宇宙に旅立ったんじゃよ。宇宙開発だか、宇宙に人間が住める星があったとか騒いでのう」
「全員移住しちゃったんですか」
「ああ。友人も、お隣さんも、息子も、娘も、孫も、家族もみんな移住してしまった」
「それでリブラさんだけ残ったんですか?」
「いや、わしの他に数人、老人が残ったんじゃがみんなもう亡くなった。これだけ食料が限られておるしのう」
「それでお一人に……」
この世界はかなり宇宙開発が進んでいるらしい。そういえば、街にロケット発射場みたいなところや燃料タンクがたくさんあった。新しくて、今より快適そうな居住場所を見つけたから、みんな移動しちゃったのか。
「でも、その方々やリブラさんはどうして移住しなかったんですか?」
「それは……この星が好きだからじゃろう。わしとて例外ではない。この住みやすかったこの星が、慣れ親しんだこの星が、何よりこの星空が大好きだったんじゃよ」
確かに素敵な星だ。ここに人がたくさんいたらもっと素晴らしいことだろう。
「どんな所かもわからない星に連れていかれるよりは、残りの生涯をここで過ごそうと決めたんじゃ」
「なるほど……」
自分ならどちらの選択をしただろう。おそらく俺なら好奇心に任せて宇宙へ旅立ったことだろう。新しい発見、未開の地の探索というものは人間の興味をそそる。
「今日はもう遅い。海川殿、明日もこの時間に会って話をせんか」
「はい、もちろんです」
「明日は望遠鏡を持ってくるよ。そして、もっと星が綺麗に見える場所を紹介するよ。」
「はい、楽しみにしてます、おやすみなさい」
リブラさんと別れ、家に入った。ベッドに寝転んで星空の余韻に浸った。
眠りに落ちるのは早かった。この世界に人がいたことにホッとしていたからかもしれない。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
【異世界研究活動記録6】
〈1日目〉
この世界に来て最初に受けた印象は、荒れていて何もなくてつまらない、だった。しかし、この世界には確かに魅力があった。それが、星空。それが魅力? と思う人もいるだろう。特徴としては薄いと思われても仕方ない。ただし、それはこの星空を見てから言ってもらいたい。きっと胸を打たれることだろう。
星というのは宇宙の遠く離れた所で、何年、何百年も前に光った光が届いて見えている。俺は星座に詳しくないが、星座ごとに神話なんかがあってりして、ロマンチックだ。
発見したことを書いておこう。その星座についてだが、この世界の星空には私の知っている星座がなかった。私が星座については知識不足なので、見つけられなかっただけかもしれない。この世界は、地球とはかけ離れたところにあるのかもしれない。
ただ、類似点もたくさんある。食べ物、家の形、燃料タンクなどだ。
住人はリブラさん一人だけ。みんな新天地へ行ってしまったらしい。宇宙開発競争は地球でもあったが、他の星への移住は前例がない。それだけこの世界の宇宙開発は進んでいるのだろう。
皮肉にも、どうやら俺はこの世界で最強らしい。比べる相手のいない相対的最強。これほど虚しいものはない。
そういえば、リブラさんは地球と違う星の人だから、地球の人から見れば宇宙人なのか。そう思うと、私は宇宙人に会うという体験をしてしまった。
ロケットを見つけられれば、地球に帰れるだろうか。その時はみんなに自慢してやりたい。ただ、遠く離れているとなると難しいかもしれない。地球に行ける目星がつき次第、準備を進めていきたい。
この世界の生活は始まったばかりだ。不便な部分も多いが、快適な異世界ライフになってほしい。星だけに。
ーーさあ、異世界生活のスタートだ。
スターだけに。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
翌朝。昨日と同様にパンケーキもどきを作った。二回目ともなると手際よくできた。パンケーキ作りをマスターしていた。さらに、少し砂糖を加えたら、とても美味しくなった。個人的には、星3つです。
いい天気だったのでベッドのシーツを干し、
部屋の掃除をした。
やることがなくなったので、ロケット発射場跡に行くことにした。もしかしたら地球に関する情報があるかもしれない。そのあとは図書館にでも行こう。
ーーそうして俺はこの世界の状況を把握していった。
夜になった。夜ご飯を食べた後約束の時間より少し早いが、外に出て空を眺めていた。何度見ても素晴らしい。だからこそ、惜しい。
リブラさんは昨日と同じ時間にやって来た。
