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第六話《入学》

ようやく学園編に入れたぜ……。












「すごいな……デカ過ぎだろここ……」


シンはシェント学園の正門の前で学園の大きさに呆然としていた。それもそのはず、シェント学園がシンの予想以上に大きかったからだ。正門の前なのにレンガでできた校舎はバッキンガム宮殿みたいな派手さはないが大きさだけはそれに相当するだろうと身をもって感じられ、校内の敷地もかなり広いことが正門の前からでも分かるのだ。少なくともシンが約30年間生きてきた記憶の中でダントツに大きい建物なんだと直ぐに分かった。そしてこんなドデカイ建物が本当に学校なのかと疑問に思ってしまった。


「おっ、どうしたんだ?そんなところで立ち止まって」


今日ここに来た他の新入生は正門で校舎を見ながら立ち止まっているシンを不気味な奴だ と蔑む目で見ながら通り過ぎて行く中、1人の青年がシンに声をかけた。


「あ、すみません。邪魔でしたか?」


「いや、別に邪魔だったって訳じゃないが……何で敬語なんだ?同い年なのに」


「すみませ……すまん、癖なんだ」


シンは余程の事がない限り初対面の人には敬語を使う事にしている、と言うかそれが癖になってる。なのでこんな風に同い年の人でも反射的に敬語を使ってしまうのだ。ちなみにボイルの時は子供らしくするために


「ふ〜ん、で、何でここに立ち止まってたんだ?」


「いや、校舎が予想以上に大きかったから呆然としちまったんだ」


「成る程……お前地方受験者なのか。それなら仕方ないな、実は俺も初めてここの校舎を見た時ビックリして勉強した事全部忘れちまったからな!」


青年は偉そうにそう言った。性格は軽そうだった。


「俺はネビューって言うんだよろしくな!」


「俺の名前はシンだ。これからよろしくなネビュー」


ネビューが右手を出し、シンも右手を出して二人は握手をした。シンにとってこの世界初めての友達が出来た瞬間だった。しかしそれを遮るように1人の金髪少女が二人に側面に立ち止まってこう言った。


「そんなところで立ち止まらないで下さらない?はっきり言って邪魔ですわ」


「あ、すみません」


その少女の言葉には少し威圧感があるが、容姿は薔薇のような印象をもたせ、どこかのいいところのお嬢様だとそういうのに疎いシンでも感じ取れるくらい気品に溢れていた。取り敢えずシンとネビューは握手を止めて少女のために道を開けた。少女はしかめっ面で二人の前を通り過ぎた。通り過ぎる時、腰まで長い髪からシンがこれまで嗅いだことのないいい匂いがした。


「なんなんだあいつ……別に俺達道を塞いでるって訳じゃなかったのによ……」


「それもそうだがあの子の言ってる事も正しいと思うぞ」


ネビューは歩いていく少女の背中を眉を顰めて見た。ネビューの言うとおりシン達は正門を完全に塞ぐところには立ってなかった。そもそもこの正門はシン達二人が両腕を目一杯広げて塞いでもまだ半分も塞げないくらいデカイのだ。


「ともかく早く入るぞ、急がないと入学式に間に合わなくなるかもしれなくなるぞ。入学初日から遅刻はまずい」


シンはふと周りを見るとさっきまであれだけの人がいたのにいつの間にか自分達以外の人がいない事に気づいた。


「そうだな、俺校舎の中全然分からないから案内頼むな」


二人は早歩きでシェント学園に足を踏み入れた。それから二人は何とか受付にギリギリ間に合った。


















_________________________________________________________________
















「ただいまからシェント学園入学式を執り行います!」


いかにも堅苦しそうな眼鏡に坊主姿の教師がそう言った。


シンの隣にいる黒髪で短髪の明るそうな雰囲気女の子は少し落ち着きがない様子でソワソワしていた。周りに他にも緊張している様に見える新入生がたくさんいた。それもそのはず、名声高いシェント学園の学生になれるのだから、ここで努力すれば一生の幸福が、将来が約束されるのだから。浮かれたり緊張したりするのが普通なのだ。


