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第七十一話《亡命》









その…現実的な話ではないと思いますが…いえ、先程の話を聞いた後だと感覚が麻痺して別段驚ける話ではないかもしれません。


私は…暗殺されそうになってここに逃亡してきたんです。あ、質問は最後までしないで下さい。話の腰を折られるのはあまり好きではないので…。


それで、なんでそんなことになったのかと言うと…実は私の父親、ゲリア・ブィントお父様が病気で余命数年と診断されました。…これはブィント軍国の最重要国家機密なのでくれぐれも内密に。


それで、次の王位継承権を巡って、私たち兄弟姉妹で暗殺合戦が始まりました。もう何人も暗殺で死にました。私は王位など欲しくないのに皆私を狙い始めました。末っ子で一番若いから王位になる可能性がある、と思ってるそうです。


王になる気がないのに狙われる日々に嫌気がさした頃、私の側近であり、私の教育係であったシミーさんがリアス聖国への亡命を提案しました。リアス聖国は治安が良く、兄姉も干渉しにくく、さらに亡命すれば王位を継ぐ気がない意思を見せることが出来て、暗殺の標的にならないだろうという事でした。


今日明日殺されるかもしれない私にはもうその選択肢しか選ぶことが出来ませんでした。だから私はシミーさんが選んだ護衛の兵士を複数連れて、リアス聖国に密入国しました。密入国した理由は、正式に国境を通ろうとすれば手続きが必要でその間に暗殺される可能性があったからです。


あとはその男に聞いてください…。もう思い出したくもありません。










―――――――――――――――――――――――――――――――――――――















セリルの話を聞き終わったネビューとボイルは揃って絶句した。ブィント軍国の王族はそこまでドロドロとしていたのかと。


「シン君はこの話を…聞いていたのかい?」


シンはため息を吐いて答えた。


「殆どは、ですね。俺が聞いたときは教育係の名前、そしてゲリア・ブィントが病気だってことは話しませんでした。ま、こちらが身を切る思いであの話を話した価値があったってことですよ」


国王が余命数年、最重要機密であることには間違いない。セリルが最初喋らなかったのも分かる。


「それで、その後は一体なにが…」


「この国の国境を越えて間もなく、ある一人の兵士が謎の魔法を受けて首の血管を切られた。直ぐに様子を見に行った兵士が帰ってこず、何が起こっているのか分からない恐怖心に怯える中、兵士全員が一気にその魔法を受けて殺された。自分を殺しに来た暗殺者だと察したこいつは全速力で逃げて、俺とネビューに出会って今に至る、ってところですね。これが一人の兵士の検死結果と写真です。他にも何人かいましたが全て同じ殺し方でした」


シンはボイルに検死結果をまとめた紙と先程念写機で撮って現像した写真をボイルに渡した。それらを見たボイルの顔はもっと険しくなった。


「…やはりやり手の暗殺者か」


ボイルが検死結果を見ている中シンはセリルの方へ近づいた。


「それじゃあセリル、いくつか質問をするぞ」


「構いません…話せることは話します」


セリルは力なくそう答えた。


「ここまでの道案内していた兵士と様子を見に行った兵士は同一人物か?」


「はい?なんでそんな事…」


セリルは質問の意味が分からなかった。確かに先程シンが言った殺人の経緯は全てにおいて合っていたがそんなことを質問する意味が分からなかった。


「重要事項だ」


「ええ、その通りです…」


セリルがそう答えるとシンはやっぱりか、といった顔になった。


「あー、やっぱりそうか。それじゃあもう一つ、その教育係のシミーとやらはここまで付いてこなかったのか?」


「いえ、私が亡命するまで時間稼ぎをすると言って国に残ってます。亡命出来た後に来てくれるみたいですが…」


「ああ…」


シンはそれを聞いて、頭の中で描いていた最悪の予感が確信へと変わった。


「シン、そう言えば亡命亡命って言ってるが王族の亡命って普通に可能なのか?」


ここで沈黙していたネビューがシンに素朴な質問をしてきた。


「可能だ、四国合同で締結された亡命条約ってのがあってだな、王族の亡命は普通に可能なんだ。まぁそんなもの王位継承争いの時しか使わないがな」


ネビューが納得した表情を見せると、ボイルが検死結果の紙などを机の上に置いた。そして険しい顔のままシンに声をかけた。


「シン君」


「なんですかボイルさん」


「さっき質問の答えを聞いた後、何か悪い確信を得たような表情になったじゃないか」


「はい」


シンは隠す必要がないのか淡々と答えた。


「聞かせてくれ、どんな確信を得たんだ?」


するとシンは少し考え込んで、こう答えた。


「…正直これは最悪の事態の話です。ですが起きる可能性はかなり高いです。俺たちが一歩間違えただけで終わりです」


「ど、どうなるんだ…?」


ネビューが戦々恐々の表情で聞いていた。ボイルも王族連続殺人事件並みの出来事なのだろうと腹をくくっていた。セリルはここに来たことで一体どんなことが起きるのだろうと心配になり始めた。


そして、シンが小声でこう言った。


「…最悪、リアス聖国が消滅します」


シンの言葉は、その場にいた三人に途轍もない衝撃を与えた。












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