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第四十五話《決勝戦直前》

シンは闘技場に用意された控室でシャルドネの準決勝を見ていた。シンは先に決勝進出を決めている。たった今シャルドネが対戦相手の腹に一発拳を当てて勝負が決した所だ。


『おおっと、やはり昨年優勝のシャルドネは強い!!またしてもあっさりと対戦相手を倒してしまった!!』


「…予想通りっていうか分かりやすいっていうか」


実況はシャルドネが最強だと言っているかのような熱のこもった実況をしているがシンは直ぐにシャルドネの弱点に気が付いた。


先程の準決勝、結末だけ見るとシャルドネの圧勝に聞こえるが実は違う。先ず闘いが始まった直後に対戦相手は思いっきりドデカイ魔法をぶっ放した。対戦相手は一年生、取り敢えずそうしとけば魔法戦士は抑えられるだろうと安易な考えをしたのだろう。だがそんな目的も浅はかで余裕で躱せるその魔法をシャルドネはワザと受けたのだ(・・・・・・・・)。そしてほぼ無傷で出てきてそのまま対戦相手の近くまで一瞬で近づき腹パンをしたのだ。


他の闘いもそう、対戦相手の本気の一撃をワザと受けてから倒すのだ。ルナがシャルドネを自信過剰で人を見下しているという印象も嘘ではなかった。となるとシャルドネを倒すのは至極簡単になる、最初の一撃で倒せばいいのだ。シンなら簡単にできることだ。他にも一瞬で背後に回りこんで雷掌を当てて気絶させてもいい。


だがただ倒すだけではダメなのだ。そうやって倒したところでシャルドネは絶対に改心しない。ルナにお願いされた以上改心まできっちりとしないといけない。だがそうなると真っ向勝負で打ち負かすしか方法がない。だが先程の試合を見てシンはこう確信した。


純粋な格闘勝負、肉弾戦では勝てない。


そもそもシンは格闘術を独学で鍛えているに過ぎない。だがシャルドネは明らかにちゃんとした指導も受けている。しかも闘いを見て超が付いてもおかしくない天性の才能を持っているとも思えた。


シンに与えられた才能はあくまで魔法だけ、身体能力は最初普通程度しかなかった。だがそこから一生懸命鍛えて強くしただけだ。そして強力な身体強化魔法で補うだけ、それで誤魔化している。だからと言ってシンが肉弾戦に弱いという事ではない、ただ相手が悪いというだけだ。それに魔法を使えばシャルドネなんて楽勝に打ち負かせる。だがベルセーズの件もあり魔法を使えない。


正直シンには勝てる確証がない。勿論勝てるのだが確実にではない。確率は五分五分だとシンは予想した。完璧主義のシンにとってここまで不安になる確率はない。


「ああ、どうしよう…」


せめて魔法さえ使えれば問題はないのだが、ベルセーズさえ来なければ確実に勝てるのだが…。そんなことを思いながらシンは闘技場に向かった。
















____________________________________________________________













『さーてこの烈火祭の最終競技、魔法決闘もこの決勝戦で最後となりました!!しかもその対戦カードは見逃せないものとなりました!!去年の魔法決闘優勝者、シャルドネ・ライアー!!二年連続で優勝なるか!!そして挑戦者は奇しくもシャルドネ選手と同じ魔法戦士タイプの一年生!!シン・ジャックルスだ!!しかも両方圧倒的な強さで勝ってきている!!これは見ごたえのある試合になること間違いない!!』


実況はそう高らかに語っているがシンは不安で仕方なかった。絶対に勝たないといけないのに絶対に勝てる手が使えない、それなのに不安にならない者がいるだろうか。


「さて、君は滅茶苦茶強いらしいね。君なら僕を満足させてくれるよね?」


シンはそんな期待されても困ると言いたい顔になった。取り敢えず魔法なし身体強化魔法だけの真っ向勝負で勝てる策は何個かあるがどれも確実とは言い難い。相手の方が真っ向勝負で分があるため最終的に押し切られて負ける可能性がある。一つだけ確実に勝てる方法がある。シャルドネがこれまでの闘いのように最初の一撃をワザと受ける時にそのまま反撃させる暇を与えないまま押し切るという方法なのだがどうにもそうしてくれる雰囲気ではない。


「君は強いみたいだから最初から本気で行かせてもらうよ!」


まぁ強いと思われてるみたいだからそうだと思ったよ!!とシンは心の中で叫んだ。シンがそんな感じに明らかに嫌そうな雰囲気を出していることに誰も気づかない。


「勝てよシン!勝てば優勝だぞー!」


「頑張ってくださいねシンさーん!」


シンの勝利を信じて応援しているネビュー達クラスメイトも、


「お願い…シン!」


友達の改心をシンに託したルナも、会場にいる殆どの者が気づかない。だが、ただ一人気づいている者がいた。


「あの男があんなに不安になっていることなんて見たことないですわ…」


ユーラインだった。父親のベルセーズが一向に来る気配がない、だが来ないという保証はない。来ないと分かってもシンに伝える手段がないからシンは来るかどうかわからず仕舞いで自由に魔法も使えない。


先程ユーラインもシャルドネの闘いを見ていたが明らかにベルセーズと闘った時のシンよりも速い、そして強い。そう感じた。魔法さえ使えればシンが勝てそうなのだがシンはベルセーズが余計なことをしようとしているせいで魔法は使えない。ユーラインはここまで父親の事を恨めしく思ったのは初めてだ。


ベルセーズが来るかどうか分からない。来たらそれでいいのだが、もしも来ないと分かっても伝える手段がない。国王が来ないと大声で伝えるという手段があるのだがそれだとこの闘技場にいる全ての人に伝わってしまいいらぬ誤解を受けてしまう。そんなことシンは必ず望んではいない。


「あれ、どうしたのですかユーライン様?」


そうやってユーラインが悩んでいたところにある一人の男がユーラインに近づいてきた。


「あら、あなたは確か……」


その男はユーラインが知っている顔だった。


『さて白熱の闘いになるであろうこの決勝戦!!一体どうなるか!!決勝戦、開始!!』


そして魔法決闘決勝戦の火ぶたが切って落とされた。



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