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第八十八話《ネビューVS老人》









ネビューはユーラインを抱えたまま起きている人を探して王宮をさまよっていた。


「おいおい、寝てないやつが全然見つからないな…」


流石に疲れたのかネビューはまだ起きる気配のないユーラインを下して地べたに座って休憩することにした。


「やっぱりさっきの爺さんを見失うべきじゃなかったな…」


ネビューは先程殴った老人を見失ったのを後悔した。


「!?」


すると突然何らかの魔法での襲撃を受けた。ネビューはとっさにユーラインの頭を押さえて伏せて難を逃れた。


「ほう、今のを躱すとは勘のいいやつだな」


魔法が撃たれた方角を見るとそこには先程の老人がいた。


「爺さん何者だ?」


「死ぬ奴に答えても仕方なかろう」


老人はネビューに殺意むき出しで答えた。


「成程」


取りあえず余裕を見せるネビューだったが内心はビクビクしていた。まさかここまで殺意むき出しにされるとは思ってなかったからだ。


「抱えているユーライン様をこちらに渡せば命だけは助けてやっても構わんぞ」


それを聞いてこの老人が今回の事件の関係者でさらに主犯の一人であることが分かった。渡したらシンの言ってたことが現実になるだろう。


「それを聞いちゃあ黙って渡す気にもあんたをみすみす見逃す気にもなれんな」


ネビューが拒否したらさらに老人の殺意は増大した。


「爺さん、あんたに聞きたいことが山ほどあるんだ。そしてとっとと眠りの魔法を解いてもらおうか」


「ふっ、お前ごとき小僧に私が遅れを取るとでも?」


「言ってろじじい」


老人が魔法を放つ態勢に入った。おそらく強力な魔法を放つ気でいるのか魔力が上昇していることがネビューにも分かった。しかしネビューは落ち着いて老人の腹を殴って阻止した。魔法はイメージで成り立っているため強い痛みを感じれば強靭な精神がなければ魔法は発動しない。


「な…ばかな…」


老人は腹を押さえて悶絶していた。


「烈火祭であいつの決闘を見て俺はちょっとだけ決闘のコツってのが分かった」


ネビューはあのシンとシャルドネの決闘を見て戦い方を変えた。というよりは魔法だけに頼らず積極的に動くようになっただけだ。


「決闘ってのはいかに自分の力を出し切るかじゃない、いかに相手の実力を発揮させないかで勝負が決まるものだってな」


老人が腹を押さえたまま魔法を使おうとネビューに向けて手をかざした。しかしネビューは老人の顔を殴りそれを阻止した。かなり優勢に戦っているがこれは相手が動けない老人だからであって決してネビューが強いというわけではない。


「かはっ…」


老人は倒れそうになるのをこらえたがすかさずネビューは『光装』を使い老人の目をくらました。そしてシンのアドバイス通り直ぐに解いた。ここで畳み掛ければいいものをネビューは相手の側面へ移動しただけで止まってしまった。


「俺はシンやシャルドネ先輩のように化け物のような動きは出来ない。でもヨボヨボのじじいよりかはるかに速く動けるぜ!」


「このっ!」


このままでは不利だと分かってはいたが老人はネビューの挑発に乗って強力な魔法を使おうとした。


「おっと魔法は使わせないぞ!」


魔法を使わせる前にネビューは足払いをして老人の体勢を崩した。この決闘、はたから見ればこれは老人虐待以外の何物でもないことにネビューは気づいていない。


「くっ!」


老人は起き上がろうとした。しかし弱った足腰のせいなのか素早く起き上がれなかった。その隙をネビューは見逃さなかった。


「さっきのセリフからしてあんたやり手みたいだし、速攻で終わらす!」


「がぁ!」


ネビューは老人の頭を殴って地面に叩きつけた。グジャ、といった生々しい音とともに老人は気絶した。


「ふぅ、やっぱシンみたく簡単にはいかないか」


ネビューがこんな実力じゃあまだまだだと考えると気づいてしまった。老人が気絶してしまったことを。


「あ、じじい気絶させちゃダメだった」


老人が起きるまでまた寝ていない人間を探さないといけないのかと面倒臭がるネビューの元に起きてる人間が走り寄ってきた。


「ネビュー!」


その人間とはネビューの父親であるボイルだった。


「なんだ。やっと寝てない人に出会ったと思ったら親父か」


そう悪態つくネビューだったが内心ここでようやく親父にバトンタッチできるとウキウキだった。


「一体これはどういうことなんだ!王宮にいる人どころか首都全域の人間が寝ているのになぜお前だけ寝てないんだ!」


ここでネビューはこの王宮だけが異常なのではなくこの首都全域が異常だと気づいた。そしてそこまでのことができる老人を倒したという優越感で心がいっぱいになった。


「そういう親父こそ。俺は普通に起きれたぞ」


でも今自分が起きられるということは存在を忘れ去られていたということだと思いちょっとへこんだ。本当のことを言うとネビューはイレギュラーな存在で来ることが想定されていなかったため起きることができたのだ。


「私はどこかこの事件に関わってそうな人間がいないか徹夜で調べていたんだ」


「それで?怪しい奴はいたのかよ」


「ああ、でもなんでこの事件の主犯最有力のお方がこんなところに…」


ボイルは倒れている老人を見た。その様子を見る限りではこの老人はかなりの実力者らしいとネビューは思った。


「あ、それ俺がやった」


そして自信満々に倒したことを報告した。


「なんだと!?このお方は王宮の政治家の中でも指折りの実力者だぞ!?」


「ま、俺にかかればこんなもんよ!」


息子の大金星をにわかには信じられないボイルだった。












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