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第六十三話《雷半円》











「…うわー、すごいですこれ…」


メルンはシンに言われた通り倉庫にあった書物を読んでいた。驚いたのはその内容だった。見たことのない理論、分かりやすい解説、独創的な魔法、長年魔法を研究してきた学者でも喉から手が出るほど欲するような内容だった。そこまで魔法を極めていないメルンでもその凄さは直ぐに分かった。


「でも…こんな凄い内容の魔導書がこんなにあるとなると…本当シンさんの正体が謎になってきます…」


メルンは周りにある本棚に置いてある大量の魔導書を見てそう呟いた。その数は500冊は下らなかった。全てシンの書いた魔導書だ。


「それに…何やら怪しい魔導書もありますし…」


メルンは一番奥にあった本棚から本を取り出した。表紙には『魔法を用いて命を生みだす(失敗)』と書いてあった。内容は難しすぎてメルンには一生かかっても理解できるものではなかった。だが物凄く怪しいこと魔導書だとは理解できた。その棚には他にも『魔法で肉体の限界を超えるためには』だとか『魔法を用いて人間の肉体を作る(失敗)』だとかいかにも不気味そうな魔導書ばかりであった。


「おーい、メルンちょっと来い」


「ひゃい!?」


そんな時タイミングがいいのか悪いのかシンが倉庫の中に入ってきた。呼ばれたメルンは驚いて変な返事をしてしまった。


「ん?どうした」


「い、いえ、なんでもありません!」


シンに怪しまれたがメルンは持っていた魔導書を直ぐに元の場所に戻して誤魔化した。


「そうか、ならいい。お前に教える魔法を見せるから早く来い」


「はい、分かりました…あれ?ネビューさんの魔法を教えるのが先だと言ってましたがもう終わったんですか?」


するとシンはあきれた表情になった。


「いや、方式を覚えるのに相当な時間がかかりそうだから予定を繰り上げて先にメルンに魔法を教えたいいかなと思ったまでだ」


「はぁ…そうですか」


一体どんな方式を覚えさせようとしたのか、そして自分にはどれだけ難しいのが待っているのかメルンは少し不安になった。


「それで、どうだったここにある魔導書は」


「はい!とても参考になるものばかりです!」


「そうか、長期休暇中はいつでも見に来てもいいぞ」


シンは少し照れくさそうにそう言った。自分の書いた魔導書が褒められて嬉しいのだろう。


「良いんですか!?ありがとうございます!」


シンとメルンは倉庫から出て練習場に戻った。そこでメルンが目にしたのはブツブツと廃人のように分厚い魔導書を読んでいるネビューの姿だった。


「ネビューさん…」


「見るな、無視するのが一番だ」


シンは全くネビューを気にする様子はない。


「あの、どうしてネビューさんや私に魔法を教える気になったんですか?」


するとシンは少し悩んでこう答えた。


「メルンにはこの前の礼だ。ネビューは…まぁあいつは力を求めているように見えたから力を手に入れるにはどれほどの努力が必要なのか分からせるためかな」


その結果があのネビュー、メルンの不安は大きくなるばかりだった。


「…それで私にはどのような魔法を教えてくれるんですか?」


「ああ、一つずつ教えていくけど最初はどの魔法が良いんだ?」


「あ、それじゃあ防御系の魔法からでお願いします」


メルンは取り敢えず自信がなかった防御系の魔法を選んだ。


「分かった、ならまず手本を見せよう。メルン、そこにある石を思いっきり俺に投げつけてくれ」


いきなり攻撃して来いと言われてメルンは戸惑った。


「えっ、いいんですか!?」


「いや、ただ魔法を使うだけじゃあ分かりにくいだろ」


「分かりました…えいっ!」


メルンはシンの言われた通り足元にあった石をシンに向けて思いっきり投げた。


石がシンの頭に向かう中シンは地面に手を添えた。すると電気がシンの周りを覆い半円を作った。石は電気の半円に阻まれた。そして電気は収まりシンは手に付いた砂を払った。


「これが『雷半円』、全方面からの攻撃から身を守れる魔法だ。ただ威力の強い魔法は防御しきれないがな」


メルンはただただ驚いた。あんな魔法を見たことがないし、こんな魔法を覚えるのかという不安も湧いてきた。


「凄いです、でもそんな魔法私なんかが覚えられるでしょうか…」


「魔法の基礎さえ覚えていれば覚えるのは難しくないさ」


そう言ってシンは数枚の方式が書かれた紙をメルンに渡した。これが半円シリーズを覚えるために必要な方式のようだ。


「これだけですか?ネビューさんのはあんなに厚いのに…」


「さっきも言った通りあいつには強大な力をつけるにはどれだけ努力が必要か分からせるために俺の開発した魔法の中で最大級の魔法を教えているんだ。あれでも簡略化しているんだぞ」


あれでも簡略化しているという事は簡略化していない場合はどれだけの量だったのだろうと恐怖した。


「ネビューさん…お気の毒です」


「ほら、メルンも人の心配なんかしてないでさっさと覚える!」


「は、はい!」


メルンは慌てて渡された紙に書いてある方式を覚え始めた。















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