第四話 究極の二択
今回のお題は、究極の二択……という事です。
すみません。良いタイトルが思いつかなくて、そのまんまです。
ビルの屋上から、下を見つめる男が一人……。
男は追い詰められていた。
働けど働けど、楽にならない暮らし。
さらに男は醜かった。
いい歳して彼女の一人も出来た事が無かった。
もはや生きていても、何も楽しい事は無かった。
「死のう」
その時、突然男の前に『異形の者』が現れた。
「ヒィッ! な、何だお前は!」
「私か? 私はお前らが言う所の神様という奴だネ」
「か、神様……?」
しかし男はすぐにそれを信じた。何故なら、その者は宙に浮いており、体は透けている。そして、とてもこの世の者とは思えない姿をしていたからだ。
「幸せにして欲しいカ?」
「か、神様っ! 俺を幸せにしてくれんのかい!?」
「そうだネ。お前が悪魔に魂を売る度胸があるならナ」
「た、魂?」
「そうダ。お前の願いは何でも叶えてやろう。その代わり――」
「……ゴクッ」
「お前の一番大切なものをもらう」
「一番大切なもの!?」
「そうダ」
――男にとって、一番大切なもの……それは両親だった。男にも両親だけは、ずっと優しかった。
「そ、そんなの出来るわけっ」
「デハ、この話は無しダナ」
「ま、待てっ……!!」
――男は追い詰められていた……それこそ死を選ぶほどに。
男に悪魔が囁く。
俺は死ぬのか……? 何一つ楽しい事の無いまま……。――そもそも、俺がこんなに不幸なのは両親のせいじゃないのか?
男の家庭は貧乏だった。
この醜い姿だって、親のせいだっ……!
「――親は子供の幸せを願うって言うよなぁっ……!」
男の目から大粒の涙がこぼれる。
「ごめん……親父、お袋っ……俺、幸せになりてえっ!!」
「決まりだナ」
「神様っ! 俺を、俺を幸せにしてくれえぇぇぇぇぇっ!!」
「お前の望み叶えよう」
異形の者が言うと同時に――男は倒れ、動かなくなった。
「オヤオヤお前の、一番大切なものは……『自分』だったようだネ」
おかげ様でこの連載も完結しそうです!
皆様、本当にありがとうございました!




