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第二十五話《脅し》















昼休憩も終わりカーレルン学園の生徒たちの決闘が始まった。シェント学園の生徒たちの決闘と比べると迫力に欠けるが限られた魔力でも工夫して戦うのでシンにとってはこちらの方が見応えのあると思えた。


殆どの生徒はその決闘を見ていたがリンだけは決闘場じゃない場所を見ていた。


シンが変わった経緯を是が非でも知りたいリンはシンの近くでずっとカーレルン学園の生徒たちがいる方向をじーっと見ていた。特に女子の方を見ていた。


「おいおい、何をそんなに必死で見ようとしてんだよ」


「そうですわ、そんなに見たい人がいるならそちらの方に行けばいいじゃありませんか」


「…一体何が目的なんだ」


リンの目的を知らないユーライン達からすると気味が悪くなるほどじーっと一人一人こちら側を見ている女子を見ていた。


リンはシンが変わるきっかけを作ったのはカーレルン学園の女子生徒の一人だと推理した。


先程の決闘で魔法を使わずに圧倒的な強さを見せたシンは今かなりの数の女子生徒からの注目を集めている。さらにシン自身は否定しているがシンの顔の良さはピカイチだ。その視線はミーハーなものが多い。リンはその中にある別の感情がある視線を送っている女子がシンを変えたきっかけを知っていると考えた。


シンもリンの目的をだいたい分かっていた。自分の変わった経緯を知りそれを皆に話して広めることだろう。リンは生粋の記者で知ったネタを広めずにはいられない性格だ。別に知られても困る話でもないがそれをペラペラと喋られるのは嫌だとシンは思い、釘を刺すことにした。


「おいリン」


シンが呼びかけるとリンは直ぐにシンの方を振り向いた。


「はい、なんでしょうかシンさん」


そしてシンは目一杯の威圧感を出してこう脅した。


「お前が何を探ろうと勝手だがそれをペチャクチャと広めようとするなら俺もそれなりの対応をさせてもらうぞ?」


リンは今のシンなら威圧感だけで動物を殺せるんじゃないかと思った。そしてリンの頭の中は命が危険だと警告を出していた。


シンの威圧感にリンだけではなくネビューとタイソンも、周りにいる殆どの生徒が恐怖で身体を小刻みに震わせた。


「……具体的にはどんな?」


リンが恐る恐る聞いてみるとシンは先程見せた柔らかい笑みとは違い悪の帝王と思えるくらいの邪悪な笑みを浮かべてこう言った。


「その口が何も言えなくなり、その耳が何も聞こえなくなり、その鼻が何も嗅げなくなり、その頭が何も考えられなくなるようにしてやるよ」


遠回しに殺すと宣言した。その言葉にリンと周りの生徒はシンの本当の恐ろしさを垣間見た気がした。


実はシン、このように脅している時は優しく警告する事を心掛けているのだが、このように威圧感や邪悪な笑みは無自覚で出てしまうのだ。本当は「お願いだからあまり周りに言いふらさないでほしいな」と爽やかに警告したいのだがこうなってしまうのだ。これは前世からの課題であったが全く改善できずにシンは困っているのだ。


だがこれでリンも自分の事に探りを入れなくなるだろうと思った。しかしこの時のシンはリンの記者魂を見誤っていた。自分のよく知る記者もこうやって警告されればされるほど、危険を感じるほどに何が大きなスクープがあるとより一層探りをいれてくる事を思い出せずにいた。


それにリンはもう見つけていた。シンに皆とは違うような視線を送っていた女子を。






















____________________________________________________________














「この決闘で全ての生徒が決闘をしたな。これで模擬魔法決闘を終了する!!」


カーレルン学園の生徒の決闘も終わり、模擬魔法決闘が終わった。これからの予定は夕食を食べた後、また今回の決闘で気になった相手との交流の時間となっている。


シンは今回の決闘で圧倒的な強さを見せ、カーレルン学園の生徒たちはシンを後の四国魔法決闘の選手と感じた。つまりシンもユーラインと同じくお近づきになりたいと大勢の生徒がゴマを擦りにくることはシンも十分に分かっていた。それどころかこれから宿舎に向かう道でもそうなることは明白だった。


