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第三十四話《新聞部》

ここからは第三章、烈火祭開催までの日常をお送りいたします。








合同宿泊訓練という新入生にとって大きな行事が終わった。するとシェント学園で恒例の現象が起きる。


「……なんだよこれ」


「あっ…あなたもなんですか……。私も同じですわ」


その現象にシンとユーラインが見事に巻き込まれていた。


「「なんでこんなに部活動の勧誘のチラシが来てるんだよ(来ているんですか)……」」


その現象とは新入生の部活動への勧誘解禁によって起きる即戦力となる生徒への勧誘合戦だ。


このシェント学園は主に四国魔法決闘の競技の部活が盛り上がりを見せている。というか国の政策でそういった部活動に多大な援助を与えているため盛んになっているのだ。しかもこの学園では烈火祭という自分の実力をアピールに絶好の機会がある。そこで優秀な成績を修めれば将来の四国魔法決闘の代表への道が開ける。四国魔法決闘に出場することは他とは比べ物にならないほどの名誉であるため死にもの狂いで部活動に励んでいる。


そうなると即戦力の新入生は邪魔ではないかと思う人もいるだろうがそれは違う。優秀な人材がいればそいつから自分に足りないものを学べるので、あくまで自分を高めるための踏み台として勧誘するのだ。


そんな訳で王族であるユーラインとそのユーラインを倒したシンは即戦力としてほぼ全ての部活動から勧誘が来ているのだ。


「チクショー!なんで俺には勧誘のチラシが来ないんだよ!」


「まぁまぁ落ち着いてくださいよネビューさん」


「…身の程を知るんだな」


それを見て勧誘が全く来なかったネビューは怒り狂い、リンはそれを宥め、タイソンは呆れてため息を吐いた。ネビューはユーラインを襲撃者から護ったということから滅茶苦茶勧誘が来ると思っていたらしいがまだ学園では広まっていないみたいなので全く勧誘されなかったのだ。


「くっそー、今に見てろよ!ぜってー部活で活躍して四国魔法決闘に出場して見返してやる!」


こんなに自信過剰になっているネビューも後にクラス全員からウザいと思われてシンが代表でフルボッコにすることをネビューはまだ知らない。


「で…二人ともどうするんですか?」


「どうするも何も俺は部活には入らないって決めてるし勧誘してきても意味ないんだよな」


「私も同じですわ」


リンが気になって二人に質問すると二人ともこう即答した。


シンは目立ちたくないのと四国魔法決闘に興味がないのとが合わさって部活をしないと決めている。ユーラインは王族の自分が一つの部活に入部すると必ず自分目当てで入部する生徒が急増すると思ってのことだ。


「ふふふ、そうですか。タイソンさんとネビューさんはどうですか?」


「俺はもうちょっと考えてみるぜ」


「…俺も同じだ」


ネビューとタイソンの答えを聞くとリンは自信満々にこう言った。


「そうですか、実は私はもう入る部活を決めているんです!」


だが4人はそれにノーリアクションで答えた。


「ど、どうして何の反応もないんですか!?」


「いや、だから何って感じなんだけど」


「別に早い者勝ちっていうわけでもないですから」


「…逆に早いと損をするという場合もある」


「そうだな、お前ってバカなんじゃないのか?」


「なっ……!」


4人からのごもっともなツッコミにリンは項垂れた。


「ネビューさんにバカと言われました……」


「そっちかよ!つーかそれって俺の事をバカって言いたいのか!?」


そうやってワイワイと話している光景を見てシンは前世での高校生活を思い出していた。ああ、確かこんな風にいつも盛り上がっていたっけ…と。


「…シン、昔を懐かしむ爺さんみたいな顔になってるぞ」


タイソンにそう言われてシンは慌てて懐かしむのを止めた。


「で、リンは何処に入部するんだ?」


何やらタイソンが疑惑の目でシンを見始めたのでシンはネビューと言い合いをしているリンにこう質問して話を戻した。


「あ、新聞部です!新聞部に入学しようと思います!」


それを聞いた4人がああ…だろうな、と一斉に思った。

















____________________________________________________________














シェント学園の部活動の中心は運動部、特に四国魔法決闘の競技であり文化部はそこまで盛んではない。国には四国魔法決闘のために部活動は全て四国魔法決闘の競技だけにしようとする動きもあった。だがそれでも毎年入部してくる新入生がいて、さらに反対意見も大量にあったためこの動きは最初からなかったことになった。


実はシェント学園の文化部はただ一つの部を除いた運動部よりも歴史があり、その中でも新聞部は文化部の中で一番の歴史を持つ。ちなみに創部者はクライマーク・ベルス、リンのご先祖だ。


「ごめんくださーい!入部志望の者ですが…」


リンが期待に胸を膨らませ新聞部の部室の扉を開けると、目の前に『リン君、入部おめでとう!!』と書かれた可動式黒板が現れた。


「な…」


あまりに唐突な事に唖然としていたリンの元に一人の男が黒板の裏から近づいてきた。


「ようこそリン君!私は新聞部部長をしているルッカス・ビソーだ。君の事は既に知っている。あのベルス家のお嬢様らしいじゃないか!必ずこの新聞部に入部してくると確信していたよ!」


「あ…そうなんですか」


リンは部長と名乗った男を一目見ただけでとんでもない取材力があると感じた。


「さてと、今新聞部には僕と君を含めて4人しか部員がいない。ハッキリ言って廃部の危機だ」


「ええっ!?」


部長が発したいきなりの衝撃発言にリンは驚きを隠せなかった。


「だから今は新入生を入部させるために学内新聞の目玉記事を探しているんだ。ほかの部員もそれを探しに出ている」


「……つまり私にも探せと?」


「察しが良くて助かる。それにお前はユーライン様とあのシン・ジャックルスと同じクラスだ」


その後の台詞を部長が言う前にリンは部長が何が言いたいか分かった。その部長の目が語っていたのだ、彼らのスクープを持って来いと。だがリンはシンには警戒されユーラインには釘を刺されている状態ということを部長は知らない。だがリンには迷いはなかった、せっかく入部しようとした新聞部が廃部の危機なのだ。


「わかりました!何時までに持ってくればいいですか?」


リンの元気良い返事を聞いた部長は心の中で大いに喜んだ。だが表には出さずしっかりとした表情をしてこう言った。


「来週の週末までにだ、そこから休日2日で学内新聞を完成させるから締切厳守でな。新入生が喰いつきそうなネタを頼むぞ!」


「はい!」


今、廃部を掛けた新聞部新入りリンの戦いが始まる!













「それで部長は何かいいネタをもっているんですか?」


「フフフ、それは週末に部員全員が集まった時に言おう」


目が泳いでいたので絶対にまだ無いんだなとリンは思った。















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