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第九十五話《校章》



「それで…貴様は何者だ」


「さあな」


シンの眉間にしわがよる。


「とぼけるな」


「言ったはずだ。お前を信用したわけじゃない」


白い男もこちらを隙あらば食い殺そうと睨んでいる。


「…尋問にするか」


シンが魔法を放とうと手を白い男の頭に向けたが白い男は引かなかった。


「何をされようともあの人以外は信用しない」


だが自身の背後に誰かいることを自分から口にしてしまった。


「…やっぱお前馬鹿だろ」


白い男に向けた手で自身の頭を抱えるシンだった。


「貴様、誘導したな!」


シンの言葉で自身が言ったことに気づいた白い男は怒りをあらわにした。


「…もういい、お前の言うあの人とやらを今すぐ呼べ。話はそれからだ」


「誰が貴様とあの人を会わせるものか!あの方は記憶喪失で奇怪な体をしていて忌み嫌われていた俺に優しくしてくれたんだぞ!」


今度は自身の能力のことと過去について話してしまう白い男だった。


「…話を変えよう。なぜ小屋を爆破した?」


「お前を狙おうとして小屋に隠れていたが縛られていた女が助けてくれと連呼して煩かったから攻撃しただけだ」


今度は素直に喋る白い男だった。うまく誤魔化せないと悟ったのだろう。シンは少し考えることに集中しようとした。


しかし白い男はその瞬間を待っていたかのように目から光線を放ち、自身の動かない両足を切断した。


「ぐ、ぐああああああああああああっ!!」


白い男は苦しみながら転がるが足は即座に再生し立ち上がった。


「まぁそうするしかないな。また来るといい、今度はあの人とやらと一緒にな」


シンはわざと隙を作ったようだ。白い男はこれ以上のことを何も知らないだろうと考えたのだ。


「貴様ぁ!絶対殺してやる!」


捨て台詞を吐いて白い男はその場から光速で消えた。


「?」


そして白い男は何かを落としていった。シンはそれを拾った。


「!?これは…」


それはシンにとって衝撃的なものだった。


「おーい、シン!」


その場で今までのことを整理しようとしたらネビューがやってきた。シンは拾ったものをポケットに隠した。


「さっきの奴はどうした?」


「逃がした」


ネビューはシンが白い男を逃がしたことにシンは何か考えがあるのだと思い何も言わなかった。


「首謀者って奴とは無関係だったのか?」


「…ああ」


ネビューの口から首謀者のことが出たが、どうせボイルさんが教えたのだろうとシンは驚かなかった。


「ま、お前も無事みたいだし眠っている人たちも目を覚まし始めている。シミーの証言からあの白男はシミーたちとは無関係みたいだしな」


ネビューはシンを見た。シンが何を見て何を考え何を見つけ出そうとしているのか想像もつかない。だがシンに一つだけ伝えたいことがあった。


「…シン、一つだけいいか」


「なんだよ」


「絶対に一人で突っ走るなよ!何かあったら俺に言うこと!いいな!」


ネビューはシンに顔を近づけて睨みながらそう言った。


「なんだよ急に…」


「お前は強い、俺なんか足元に及ばないほどに。だがな、力になりたいんだよ」


「なんでそこまでするんだ?ボイルさんならともかくお前がここまでする理由はないぞ」


するとネビューは自身の親指で自分の胸を示した。


「俺とお前は友達(ダチ)だからだ!」


友達、シンはこの世界に来てから軽く考えてきたことだ。だがこの言葉で気づいた。


「…下手すりゃ死ぬぞ」


「俺とお前が組めばもう誰も死なないさ!首謀者も捕まえられる!」


ネビューの言葉には力があった。その言葉はシンの心に突き刺さるものだった。


「気楽だよお前は」


シンは笑みを浮かべて首都に向けて歩き出した。


「おい!約束だぞ!絶対だぞ!」


ネビューが叫んでいるのを余所にシンは頭を働かせていた。そして拾ったものを見た。


拾ったものは見覚えのあるものだった。それは、それはシンが前の世界にいたときに通っていた高校の校章だった。


つまり、転生者はシンと同じ高校の生徒だったということになる。しかし露骨すぎるのだ。わざわざこんなものを持たせる必要はないはずだからだ。校章をポケットにしまい警戒を強めるシンだった。


一方負けて逃亡した白い男は何とか両手を再生させてどこかにある小さい小屋に到着した。


「帰ってきました!」


白い男が扉を開けると、中には10歳程度の小さい少女がいた。


「それで…どうだったの?と、聞くまでもないね」


少女は白い男の血まみれになった服を見た。


「す、すみません!今度は、今度こそは!」


土下座をしながら謝りもう一度チャンスが欲しいと懇願する白い男だった。


「いいよ、こうなることは分かってたから」


「はい?」


「楽しみだよ…心」


白い男が首を傾げる中、少女は楽しそうに笑みを浮かべるのだった。

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