手には大きな望遠鏡を持っている。
「やあ、海川殿。いい夜じゃな」
「はい」
「それじゃあ、ちょっと丘の方まで行ってみようか」
「はい。望遠鏡お持ちします」
丘の方は完全に遮蔽物がない。そこにあるのは俺とリブラさんと星空のみ。リブラさんは望遠鏡をセットして、いろんなことを教えてくれた。
「あれがな、ギョー座じゃ。その昔、英雄ヘラクレスが食べたらしい。あの明るいのが一等星のニラじゃ」
「ヘラクレスは口臭凄そうですね」
星座について語るリブラさんの声色は高い。よほど星が好きなのだろう。
「でな、あれがピ座じゃ。その昔、英雄ヘラクレスが食べていたらしい。あの明るいのが一等星のチーズじゃ」
「ヘラクレス太りそうですね」
解説をしているリブラさんは、自分の成果を自慢する小学生のように純粋な目をしている。
「でな、あれがサンプラ座じゃ。あの明るい一等星がランナーじゃ。それからヘラクレスが……」
星座について語るリブラさんの笑顔は、どんな星よりも輝いている。
「あれがうみへび座じゃ。その昔、英雄ヘラクレスが戦ったらしい」
「あ、それは聞いたことあります。地球からも見えました」
「おぉ! そうかい。一番明るいα星の名前がわかるかい?」
「いえ、そこまでは。あまり詳しくないので」
「あれだけ周りより明るいじゃろう? あれがα星のアルファルドじゃ」
「本当ですね、あれだけが周りより明るい」
「あれでも、一等星じゃなくて二等星なんじゃよ。周りが三等星ばかりだから明るく見えるんじゃ」
なんだか周りから浮いて見える。異質で、個性的で、孤独だ。取り残された孤独。
いろんな星座の話を聞いた。プチョヘン座、ネン座、ヒ座、わざわ座、ごぎょうはこべらほとけの座。
一通り話を終え、静寂が訪れる。リブラさんは、それを静かに切り出した。
「のう、海川殿、地球はどのようなところなんじゃ?」
「いい所ですよ。国境はあるものの、人と人とが繋がっています」
「そうかい。面白そうな所じゃな」
「はい」
しんみりとした空気に変わる。俺は恐る恐る聞いてみた。
「……リブラさんはあの時行けばよかったと後悔したりしましたか」
「……後悔していない、といえば嘘になるのう。じゃが、少なくても今は後悔していないよ」
リブラさんは、慣れ親しんだ故郷と、未開の地を天秤にかけて、この星を選んだ。残された余生を大好きな星を見ることに費やした。
「"地球"はリブラさんの思うほど、怖いところではありませんよ」
「なんじゃ……知っておったのか……」
「はい、ロケット発射場に資料がありました」
この星の人々は、みんな移住した。その行き先はーー地球だったのだ。ロケット発射場には地球に関する資料がたくさんあった。地球が居住可能なことも、地球までの距離がとてつもなく遠いことも書いてあった。もちろんリブラさんが知らないはずがない。
「すまない……おぬしに言ったら、おぬしも地球に帰ってしまうと思ったんじゃ……」
「別に怒っているわけじゃないですよ。おかげで素敵な話が聞けますし」
「家族も、友人も、知っている人が誰もいなくなって、最初はどうってことなかったんじゃが、だんだん寂しさを感じるようになったんじゃ」
周りから光がなくなっていく、そして孤独な星座になってしまった。
「わしが独りでいた時に、おぬしを見つけた。上手く言葉が出てこなかったよ。本当に、本当に、嬉しかったんじゃ」
「俺もあなたに会えて安心しました。」
俺よりも誰とも話さない期間が長かったリブラさんは、さらに安心したことだろう。
「海川殿、本当にありがとう」
「いえいえ、こちらこそ」
「最期にいい夢が見られたよ。これで悔いはない」
「やめてくださいよ、縁起でもない」
フラグチックなセリフ。
「でも、ひとつだけわからないんですけど、なんでみんな危険を冒してまで、あんなに遠い地球を目指したんでしょう?」
「……なんじゃ知らないのか」
「はい、どの資料にも書いてなかったです」
「……そのうちわかるよ」
「そう、ですか」
それからずっと、野原に寝転んで無言で空を眺めていた。こういう時間も悪くない。心を落ち着かせ、満天の夜空を観測する。
その時だった。
ーー流れ星だ。とても明るい星が流れている。降り注ぐ星々。こういう時は願い事を三回唱えるんだっけか。
「……」
願い事が浮かばなかった。焦って考える。早くしないと流れ星が消えてしまう。しかし、流れ星は消えていなかった。ゆっくり、ゆっくり降ってくる。その光を強くしながら。
ーーいや、違う。降ってきている! 文字通り降ってきている!
