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第四十二話《開幕》












雲一つない晴天の中、烈火祭が開幕する。その開会式の時点で来賓の席にベルセーズは居なかった。その事を受けてシンとユーラインはこれからの作戦を再確認していた。


「いいか、俺は魔法決闘の決勝で何が何でも優勝する。その後俺は重傷の負ったふりをして閉会式に出ない。多分ベルセーズは閉会式の時に行動を起こすだろうからお前は俺と一緒に保健室に行ったふりをしてベルセーズをどこかで足止めして閉会式に出させない。そう言えば足止めの方法は考えてきたか?」


「勿論ですわ、お父様は私には秘密で事を起こそうとしています。ならば直前でその事を私が知ったことにして大激怒した私がお父様を説教する、と言う形ですが問題ないですわよね?」


「ああ、問題ない」


何故か偉そうにしているユーラインをシンはさらっと流した。


「と言うかあなたが魔法決闘で優勝する前提で話していますがそこは大丈夫…ですわね、あのお父様に手加減して勝つ程でしたね」


ユーラインの一言にシンがいきなり殺気立つ。そんなボロを出した覚えはないからだ。


「……気づいていたのか」


「本気で殺そうとする相手に極力殺さない方法で勝とうとしていたところを見てれば誰だってそう思いますよ。まぁお父様もそう考えているのだからこそあなたを認めたのだと思います」


するとシンは少し考えてこう呟いた。


「…本気が見たいか?」


「はい?」


明らかにおかしい呟きだったのでユーラインは聞き間違えたのかと思った。


「だから、俺の本気が見たいか?」


ユーラインの聞き間違いではなかった。


「えっ、そりゃ見たいと思いますけど、決勝の相手が死ぬ可能性が……」


ユーラインの心配は当たり前の事である。シンの実力は他の者をはるかに凌駕している。それなら真面にシンの本気の魔法を受ければ木端微塵になって死ぬかもしれない。


「腕輪がある状態なんだから大丈夫だ。それにわざと外せば問題ないだろ、一瞬しか出さないし」


「では…お願いしますわ。でもそれではお父様がまた…」


ユーラインの不安はベルセーズがシンの本気を見てさらにシンを気に入ってしまう可能性だった。


「だから大丈夫だ。お前が説教するときに俺が今度こんなことしようとしたなら『あれ』を食らわすぞって言ってたとか言えば流石にもう事を起こさないだろ」


だがシンはあっさり大丈夫だと言い切った。しかし国王が恐怖するほどの魔法とはなんだろうとユーラインは内心ウキウキしていた。


「そんなに絶大な威力の魔法を出すんですか?学園が破壊されるかもしれませんね…」


するとシンはユーラインに聞こえないほど小さい声で呟いた。


「…魔法じゃないがな」


「え?今何と…」


「別に、とにかく作戦通りにしてくれよ」


「分かりましたわ」


ユーラインはシンに一礼して何処かへ行った。一人になったところでシンは不気味な笑みを浮かべた。何故ならどうしようと困っていたベルセーズへの脅迫(シンは説得と思っている)問題があっという間に解決した。


しかしこれでシンの考えた真の策の成功が怪しくなってきた。だがそれほど問題はない。シンは早速烈火祭の競技を見にいくために走った。


そこでシンの見た光景の感想はただ一つ、派手すぎる。それだけだった。


今やっている競技は魔法妨害ありの徒競走、リンとユーラインの出場する競技だった。この競技はただ走るわけではない、魔法で相手を妨害しながらゴールを目指すのだ。勿論腕輪は付けている。


徒競走はシンプルに全速力で走る競技のはずだとシンは思っていた、だが目の前で行われている光景は魔法による爆発と光線の応酬だった。魔法が加わるだけでただの徒競走がここまで派手になるとはシンは想像だに出来なかった。


「おい、どこ行ってたんだよシン。もうすぐリンの出番だぜ」


ネビューがそう言うと直ぐにリンの出番がやってきた。そして審判係の先生が放った爆発魔法による号砲が上がった直後、リンは早くもで一番に躍り出た。だがこの競技において先手必勝の考えは命取りになる。シンも知識では知っていた、そして初めて実物を見てそれが確信に変わった。余程スピードか防御魔法に自身がなければ後ろからの的になるだけだからだ。リンはその中でスピードに対して自信があったのか全速力で走っていた。一緒に走っているのが同級生だったからなのかリンはそのままリードを保ち、後ろからの妨害をそのスピードで躱してゴールした。


「よっしゃ、一着だぜ!」


ネビューは喜んでいるがシンはそうは思わなかった。もしもっと強い相手だったら、相手が先輩だったら間違いなく的になってボロボロになっていただろう。


次はユーラインの出番だ。相手が同級生なので間違いなく勝てるだろうがシンは直感で何か嫌な予感がした。


そのシンの予感は的中した。号砲と共に走り出したユーラインの相手の4人が一斉にユーラインの放った『炎爆』に巻き込まれ吹き飛んだ。ほぼ全ての人が唖然とする中ユーラインは悠々と一着でゴールした。


ユーラインの『炎爆』の威力が強すぎてトラックが酷く抉れてしまい、抉れた部分を埋めて整備するまで競技が中止になった。ユーラインはやりすぎたと少し後悔していたが全然反省していなかった。
















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