表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/21

おしゃべりは尽きないねっ♪


「どうしたの? なんか幻想殺しにでも会ったみたいな顔してるけど」

「なにそれ? 遠くから見てたんなら、助けてよね」

「サイテンさんがいるから大丈夫だと思ってたのよ。ごめんね」

「いいよ。サイテンはお盆探してて見てなかったみたい」

「そんなもんよ」

「なんの話ですか?」


 サイテンは、わけがわからない、といった風に、マイペースにコップを並べている。姉さんにエスプレッソ、ボクにレモンティーを。取っ手の位置もさることながら、スプーン、砂糖など、綺麗な形になっている。どこで覚えたそんな芸。ちなみに、サイテンは黒豆茶だ。渋いなぁ。


「カオルが少し成長したってことよ」

「それはいいことですね。胸はちっとも成長してませんけど」

「本当にね」

「ちょ、ちょっと。会話おかしくない?」

「どこがよ」

「カオルさんは女性でしょう?」

「いやいや、何言ってんの? あんまり大きな声が出せないからって、言っていいことと悪いことだってあるんだよ?」

「完全に女の子じゃない。見た目は」

「ですです。どこからどうみても女の子ですよ」

「でもブスって言われたよ?」

「それはね、カオル。敵認定されただけよ」

「告白してフラれた挙句に敵認定とは、なんと恐ろしい」

「……泣きたい」

「気を落とさないの。自分より可愛いって思われたってことだから、自信持って!」

「ですです。カオルさんは魅力的な女性ですよ」

「嬉しくない。しかも身内に言われるとか、なにそれ。言われてもうれしくないけど。それ以前に男なんですけど」

「なーに言ってんの。あの男の子だって、カオルを見てたじゃない」

「あれは性獣の目でしたね」

「一応、友達だからそんなヘンタイみたいに言わないであげて……」

「あらら。優しいのね。だから敵認定されるのよ」

「そうですよ。だから、カオルさんは余計にイイ匂いがするんですよ」


 はい?

 サイテン、さらりとなに言ってんの? ちょっとそれは引くわぁ……。

 匂いって、なにそれ。いつ嗅いだの? 気持ち悪い。

 それともなに? ボクがくさいっての?


「ボクがくさいってこと?」

「いいえ。もっと嗅ぎたくなる匂いです。女性ホルモンでしょうか」


 ヘ、ヘンタイ……ッ!

 気が付くと、姉さんも少し距離を作ってる。

 だよね、おかしいよね。なんなのコイツ。おかしいんじゃない?


「そうやって怯えている姿。なかなかイイですねぇ……」

「そそそそそ、そういえばさ! サイテンはさ、姉さん、姉さんはどうなの? ホラ、ボクなんかよりよっぽどいいでしょ。ね? ね?」

「私のタイプはカオルさんですよ」

「いやさ、女性だよ?」

「それに、お姉さん、付き合っている人いるでしょう?」

「えっ、そうなの?」

「ばれちゃったか」

「マジっすか」

「マジっす」

「見たことないよ?」

「朝帰りとかしてるじゃん」

「ああ、あれかぁ。てっきり外で呑んでるのかと。へぇ。知らなかった」

「今度、紹介してあげるわ」

「うん、お願い。結婚するの?」

「いやー。そこまでは決まってないわね」

「でももう、三十でしょ?」

「うるさい。でも同棲の話はチラホラ出てるわよ」

「ひゃー。すごいねぇ。どうして黙ってたの?」

「伝えようとしたのよ? でもなんか、タイミングがなくてね」

「そうなんだぁ。よくわかったね、サイテン」

「匂いです」


 うわっ。

 ヘンタイ発言。


「いやいやいや。なに? サイテンってさ、匂いフェチ?」

「よくわかりましたね。女性特有のあれがいいんです」

「へ、へぇ……」


 質問しといてなんだけど。対応に困る……。

 気を取り直して。


「えーっとさ、じゃあさ。なおさらボクはNGなんじゃない?」

「いいえ。カオルさんは女性の匂いがしますよ?」

「……意味がわからない」

「というわけで、カオルさん一筋ということで」

「ますます意味がわからないよっ!」

「やっぱりあんたら、相部屋がいい?」

「そうですね」

「よくないよっ!」


 姉さんは冗談キツイし、サイテンはヘンタイだ。

 でもまぁ。こうしてお話してると、楽しいよねっ♪


 楽しく。

 和気あいあいと。

 こんな風に、ボクたちの共同生活が、はじまったんだ。

 



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