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4話 その1 金髪の美少女、登場! ☆

 街の中に入ると、あからさまに冒険者風の人たちが多く行き交っていた。

 しかしおっさんが多い。

 美少女冒険者が見当たらないんですけど……


「ふふっ、思っていた景色と違ってましたか?」

「別に下心とか全然ないし、そもそも何も言ってないんだけど」

「大丈夫ですよ。女の子の冒険者もちゃんといますから。まあ構成比は少なめですけどね」


 そうだよな。

 魔法とかスキルがあるんだから、美少女冒険者もいるよな。 

 びっくりさせないでくれ。


「それじゃあ、さっそくギルドに行こうか」

「そうですね。まずは冒険者登録です」


 プロネアとそんなことを話していると、二人組の男がこっちに近づいてくるのが見えた。

 

「ねぇ、君たち冒険者になりにこの街にきたの?」

「よかったら俺達がギルドに案内してあげるよ。女の子二人組の冒険者なんて珍しいねー」


 なんだこのチャラそうな男たちは。

 しかも俺は女の子じゃないし、ちゃんと男だよ。

 怪訝な顔をしたのだが、彼らは勝手に喋りかけてくる。


「俺たちBランク冒険者なんだけど、ちょうどパーティー探してたんだよな」

「そうそう。ついでだからダンジョン攻略もレクチャーしてあげるよ。本当は初心者なんて相手にすることないんだけど、たまには新人育成もしないとね」

「その通り。Bランクにもなると、後進育成とかも考えないといけないんだよな」

「ほら、一緒に行こう。こっちだから」


 そう言って男が俺の腕を掴もうとしたそのとき、彼は突然悲鳴をあげた。


「うがああああああああ、い、いてえええええ」

「お、おい、どうしたっ、ごふぅう」


 なぜか男の手は折れまがり、もう一人の男は腹を抱えて悶絶してる。

 いきなり何が起こったの。

 戸惑っていると、隣から呟くような声が聞こえてくる。


「クトリール様に気安く触れようなど、下位世界の人間ごときが何を考えてるのでしょう」


 隣を見ると、プロネアはひどく冷酷な表情で彼らを見下していた。

 とても恐い顔つきをしている。

 しかし、俺と目が合った瞬間。

 彼女はすぐに表情を可愛いものに戻し、困ったように謝ってくる。


「申し訳ありません。クトリール様の可愛さに対する配慮が足りませんでした。ナンパされるなんて想定できたことでしたのに、近寄ってきた時点で迎撃するべきでしたね」

「しちゃまずいだろ……」


 既にこの男たちに危害を加えたのも、かなりまずそうだけど。

 仕方ない。


「プロネア、逃げるよ」

「えっ?」

「人目を引いてるし、このままじゃ捕まっちゃうよ」


 この街にも何かしらの自治組織はあるだろうからな。

 例え逮捕はされなくても、面倒事なのは確かだ。

 俺はプロネアの手を引くと、とりあえずその場を離れることにした。

 

 そうして適当に路地を走り抜けていく。


 初めての街なので、道なんか当然知ってるはずもない。

 ただ距離を取ってるだけで行き先なんかも、まるで決めてなかった。

 しかし偶然にも目的地にたどり着いてしまったようだ。


「ここって冒険者ギルドだよな……」


 聞くまでもなく目の前の大きな建物の看板に、思いっきりそう書いてあった。

 当然のようにプロネアも答える。


「そうですよ。着いちゃいましたね、せっかくですしこのまま登録も済ませますか?」

「さすがに今はちょっとな……」


 さっきの男たちに目的地はバレてるし。

 

「こっちが被害者なんですから、そんなに気にしなくてもいいのでは?」

「プロネア、俺達は何の被害を受けたんでしょうか……」

「クトリール様が汚されそうになりました」

「……その言い分が通ると思う?」

「もちろんです!」


 俺はたぶん無理だと思うな……

 

「やっぱり今日は、先に宿屋を取りに行かない?」

「それでも構いませんよ。私はクトリール様の命令に従います」

「別に命令じゃないんだけどな……」


 まあプロネアも反対してないし、ギルドにはまた夜か明日にでも来るか。

 そう決めたところだったのだが――

 俺はいきなり後頭部に強い衝撃を受けた。


「はうっ!」

「きゃ、クトリール様っ!」

 

 それを見ていたプロネアが悲鳴を上げる。

 しかしそれと同時に俺は再び、背中に衝撃を受けてしまった。

 まるで誰かがのしかかってきているような感じだ。


「はうううっ!」

「クトリ―ル様になんてことをするんですかっ!」


 プロネアがすかさず、そいつを蹴り飛ばす。

 そしてすぐに俺の方へ駆け寄ってくると、優しく抱き起してくれる。


「だ、大丈夫ですかクトリール様」

「平気だよ。でもちょっと痛いかも」

「大変です。す、すぐに回復魔法をかけますね!」

「ありがと……」


 さっきのナンパ男の報復か。

 そう思って蹴り飛ばされた男に目をやると、知らない男だった。


「誰だこいつ」

「分かりません。いきなりギルドの入り口から、投げ飛ばされてきたように見えましたけど……」

「投げ飛ばされてきた?」


 だったら今のは、ただの衝突事故ってことになるが。

 喧嘩でもしてたのかな。

 いい迷惑だよ、完全に巻き添えをくらってしまったじゃないか。

 そう思ってギルドの入り口を見ると、ちょうど誰かが出てきたみたい。


「いつまで外で倒れてますの! 説教はまだ終わってませんの!」


 怒ったような口調でそう言い放ったのは、金髪の美少女だった。

 見た目からすると冒険者なのかな。

 とても可愛い。

 思わず見つめていると、その子と目が合う。



挿絵(By みてみん)