だかシンは緊張せず落ち着いていた。何故ならシンにとってここは目標のための踏み台でしかないからだ。確かにここは魅力的な学校だがシンには警備隊という目標しか見えてない。ここがゴールじゃない、スタートなんだと思っているからだ。他にも数は少ないがシンのように肝が据わっている新入生がいた。その新入生の中には正門でシン達に絡んできた金髪


「学園長式辞」


坊主の教師がそう言うとあの神様を連想させるような白く長い髭を生やしたローブ姿の老人が壇上に上がった。その姿はシンが今まで思い描いていた魔法使いの姿そのものだった。


「え~ではまず新入生の皆さん、入学おめでとう。心から歓迎します」


シンはその各園長の話を一言も漏らさないように聞き始めた。何故ならシンはこの世界の常識について何も知らないからその話に中に重要な何かがあるのではないかと思っているからだ。


だがシンは知らない。この学園長の話に中身なんてほとんどないことを、無駄に長いことを、そしてその話が式のほとんどを占めており学園長が何らかの式の時に話をする時には生徒だけではなく教師すら話を聞かないことを。それがこの学園の暗黙の了解となっていることを。

















_________________________________________________________________














「くそ……二度と真面目に聞くもんか……」


シンは入学式の後に案内された自分のクラスの教室で他の新入生達は楽しく談笑している中、自分の机で突っ伏していた。シンはあれから小一時間あの学園長の中身のない話を延々と集中して聞いた。実際に一言一句聞き漏らさずに聞いたが、まったく無駄な努力だったと後悔している。


「あの、大丈夫ですか?」


そんな脱力感溢れるシンに先ほどの入学式でシンの隣に座っていた少女がシンを心配して話しかけてきた。


「ああ、大丈夫だよ」


「そうですか♪あなたは先程私の隣にいた人ですよね、あの学園長の長い話をずっと集中して聞いていた」


「ああ、そうだよ。まったく無駄な努力だったけどね」


「ふふっ、真面目な人なんですね♪あ、自己紹介が遅れましたね、私はリン・ベルスです。これからよろしくお願いしますね♪」


「俺はシン・ジャックルスだ。よろしく」


シンとリンはそんな会話をして軽く握手をした。こうしてシンにこの世界二人目の友達ができた。シンはネビューから指摘を受けて取り敢えず同級生には敬語は止めようと決めた。初対面の人に敬語を使わないことに少し違和感があったがいつもより話しやすかった。


「全員、直ちに自分の席に座れ!」


そんな厳しい怒鳴り声が教室に響き渡った。その声の主は先程入学式で式の進行をしていた眼鏡で坊主姿の教師だった。その声を聞いた新入生達は急いで自分の席に座った。シンがクラスを見渡すとネビューもあの金髪の少女もいた。


全員座ったのを確認した坊主の教師は教壇に立ちこう言い放った。


「私の名前はゲイス・ブーンだ!君たちは厳しい試験を乗り越えて今日から晴れてこシェント学園の生徒になったわけだが……ここで満足されては困る!君たちは選ばれた存在、選ばれた優秀な人間なのだ!君たちはここで優秀な教師の元優秀な魔法を、学問を学び、ゆくゆくはリアス聖国を四国魔法決闘優勝に導くような魔法使いに、もしくは国の政治を動かす政治家になってもらいたい!ここがゴールではないのだ、ここがスタートなのだ!」


教師の演説が終わると殆どの生徒は教師に拍手をしたがシンは心の中で舌打ちをした。


シンはこの教師みたいなエリート至上主義は嫌いだ。強い者が勝ち、弱い者が負ける。いわゆる弱肉強食の思考が大の嫌いだ。思考は個人の自由だと重々承知しているがこんな考えだけは絶対に好きにはなれないと思っている。


そして生徒たちによる拍手が鳴り終わるとゲイルはこう言って締めくくった。


「これから入寮やら教科書購入などいろいろと忙しくなるためまだ言いたいことは山ほどあるがここは終わりにしておこう。明日から始まる授業に向けて各自で教科書を見るなりして予習をしておけ!いいな!そしてシン・ジャックルス、あとで学園長室に来るようにとのお達しだ、急いで行けよ。以上だ!」


そう言ってゲイルは教室から出ていった。シンはなぜ自分が入学初日で学園長室に呼ばれるのか理由が分からなかった。


















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