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言い訳してみたよっ♪

 

 突然、扉が開かれた。

 バタンッって音が響き渡る。

 びっくりして振り返ると、姉さんだった。休日に着るいつもの暖色系のセーターに身を包んだ、ポニーテールの女性。スラリとした美人さんだ。あっ、ダンショクって、暖色だよ? いいかい、暖色なんだよ? わかったね、暖色系が好きってことだかんね!


「カオル、うるさい。騒ぐぐらいなら夕飯はもう作ったんでしょうね……って、あんたら誰?」


 ビシィッと、ボクは石になった。

 片方は女装。片方は上半身裸。女装男の方は実の弟で、上半身裸の男を跪かせている。対して上半身裸の男はというと、スカートの中を覗き見しようといわんばかりに頭を床につけている。どんなプレイだ。こんな姿を見られるなんて、実の弟としてドキドキもんだ。いや本当、心臓が痛い。

 黙っていると、サイテンがスカートをめくって中身を確認してきた。おまっ、バカ! 何満足そうに頷いているんだよ、この変態が! 気持ち悪いんだよ!

 スカートを手で抑えて対抗しようとしたけど、じりじりと力の差で再び白日の下にさらされそうになる。くぅっ、コイツ、最低だッ!


「あれ、カオルはどこ? 本人がいないのに、こんなところで男女がいちゃつくっての、よくないわよ」


 あっ、バレてない。

 これが女装の才能ってヤツなんだ。すごいなぁ。

 少し感心していると、油断した隙に、サイテンがスカートの中に頭を突っ込み、その姿のまま、見た目通りの愚かな発言をした。


「なに言ってるんですか。カオルさんはここですよ。この女装した変態です」


 無言で膝蹴り。

 ぐはぁ、と鼻血をまき散らかせながら仰け反る天使。もうやだ、コイツ本当にやだ。何が天使だ、こんなヤツの羽なんてむしり取ってしまえ!

 いぎゃあ、ひぃぃ、ごめんなさい、もうしませんから、なんてBGMが聞こえてくるが、無視だ無視。

 天使の羽をもぎ取っていると、姉さんが、恐る恐る尋ねてきた。このボクに。あられもない格好の、このボクに。


「えッ……! ひょっとして……。カオル?」

「うぇぇぇッ。あ、いや、その……」


 ヤメテ! そんな目で見ないで! そんな、好奇心と背徳感と、官能的な目で見ないで! 知ってるんだから、姉さんの本棚に並んでる、男色系の本の数々のこと、知ってるんだからねッ。

 うろたえるボクを尻目に、いつの間にか、全くもって本当にどうやったのか、ボクのブラを手にしたサイテンが呆れた目線でボクを一瞥した。


「はっきり言った方がいいですよ。こんなことまでしてるんだから」

「か、返してよ!」

「エ゛ッ。返してって……」

「お願い、戻って!」


 ボクはお祈りした。ハートに天使の翼が生えたシルバーペンダントを手に。すると、ブラは光に包まれてボクの身体にフィットした。よかった、これで安心……って、違うからね! 安心じゃないからね、これがフォーマルなボクじゃないからねッ!


「すでにそこまで使いこなせるなんて……。素晴らしい才能です」

「こんなこと、二度とやめてよね」


 羞恥心に身を悶えていると、姉さんが、遠慮がちに疑問を口にした。


「カオル……。その、つまり……。やっぱり女の子だったの? 薄々思ってたの。こんなに可愛い野郎が男の子なはずがないって。やっぱりそうだったんだ。ごめんね、気が付かなくって。もっと同じ女の子同士、相談に乗って上げれたら良かったのに……」

「ボクは男だよ、姉さん。そうじゃないんだよ」

「あっ。そうなんだ。ごめんね。男の子になりたい女の子なのね」

「ちちち、違うって! おかしな方向に持っていかないで!」

「十分おかしい方向じゃないですか」


 コイツ、コイツ……!

 無言で羽をむしる。いぎゃぁ、ひいぃ、ごめんなさい、なんてBGMが聞こえてくるが、無視だ無視。


「えっと、どういうこと?」

「そのね。つまりね……」

「女装に目覚めたということです」


 すっかり禿げた背中に向かって平手打ち。

 バチーンッ、と乾いた音と共に、ドMの天使が「ありがとうございますッ」なんて艶やかな声を出した。

 非常に気持ち悪い。

 すると、とても困惑した姉さんが、説明を要求してきた。

 だよね、そうだよね。わけわかんないのはボクもだけど。

 そうして、ボクは、説明した。女の子にフラれたところから。

 穴があったら入りたい……。

 





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