「何ですの、何か文句でもありますの?」

「いや……可愛いなって思っただけだよ」

「なっ、何を言ってますの! 邪魔だから、どいて欲しいですの!」


 彼女はそう言って横を通り過ぎると、俺にぶつかってきた男の襟首を持ち上げた。

 

「寝たふりはやめなさいですわ、蹴り飛ばしたくらいで気絶なんかするはずありませんの!」

「……ぁう、……がはっ」

「早く起きなさいですわ!」

「……ぐっ……あぐっ……」

「あれっ、も、もしかして寝たふりじゃありませんの?」


 金髪の少女はだんだん焦り始めていた。

 しかし追い打ちをかけるように、男はいきなり血を吐き出す。


「がほっ……ぐほっ……」

「な、なんでこんなにダメージを受けてますの!?」


 それって、プロネアが蹴り飛ばしたせいかも……

 高レベルモンスターを簡単に倒せるプロネアの蹴りだからな。

 低レベル冒険者なら死んでいてもおかしくない。

 

「プロネア、早く治療してあげて」

「私の精霊魔法を下位世界の人間のために使うのですか?」


 彼女は露骨に嫌そうな顔を見せた。

 自分で怪我を負わせておいて、嫌がるってどういうことですか……

 

「命令だから、その男の傷を治して!」

「仕方ないですね。クトリール様以外にはあまり使いたくないんですけど」


 そう言って渋々ながらも、彼女は詠唱を唱えた。

 

「星みた原初で、回復しちゃって」


 詠唱の原文を知らない俺でも分かる。

 はしょりすぎだろ、それ!

 しかも明らかに声にやる気がないよ。


「これで大丈夫でしょう」

「ほ、ほんとに?」

「まあ、いつもより効果は低いですけど下位世界の人間にはそれで十分です」


 ちゃんと回復してあげて……

 もう一度命令し直そうと思ったが、後ろからの物音に気が付く。

 振り返ると、倒れていた男が起き上がっていた。


「うぅっ、いてて」


 あれで回復したのか……

 ともかく、これで金髪美少女も安心したことだろう。

 そう思って見ていたら、彼女はなぜか怒っていた。


「やっぱり寝たふりでしたの! また説教ですわ!」

「はぁ? もうお前とはパーティーなんか組まねーよ! 噂のCランク冒険者とか聞いて一緒に組んでみたけど、ただのわがまま娘じゃねーか。こっちがDランクだからって横暴すぎんだよ!」

「いきなり何ですの! Dランク冒険者のくせにうるさいですの! 私の指示を無視するのが悪いんですわ! こっちこそ、臆病者の冒険者とは組みたくないですの! あなたなんて除名ですわ!」

「勝手にしてろ、このクソガキが!」


 そういえばこの二人の喧嘩の巻き添えをくらったんだよな、俺。

 目覚めるなり喧嘩を再開した二人を見て、それを思い出した。

 そして男はそう捨て台詞を吐くと、そのまま立ち去っていく。


「ふんっ、別に代わりのメンバーはいくらでもいますわ!」


 金髪美少女もそう言うとギルドに戻ろうとしたが、その行く手を4人の男が塞いでいた。

 入口を塞いでいたら、他の利用者に迷惑だろ。

 しかしそう口を挟める雰囲気でもない。


「なんですの、あなたたちも除名にされたいんですの!」

「なにが偉そうに除名だよ。こっちから抜けるんだよバーカ」

「俺も荷物持ちばっかだし、コキ使われた上に罵られるし、別のパーティー行くわ」

「可愛いからパーティーに入ったけど、とんだ地雷だったな」

「ほんとな。可愛いCランク冒険者だからと思ったけど、こんなパーティーいる価値ないわ」


 4人の男たちは次々に言いたいことを言うと、さっきの男と同様。

 彼女に絶縁状を叩き付けた。

 

「……べ、別にあなたたちみたいな役立たず、いらないんですのっ!!」


 金髪美少女は俯きながら叫ぶようにそう言うと、こちらを睨みつけてきた。

 な、なんで俺が睨まれる!?


「バーカッ、ですの! 人のこと勝手に見てこないで欲しいですわ!」


 そう言い放つと、彼女はどこかに走り去っていった。

 目が合っただけで罵倒されたのですが……

 あっけにとられていると、隣からまた呟く声が聞こえてきた。


「私の目の前でクトリール様を貶すとは、下位世界の人間は命がいらないんでしょうか……」


 プロネアが頬をひくつかせるほど怒っていた。

 これはちょっとあの子の命が本当に危ないかも。

 

「プ、プロネア。あの子もつい八つ当たりしちゃっただけだよ。怒らないであげて」

「ですがクトリール様、このまま馬鹿にされたままでは気が治まりません」

「そうは言っても俺たちより年下みたいだったし、そういう年頃なんだよ」

「しかし……」

「はい命令ね。あの金髪美少女に手を出してはいけません」

「嫌です。クトリール様を馬鹿にされたまま、引き下がれません」

「えっ……だ、だって命令だから……」

「だったら命令無視します。罰を受けても構いませんが、クトリール様の名誉は守ります」


 大げさすぎるだろ。

 ただ女の子にバカって言われただけだよ?

 

「そこまで必死になることでもないだろ」

「だって……」


 彼女は堪えるに唇を噛みしめ、やがて口を開く。


「あの金髪の女の子、クトリール様の好みでしたから。やきもちだって焼いちゃいます」


 ただの個人的感情じゃないか……

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