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第八十二話《料理》









「多く…ないですか?」


「そうね。ものすごく多いわね…」


シンとルナとセリルが大広間で見た光景は想像以上に凄かった。山盛りにされた揚げ物たち。山のようなごはん。それが一人一人に行き渡っているテーブル。三人は量が多いという漠然とした感想しか持てなかった。


「何言ってるの二人とも。これが普通の量じゃないの?」


シャルドネがそんなこと言っているがそんなことは三人の耳には入らず、三人が考えている事は一つしかなかった。


「どうするのこれ、私絶対に食べられないと思う…」


「私もです…」


「わ…僕もです…」


こんな山盛りの量を出されたら確実に食べきれないという事だ。客人として招かれていて、さらにこうやってこの家にいる全員が集まって食事をするこの状況で夕食を残すのは世間体としてよくないのだ。


「ほら、三人の分だよ」


どうしようかと思う三人の元に料理がやってきた。三人は目をつぶって現実から目をそらそうとしていたが、そこまで山盛りの威圧感を感じなかった為目を開けるとそこに会った料理はなんと。


「あれ、普通の量ですね」


普通の量の料理だった。三人は安堵した。


「そりゃ普通の女の子と子供はあんなに食べられないことくらい承知しているよ」


その言葉にシャルドネが反応した。


「ちょっとお母さん!私も女の子なんだけど!」


「あんたはこの二人に比べれば可愛い女の皮を被った男みたいなものだよ!」


シャルドネの母親がそう返すとシャルドネはショックを受けて、道場の弟子たちから笑いが起こった。


「何か…温かい感じがする」


その光景を見たセリルがそう呟いた、まるで羨ましそうな眼をしながら。


そうやって場が温まったところで弟子たちが一斉に手元にあった酒の入ったジョッキを持ち始めた。勿論シャルドネや三人には配られていない。


「さて、シャルドネお嬢の親友と姉弟の二人の来客を祝して…乾杯!」


乾杯の音頭を取ったのは師範代ではなく弟子のひとりだった。それなりに実力がある風貌だった。


「「「「「乾杯!」」」」」


乾杯の音頭に呼応した弟子たちは直ぐ様ジョッキにある酒を一気飲みし、さらに酒を注ぎたした。そして山盛りの料理を喰らい、笑いながら食事を楽しんでいた。シャルドネもそれに混じりこの夕食会を楽しんでいた。


しかし三人は弟子たちやシャルドネの雰囲気に付いていけず、ただその光景を見ていることしか出来なかった。


「ふふっ、客人が来るといつもこんな感じなの。まぁ客人が来る以外で浴びるほど酒が飲める機会がないから気分が高揚しているだけなのかもしれないけどね」


するとそれを見かけたシャルドネの母親が近づいて話しかけてきた。


「そうなんですか、えっと…」


「あ、申し遅れたね、私はクイル。シャルドネの母親だよ」


「あ、どうも。この料理は全てクイルさんが?」


「ええ、そうよ。さあ、召し上がれ」


三人はクイルの作った料理を口の中にいれた。


「あ、おいしい!」


「おいしいわね…私の母とは大違い」


ルナとセリルは賞賛の言葉を送った。


「まぁ私は毎日大量に作っているからね」


「…」


しかしシンだけはどこか腑に落ちない点があるようだ。


「どうしたのココロ?」


「いや、別に…」


シンがそれを心の奥に仕舞おうとした。しかしそれを止めたのはクイルだった。


「ココロちゃん、思った事があったらはっきり言って」


そう言われてシンの心に火が付いたのか思っていることを全て話し始めた。


「では言いますね。まず全体的に塩気が濃いですね。毎日体を動かす屈強な男だらけですから仕方のないことですがもう少し塩分を少なめにした方が健康的には良いですし素材の味を引き出せます。比率的に揚げ物が多いのは胃に悪いです。それに種類も少ないのでもっと料理の種類を多くした方が一品一品飽きずに夕食を楽しめます。野菜の盛り合わせ、野菜炒めなどの野菜を主体とした料理もあった方がいいでしょう」


シンは料理にこだわりを持っている。しかし相手の顔を立てるためか殆どの場合自分の意見は言わないで心の奥に仕舞ってしまう。しかしここでは久々に仕舞うことなく自分の意見を言える。そのためか少しヒートアップしていた。


「それでそれで!」


クイルはそれを興味津々に聞く。おそらくこの男所帯だから料理の話など全くできなかったのためだろう。シンも女装している男なのだが。


「あなたのお姉さん、料理できるのね…」


「はい…」


男なのになぜ…、と言った考えがセリルの頭を過ぎった。


それからシンはシャルドネの母親に料理の改善方法や意見交換などを夕食そっちのけで行った。













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