「……いよいよじゃな。海川殿、ほんとうにすまなかったと思っているよ」
「な、なんですか!? あれ!?」
「……いわゆる隕石というやつじゃよ」
「ち、近づいてきてますよ!」
「……ああ、そのうち衝突する」
「早く逃げましょう!」
「無駄じゃ。あれからは逃げられん」
「そ、そんなにデカイんですかね!?」
「……ああ、おそらくこの世界を破壊する程度にはのう」
急展開に頭が追いつかない。隕石衝突の危機。
「……前から、予測はされておったんじゃ」
「じゃあ、なんで! っまさか……!」
この星では宇宙開発が進んでいた。宇宙を研究して、観測して、そして気づいてしまった、自分たちの世界の危機に。巨大隕石が近づいていたのだ。巨大過ぎて撃ち落とすことも敵わず、隕石衝突は避けられないと知り、他の居住可能な星への移動を決めたのだった。その星は限りなく遠く、長い旅には危険がつきまとう。しかし、どうせ死ぬなら、故郷を捨ててでも挑戦しようとした。故郷を愛する一部の人々を除いて。
「海川殿、ありがとう、おぬしと過ごした時間は宝物じゃ。息子と語り合った日々を思い出したよ。こんな老人とのおしゃべりに付き合ってくれて、ありがとう」
「ま、まだ何か手が…!」
「……無駄じゃ。これは神に定められた運命なのかもしれん」
光の塊はどんどん大きくなっていく。
運命。運。
神は何のためにこの世界を創ったんだ? この世界に俺を送り込んで何がしたかったんだ? どうせ壊してしまうのに、どうしてこの世界を創ったんだ?
考えてもわかるわけがない。それは神の気まぐれ、神のみぞ知る。俺の願いを裏切るのが神だ。
でも、この老人の心を弄んだことに変わりはない。神は、孤独の痛みを知っているのか? 知っててこんなことをするのか?
やがて目の前が、光の塊によって影に包まれた。
ーーそして俺と独りの老人は、星になった。
★★★★★★★★★
目が覚めたら、見慣れた『area』世界。
「結局、こうなるのか……」
「おかえりなさーい!」
当たり前のようにめがみんが現れる。そんな仕事帰りみたいに出迎えられてもな……
「てか、またまた光の速さでで帰ってきましたね!」
「今回は俺のせいじゃないだろ……」
「せっかく神様が宇宙に返してくれたのにー」
「じゃあ、地球に返してくれよ」
きっと、そんな希望は受け付けてくれないだろう。
「今回の世界はどうでしたか?」
「どうもこうも……あんまりじっくり見れてないよ。ただ、星が綺麗だった。」
「星ですかー。私も時々語尾に星がつくんですけどね☆」
「語尾? 星?」
「あー、こっちの話ですー」
ワケがワカラナイヨ。
「そういえば、地球には七夕というイベントがありましたねー」
「あー、織姫と彦星の話だろ?」
「それです! ロマンチックですよねー!」
「そうか? 川一つくらい渡っちまえよって思うけどな」
「んもー! ロマンがないなー! あの絶妙な距離感がいいんじゃないですかー!」
「会いたい時に会えない。会いたくて会いたくて震えるってか?」
「そう! まるで私たちみたい!」
俺らの場合、死なないと出会えない。別に会いたくないけど。会う度に死ななくてはいけない。会うために死ななくてはいけない。死ぬ度に会わなくてはならない。そんな恋は、無理だ。それこそ、震える。
「星はロマンチックの象徴とも言えるものですよねー、星に詳しい人とかモテそうですし」
「俺はあんまり詳しくないぞ」
「詳しくなくても、ネットで調べたような薄っぺらい知識を、自慢げに彼女に向かって語る人とかいいじゃないですか〜」
「そうか?」
