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第五十一話《決勝戦その五 違い》







はっきり言って二人は対照的な闘い方だ。シンは持ち前の無尽蔵の魔力とそれを使うにふさわしい頭脳であらゆる魔法を使い臨機応変な闘い方、一方のシャルドネは天性の身体能力と力を与えることだけに特化した魔法を用いて力で全てを叩き潰す闘い方だ。両方とも他の凡人にはまねできない闘い方だ。


「言っとくがここからは手加減出来ないからな」


シンが右腕を掲げるとシンの右腕の背後にシンの腕より巨大な電気で出来た太く巨大な腕が出現した。シンの右腕とお無い動きをするその腕の名は『雷神の腕』、神の名にふさわしい破壊力と風貌を持つ魔法だ。


「また見たことのない魔法ね、でもいいの?土属性の魔法を纏ってる私にそれは通用しないと思うけど…」


「その余裕も直ぐに無くなる!」


シンは雷神の腕で地面を思いっきり殴った。するとこれまでの闘いでのダメージも相まって闘技場の地面は大きな揺れと共に崩れ始めた。


「おいおい!これじゃあこの闘技場が崩れるんじゃ…」


「…心配ない、この闘技場の観客席ははこの程度では崩れないようになっている。闘技場内の地面は別みたいだがな」


ネビューがうろたえるのをタイソンが落ち着かせている頃、シャルドネは流石に崩れる地面にはいたくないと思い空中へ移動した。それがシンの狙いだ。先にシャルドネが移動しそうな場所へ移動し雷神の腕をシャルドネに叩き込んだ。


『なっ、闘技場内を崩壊させるほどの威力を持った一撃を何と何とシャルドネ選手!!喰らってしまい崩壊する地面に叩きつけられてしまったー!!』


シンの勝利を誰もが予想したその時、空中にいるシンの傍にあった雷神の腕が消えかかっているのが見えた。そして叩きつけられた場所からシャルドネが出てきた。まるで先程のダメージがないように。


「あなた、まさか土属性の魔法を纏ってる私に雷属性のあなたの攻撃が通るとでも思ってるの?」


魔法属性には相性がある、火属性が水属性に弱いように。今回土属性を持っているシャルドネにシンはかなり相性が悪い。雷の攻撃を当てたとしても土を纏っているためシャルドネの身体に肝心の雷が伝わらないからだ。衝撃は喰らうがそんなもので倒せるほど甘い相手ではない。


「今度はこちらから!」


シャルドネは近くにあったドデカイ瓦礫をシンに投げつけた。当然シンはそれを軽々と躱すがシャルドネはドデカイ瓦礫を影にしてシンに接近、そのまま殴ろうとする。だがシンはそれを予期していて難なくそれも躱す。続いてシャルドネはシンの右腕を狙って蹴りを喰らわせようとしたがシンはあっさりと躱した。


「地力の差が出始めましたわね。あの男が本気を出せばこうなることは目に見えてましたわ」


「そうとも限りません、反撃に転じない所を見るにシン君でも攻撃を躱すので精一杯だと思えます」


ユーラインとボイルが戦力分析を行っている最中でもシャルドネの攻撃の嵐は続く。しかしシンはそれを躱し続けた。


「なっ、ぜっ、あっ、たっ、らっ、なっ、いっ、のっ!」


簡単なことだ、シンはもうシャルドネの攻撃パターンを全て読み切ったからである。シャルドネは先程からただ殴る、ただ蹴るという事しかやってこない、武術の「ぶ」の字もない世界では当たり前の攻撃なのだが。魔法を用いて力や速度の底上げをしているとしてもそれは同じ、動作も読みやすいし躱しやすい。それでも当たれがデカいダメージを喰らうし、躱すので精一杯だがこれでシンはシャルドネの攻撃に当たることはない。


ユーラインの言うとおりこれが地力の差である。天賦の才能に頼りただ相手を叩き潰すことしか考えずにほどほどに鍛えてきた者と天賦の才能に甘えずただただ強くなるために努力を惜しまずあらゆる相手にも鍛えてきた者との違い。才能は同じ、だがその才能を使うか使われるかの違い。


シャルドネもそれをわかっていた。だから、だから今の自分が無性に情けなく感じた。目の前にいるシンは自分、才能に甘えず努力し続けた自分だと感じた。勝利が遠のく、このままでは確実に負ける。そんな考えが頭の中をよぎる。


だがここでシャルドネの脳裏に一つの勝機が思いついた。それはシンの出血量だ。シンは頭からと左腕からかなり血が流れている。このまま時間を稼いでシンが血を流していけば貧血で倒れるかもしくは動きが鈍り攻撃を当てられる。泥臭い闘い方だが今のシャルドネにとってはそれが唯一の勝利への道。


それが見えた瞬間、シャルドネは一瞬、ほんの一瞬だけ攻撃の手を緩めてしまった。一番緩めてはいけない所で、その勝利への道はシンが貧血を起こすまで攻撃の手を緩めないことが前提であるのに、緩めてしまったのだ。それをシンは見逃さなかった。


「隙ありだ」


シンは掌底をシャルドネの目の前に置いた。するとシャルドネの周りが凍り始めた。しかしシャルドネが凍ることはなく、周りだけが凍っていった。一体何が起こっているのか観客にはわからなかったがシャルドネだけはその理由が分かった。


「魔法を…凍らせた!?」


「魔法ってのは本当に不思議だ」


シャルドネの言うとおり凍ったのはシャルドネの魔法だ。『魔封凍結』、文字通り魔法を凍らせて封じる魔法だ。そしてシャルドネの周りの氷が全て砕け散った。これでシャルドネを守る魔法はなくなった。シャルドネに体勢も立て直す余裕はなくただ魔法を凍らされたことに呆然とするだけだった。


「奥が深すぎて物凄く嫌いなのに興味が全く尽きないぜ!」


シンの渾身の一撃がシャルドネを襲う。













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