表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

12/45

3話 その3 到着初めての街、ディナエルス

 森を抜けた先の平原に、舗装された道が見えてくる。

 アスファルトみたいに現代的なのもではなく、草を抜いて土を固めただけの単純な道なんだけど。

 こういうのは守留町でもよく見かけたな。


「そろそろ街道にまで出てきたってことかな」

「そうですね。ここまで来ればディナエルスも近いですよ。ほら、もう見えてきました」


 プロネアはそう言いながら指をさす。

 

「あれか。ずいぶん高い塀に囲われてるんだな」

「これだけ外にモンスターがいますからね。街も防御を固めないと簡単に襲われちゃいます。それに他国からの侵略がいつあるかもわからない世界ですから。物理的な障壁だけでなく魔法的な結界も使って、二重の防護システムを使うのがこの世界における先進的な対強襲構造なんですよ」

「へー、この世界の技術って意外と発展してるんだな」

「庶民生活は中世レベルですけどね。ゲームの影響が反映されやすい戦闘技術や魔法関連は技術革新が起こりやすいみたいです。それでもクトリール様がいた上位世界に比べると、大した技術ではありませんけど」


 戦闘技術はさておいても、魔法関連は少し興味があるな。

 やっぱりせっかく異世界に来たのだから、それは是非とも体験しておきたい。

 元の世界に帰る手がかりに繋がるかもしれないし。

 それにその技術を持ち返れば、とんでもないお金になる気配がする。


「どうしたんですかクトリール様、嬉しそうな顔をして」

「この世界の技術革新を祝福していただけさ」

「クトリール様は勝手にデータを利用されてるわけですから、怒っていいんですよ?」

「とんでもない。むしろどんどん利用して欲しいくらいだよ」

「寛大なんですね。アシストキャラとしてマスターの器が大きいと、私も自慢げになっちゃいます。えへへ、クトリール様は美少女みたいな見かけなのに、懐が深くてかっこいです」


 ……懐の深さに、別に見かけは関係ないだろ。

 もっとも男らしさを追求してる俺は、そんな小さなことで文句は言わないけど。

 でも言わないだけで、気にはしてるからね。

 美少女とか可愛いとか言われるたびに、精神ダメージは受けてるんだよ?


「あれっ、今度はどうしたんですか。なんだか浮かない顔をしてますよ」

「何でもない。もっと頑張ろうと思っただけ……」

「向上心も忘れない気構え、可愛い見た目に反して実直で堅実なところも素敵です」

「あ、ありがとう……」


 プロネア……

 人の顔色みてわざとやってないよね。

 褒めてるんだよね。

 からかってるわけじゃないんでしょ?


 俺はこれ以上の心理的負担を増やしたくなかったので、話題を変えることにした。

 

「ところで、この世界って高レベルモンスターしかいないってわけじゃないよね」

「もちろん弱いモンスターはたくさんいますよ。それがどうかしたんですか?」

「いや、立て続けに強いモンスターとばかり遭遇するなって思ったから……」


 オーヴェミウス、討伐推奨レベル60。

 グンルスレイング、討伐推奨レベル190。

 リノラフォルド、討伐推奨レベル120。


 もしプロネアがいなければ、たぶん俺はどの場面でも死んでいた。

 いきなり出会うにしては、どのモンスターもふざけたレベルだったからな。

 そう思っての質問だったのだけど、彼女は納得したように頷いた。

 

「そうですね。言われてみればそうかもしれません。でもこの世界はゲームみたいにモンスターのレベルで生息域が変わることはありませんので、単なる偶然でしょう。どちらかと言うと、現実的な生態系の方が影響してますから。どの地域にも強いモンスターと弱いモンスターが生息してるんですよ」

「確かに元の世界でもライオンとか狼とか強い動物だけが住む地域なんてないよな」

「そういうことです。ちゃんと弱いモンスターもいるので安心して下さい」


 モンスターが出てくる時点で安心できるわけないけどな。

 恐がってるとか思われそうだから、そんなこと言わないけど。


「でもそうなるとこの世界に住んでる人も大変だよな。俺みたいに初めて会うモンスターが、いきなり高レベルってパターンもあるだろ。それってレベル上げもできずに死にそうだけど……」

「だからダンジョンが人気なんですよ」

「どういうこと?」


 ダンジョンなんて、さらに危険そうなイメージしかないよ。

 だいたいのゲームではレベルを上げてから行くし。


「この世界のダンジョンはですね、階層ごとに決まった強さのモンスターしか出てこないんですよ。だからみんな、そこでレベル上げをしてるわけですよ。いきなり街の外に出かけるのは割と自殺行為というわけです。街の外に出ても平気なのはCランク冒険者になってから、というのが目安になってます」

「Cランクって何段階評価のCなの」

「ランクは一番高いのがSで、次がAですから、上から4番目ですね。ちなみに一番下はFランクらしいですよ。あっ、もちろんクトリール様は私的にSSSランクなんですけどね!」


 SSSランクとか、明らかに今適当に思いついたことをぶち込んだだけだよね。

 勝手にランクを水増ししないでもらえますか!

 しかもそのランクって、いくら強くても最初はFから始まるやつだろ。

 どんなゲームの冒険者ギルドでもお決まりだったよ!


「何にせよ、自由にこの世界を旅するにもレベル上げは必要なわけだな」

「クトリール様のことはちゃんと私がお守りするので、そんなに心配なさらないで下さい」

「えー、俺も高レベルになりたいんだけど」

「クトリール様の場合はちょっと特殊ですから、すぐには無理かもしれません」

「特殊って、なにが?」

「もう街に着きますから、それは宿屋でゆっくりお話ししましょう」


 確かにプロネアの言う通り。

 歩きながら喋っているうちに、もう街の入り口が迫っていた。


「仕方ない。それじゃあ、後でちゃんと教えてよ」

「もちろんです」


 それから程なくして入場門にたどり着くと、俺たちはディナエルスへと足を踏み入れた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