第3章 ランゲージ・エンゲージ 2
【異世界研究活動記録】
〈はじめに〉
わたくし海川翔悟は、長年の苦闘(約2年)の末、ついに、異世界に転生した。
死ぬまでには行きたいという夢は叶わなかったが、死んでからも生きたいという内なる願いは叶った。
研究成果報告で前述の通り、私の研究はこれからが新たなスタートだ。
よって、本日より、私の異世界での毎日の活動を記録していくことにする。
それぞれの世界に、何日間滞在することになるかはわからないが、行く先々の世界の特徴や、我が世界でも真似できそうな技術などを、伝えられたらなと思っている。
しかし、この記録がいつ神の手によって消されてしまうかはわからない。あるいは、私の記憶がいつ神の手によって消されてしまうかもわからない。
日々、この記録を書いていることすら、忘れてしまう日が来るかもしれない。
もしーーーーーーー
神によって消される前に、この記録を読むことができているならば、
諸君には、
私の研究をぜひ世に広めてほしい。
異世界なんてない、現実を見ろ、
と言っている地球の奴らに一泡吹かせてやってほしい。
そしてもしも、私がウチュウに戻ったら、
その時は、ノーベル賞でも、ウルフ賞でもなんでも、もらっといて、やる。
イグノーベル賞でも可だ。
さあ。
ーーーーー異世界生活を始めよう。
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「こんな感じかなぁ。」
と独り言を言ってみる。
1年生の時に比べれば、文章力は少し上がった。俺だって成長している。なによりあの時みたいに1人じゃない。隣にはアイという女の子がいる。
地球での彼女との生活を思い起こしてみた。なぜだろう、ぼんやりしている。自分の大学生活もそれまでの人生も鮮明に覚えているのに、彼女との思い出は何一つ思い出せない。
どこで出逢った? なぜ親しくなった? どうして俺と一緒に転生した?
俺は彼女の何だ? 彼女は俺の何だ?
俺は彼女を、どんな風に思っていた?