第三十九話《簡略化》
パソコンが使えなくなる、時間が取れないと言う二重苦が重なりこんな文字数に……本当に申し訳ありません。
「シン、本当にあの時の俺はどうかしてた…だから俺に魔法遊戯で勝てる方法を教えてください…」
だがシンは土下座して懇願しているネビューを見ようともしなかった。まだあの時逃げた事を怒っているようだ。
そもそもなぜこのような状況になったかと言うと、ネビューが逃げて数日後にタイソンがネビューにネビューが逃げた後の事をポロっと話したからだ。それさえなければネビューは自分自身の力で何とかしようとして見事玉砕していたことだろう。
「頼む……」
シンに無視されてもネビューは土下座を辞めない。どんな事をしても、例え自分のプライドを全て捨ててでも魔法遊戯で勝ちたいと思うからこそできる事だろう。だがシンは無視する。ネビューがここまでしてもシンの心は変わらない。
「シンさん、そろそろネビューさんの事を許してもらえませんか?もう見ていて可哀想ですし……」
シンはリンの助言も受け入れようとしない。なぜここまで頑なにネビューの頼みを聞き入れようとしないのか。
「いい加減にしなさい!!一体何時まで拗ねているつもりなんですか!!」
それに見かねたユーラインがシンを怒鳴った。だがシンはピクリとも反応しない。
「あなたは一体何様のつもりなんですか!!そうやって土下座してまで頼んでいるネビューを無視するなんて非道にもほどがありますわ!!」
ユーラインにそこまで言われてシンはようやくその口を開いた。
「一度頼んでそれを拒んだ奴に教える事なんてない、つーか人に頼んでおいてそれを無下にした奴を許せる訳ねぇよ」
「頼む…今度は逃げないから……」
何時までも土下座を辞めないネビューにシンはこう質問した。
「その言葉、本当だな?」
「ああ、勿論だ!」
ネビューの威勢のいい返事を聞いたシンは何処から取り出したのか分からない程大量の本をネビューの目の前に積んだ。その数、30冊は下らないだろう。
「何ですかこれは……」
「俺がお前を勝たせるために読んだ本だ」
おそるおそるリンが質問するとシンは驚きの答えを言った。
「マジですか…」
「お前、そこまで俺の事を……」
ネビューはシンが自分の勝利のためにここまでやってくれた嬉しさとそれを知らずに逃げ出した申し訳なさで涙が出そうになった。
だが次のシンの一言でネビューの顔の血の気が引いた。
「これからお前には『簡略化』されてない魔法を覚えて貰う事になる。さっきの言葉に嘘がないなら逃げるなよ」
『簡略化』、それは魔法の出し方を説明しなければ説明出来ない。この世界の魔法はイメージして使うのだが、その基礎は魔弾であり、そこから色々な魔法の法則を全てイメージして使わないと魔法として成立せず、最悪死亡するような事故を起こしてしまう。威力や効果範囲の広い魔法ほどイメージは難解になっていく。だがそれでは記憶力のない者は強力な魔法が使えないので、その色々な法則を必要ない所だったり省ける所を目一杯減らして魔法を使うために必要なイメージを最低限なものにする、それが『簡略化』だ。
基本的に今現在使われている殆どの魔法は『簡略化』が完了しているため魔力と魔法を扱う才能があれば簡単に魔法を使える。だがその逆に『簡略化』されていない魔法はイメージの難しさ、と言うよりその魔法を使うためのイメージ全てを覚えられないため余程の天才でなければ使えない。
「おい、ちょっと待て」
ネビューが何か言おうとしたらシンがネビューを睨みつけてこう言い放った。
「もう逃げないと言ったよな?なら文句を言わず覚えろ」
「いやいやいやいや、なんでそんな事俺がしないといけないんだよ!俺に発言権はないのか⁉」
勿論ネビューは困惑した。それもそうだ、『簡略化』されていない魔法を無理矢理覚えさせられるのだから。しかしシンはそれを一蹴した。
「俺に頼んでおいてお前にそんなものあると思ってたのかよ。これが出来ないって言うんだったらもう俺がお前に教える事はない。大丈夫だ、できる限り簡単にしておいたから一晩気合を入れて頑張れば全部覚えられる」
シンはニッコリとした表情だったが、ネビューはそれに狂気を感じた。
「嫌だああああああああっ!!全部ってことは複数あるってことじゃねぇかああああああっ!!」
「さあ、お前がもう逃げないように俺の部屋でやるからな。勿論泊り込みだ」
「うわあああああああああっ!!」
ネビューは泣き叫びながらシンに引き摺られてシンの部屋に消えて行った。
それを見ていたリン、タイソン、ユーラインの三人は思わずネビュー、死んだなと心の中で思ったと言う。
その考えは的中し、翌日灰のごとく燃え尽きたネビューをシンが引き摺られて教室に連れて行く所が目撃された。