それならどうするか、シンの答えはもう出ていた。


「あれ?シンさんは?」


「さっきまでここにいたよな?」


「…消えたな、先に帰ってると書かれたメモを残して」


もみくちゃにされる前に逃走することだ。シンは宿舎に走りながら勝利を確信した。これなら道で芸能界のスターみたいに言い寄られることもない。夕食はもう席が決まっているし、その後の交流の時間はまた昨夜の場所で過ごせばいい。完璧な計算だった。


「ちょっと、少し速いですわ!もっと私のペースを考えて下さい!」


「なんでお前が付いて来るんだよ!」


ユーラインが一緒に逃走していること以外は。ユーラインはシンのハイペースな走りに身体強化魔法を使って何とか付いて行っている。


「あなたと同じ理由ですわ!私にだって…ハァ…限界というものが…ハァ…だから速いですわよ!どうして身体強化魔法なしでそんなに速く走れるんですか⁉」


だが身体強化魔法を使っているとはいえ体力は変わらない。あっという間にユーラインはシンのハイペースな走りに少しずつ付いて行けなくなっていった。


「逆に聞きたいが何故身体強化魔法を使っているのにそんなに遅いんだ?」


「あなたみたいにお父様の魔法を躱せるような人と一緒にしないで下さい!」


そんな時シンはある事に気づいて足を止めた。


「どうしたんですか?早く宿舎に戻らないと大変なことに…」


ユーラインもいきなり止まったシンが気になり足を止めた。そしてシンはユーラインの方を振り返りこう質問した。


「なぁ、ちょっと思ったんだが……お前って誰かに先に帰ることを伝えたか?」


ユーラインは首を傾げた。何故そんなことを今ここで聞くのかと。


「そんなことしてませんけど……それが何か?」


「いやお前ってさ、表向きは国王を除いてただ一人の王族だろ?もし唐突に居なくなったりしたら猛烈に心配されるんじゃないかな、誘拐とか思われないかな……と思ってな」


その場で二人は少し考えた。そして頭のいい二人の頭脳は一瞬の内に答えを導き出した。そして二人の顔から汗が止まらなく出てきた。まずい、これは非常にまずいことになってると。


実際に現在決闘場では、


「ユーラインさまああああああ!!何処ですかああああああ!!」


「まずいことになりました!!これは国家的一大事です!!」


「楽しそうに笑みを作るな!!マジで大変なことになってんだぞ!!」


「…ネビューにしては真面目なことを言う」


「ひでぇ!!俺ってそんなに不真面目か⁉」


「喋ってないでさっさと探せ!!くそ!!王宮に緊急連絡を!!ユーライン様が攫われたかもしれん!!王宮に捜索隊の派遣を要請しろ!!」


その場にいた全ての人がユーラインを捜索していた。全員必死こいて探していた。


「……戻れ、まだ間に合う」


「一緒に戻りましょう!一人では嫌ですわ!」


「ふざけるな!!俺を誘拐犯モドキにさせたいのか⁉俺は関係ないだろ!!」


「一緒に逃走したんですから関係大有りですわ!!それに一緒に戻らないのでしたら本当に誘拐犯にしますわよ!!」


事の重大さに気づいた二人はそれはもう慌てた。実際に国家的一大事の火中にいた二人だからこれからの展開が安易に予測できるから余計に慌てた。そしてシンとユーラインはユーラインが一人で戻るか二人で戻るか不毛な争いを始めた。


結局二人で決闘場に戻り、宿舎に戻ろうとしたところをシンに助けてもらった事にした。疑われはしたが最悪の状況からは抜け出せた。だがシンはその後カーレルン学園の生徒たちにもみくちゃにされ、その後王宮から派遣された捜索隊に何故かユーラインと一緒に謝罪する羽目になった。















夏休み突入で執筆時間増えるぞヒャッハー!!と思ってたが何故か忙しい日常に涙目になった。

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