「『でも、やっぱり一番綺麗なのは君だよ』みたいな? きゃー!」
一人で妄想世界に行ってしまったようだ。
ああ、そうか。こいつも転生者が来ないと独りなのか。送り出して、二度と会えない人だっている。今まで何人もの消滅を目の前にしてきただろう。
「あ、海川さんは、子供の頃短冊書いたりしたんですか?」
「あー、書いたなー」
「中身当てましょうか? どうせ、異世界に行きたい、とかでしょ?」
「よくわかったな」
「むしろ、それ以外何があるんですか……」
「てか、あの願いを叶えてくれるのって誰なんだ?」
「一応、形式としては織姫にお願いしてるんじゃありませんでしたっけ?」
「星は願い叶えられないけどな。星は光だ」
「まったく、ロマンがないですねー。まあ、実際叶えているのは神様なんですけどね」
「じゃあ、織姫はお前じゃなくて神様だな」
「いやー! まあ"神様×海川さん"も悪くないですけど!」
神様って性別あるのかな。そういう問題じゃないけれど。
「星についてる神話って事実なのか?」
「まあ、モノによりますねー」
「ヘラクレスがピザ食べたりするのか?」
「あー、そういう逸話もありましたね」
「偽話じゃないのかよ」
ごめん、リブラさん。疑って悪かった。
「そういえば、今回の神からの特典ってなんだったんだ?」
「ん?"何もない"ですよ?」
「なんか特典くれるんじゃなかったのか?」
「だからー、"何もない"ことが特典なんです!」
「ややこしいな。矛盾してるだろ。」
「海川さんが、そう望んだじゃないですかー!」
「まあ、そうだけどさ……」
何事もない生活を望んだが、結局隕石衝突で死んでるし。
「次はどんな世界がいいですか?」
「なんでもいいよ。どうせロクな世界じゃないだろうし。」
「んもー、話が広がらないじゃないですかー」
「俺はあの世界で、適度な静寂もアリだなって思ったよ」
「それはコミュ障ぼっちの言い訳ですか?」
「うるせえ」
俺の場合、好きで独りなんだよ。独りが好きなんだよ。嘘じゃないんだからね。
目の前が明るくなり始めた。
「おや、そろそろお時間ですね」
「ああ、そうだな。」
なんだろう、少し惜しい。この俺が、もっとめがみんと話していたいと思ってしまっている? 次に飛ばされる世界でも、俺は独りかもしれない。そう思うと少し怖い。独りが好きだったはずなのに。神様からの特典以上に矛盾していたのは、俺の心だったらしい。
「……なあ、次に行く世界はどんなところなんだろうな……」
答えは知っている。けど、誰かと少しでも話したいのだ。
「それはー、神のみぞ知る☆」
「確かに語尾に星が見えた気がするよ」
「それ以上は言っちゃいけませんよー!」
まあ、どんな世界であれ、ゆっくりやっていこう。焦ってはいけないのだ。
「それでは! あなたに神のご加護のあらんことを!」
「お前も達者でな」
「え、なんか、年寄りくさいですねー」
「そうじゃろか?」
「はいはい、おじいちゃーん、次の世界へ行きましょーねー、サヨナラ三角、また来て四角!」
目の前が光で包まれる。
それは、暖かい光。何度も体験してきた聖なる光。でも、あの時見た満天の星空の光には敵わないのだった。
Another3 星の降る世界 完
というわけで七夕らしく、星のお話でした。雨ですけど。
なんというか、我ながら女の子成分少ないですね。未だに2、3人しか出てきてないという。
あと、描写って難しいですね。比喩の種類なんて、「〜のようだ」くらいしか使えません
星空の描写は苦労しましたー。
次回はメインストーリーのサイドストーリーをお送りします。




