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第十三話《放魔石》












「さて、ここなら誰も来ないだろうし盗み聞きされる事もないでしょう」


「そうだな」


「……」


シンとボイル、そしてカレイは城下町の外れにある公園の奥にある林の中にいた。ここは魔法が使えない者が人々の偏見と苦しい労働に耐えかねて首吊り自殺を行う場所として有名なのだ。ここには誰も近づきたがらない、そしてシンもこの場所にはあまり来たくはなかったが今の状況にあっているので仕方なくここを選んだ。


そんなシンの考えを余所にボイルは不安を隠せないでいた。それもそうだろう、なぜなら、


「さてと、まずは結論から言いましょうか。カレイさん、あなたが8年前に起きた王族連続殺人事件の犯人ですね」


そう、今シンとボイルの二人から3メートル程度離れた場所で立っているカレイがシンが犯人だと推理していたからだ。だがカレイはシンの言葉を聞いて一笑した。


「フッ、なにをバカなことを言うんだ君は。8年前の王族連続殺人事件の犯人はシューライン・リアスだと子供でも知っている。それに私がそれを実証したんだよ」


その通り、彼は8年前の事件を解決に導いた英雄なのだ。なのにその英雄が犯人だなんてボイルには到底思えなかった。勿論これはボイル個人の意見ではない、おそらくこの国に住むほとんどの人がそう思うだろう。だがシンはたどり着いた。彼が犯人だという証拠の数々に。


「では、その実証の矛盾から解いていきましょうか。まずあなたは一つ目の実証として王族の殺害された全ての時刻での彼女のアリバイがないことを証明しましたね」


「そうだ」


するとシンはワザとらしく首をかしげた。


「おかしいですね、ではなぜあなたは一回目の殺害が行われたときにそれを証明しなかったのですか?」


「フッ、それはその時にはまだ証明できなかったからだ」


「それもおかしいです。なぜならあなたは一回目の殺害のときにシューラインさんが殺害された部屋の方へ歩くのを見たと証言していますよね?これが本当なら一回目の殺害の後直ぐに証言すればほとんどの王族が殺されるなんて事態にはならなかったはずです。英雄が聞いて呆れますよ」


「確かに私はあの後直ぐに証言できなかった。怖かったんだよ、もしかしたら彼女が読心術から逃れられる魔法を使い無罪を証明して私を殺しに来るのではないかとね」


だがカレイはシンの言葉を聞いても余裕の表情を崩さなかった。だがカレイの口から読心術という単語が出てきてシンの顔に笑みが浮かんだ。


「『読心術から逃れられる魔法の開発』……それがシューラインさんが研究していた事だとあなたは証言した。間違いありませんね?」


「ああ、証拠に彼女が書いた研究の論文を証拠として提出した。そうだろう警備隊のボイル君」


「はい、確かにその論文は彼女の筆跡でありました。その論文は古いものでしたけど証拠としては十分……」


「とは言えませんよそんなもの」


「なんだと?」


ボイルの言葉を遮りシンは続けた。


「なぜなら、彼女が研究していた事とは『|読心魔法から逃れられる魔法の開発そんなもの』ではありませんからね」


「!?」


この言葉でカレイの表情から余裕が消えた。シンはカレイの変化を見逃さず畳みかけた。


「確かに、彼女の行っていた研究は読心魔法についての事なんですが、実際に研究していた事は『読心魔法を受けた者の心の治療に使える魔法の開発』というものでした。『読心魔法にはある程度の副作用がありその症状は記憶の混乱や感情の欠落、酷い時は発狂する者もいる。その症状をいかに治すか』というのが彼女の研究の目的でした。なぜこの研究が世に広まらなかったのか、理由は2つあります。一つ目は読心魔法の研究の規模の小ささです。私が調べた限りでは8年前の事件当時、いや彼女が存命していた期間読心魔法を研究していたのは彼女を含めてわずか6名。しかもそれぞれが個人で研究していました。そして読心魔法が使える人の少なさが追い打ちをかけたのでしょう。二つ目の理由は彼女の研究で救われる者自体が問題だったのです。そもそも読心魔法が使われる者は犯罪者だけです。さらにこの国では冤罪、誤認逮捕がほぼないので彼女の研究は犯罪者を救う物だとして秘密裏に抹殺されたんです。彼女を王の妃にして研究者としての地位を消すことによってね。しかし証拠のねつ造のためとはいえ約60ページの論文を彼女の筆跡にまねてさらに古い論文に見せるため念入りに加工するなんて感服しましたよ」


「ど、どこでそれを……」


「国立図書館です。あそこは未来に今ある本を全て残すために発行される本を全て保管する部屋があるんです。勿論生前彼女が残した研究の論文も一つの本として残されていました。発行する日時が彼女が王と結婚した日の一か月後となってましたから相当今の王、いや政治家は必至だったんでしょうね。読心魔法の副作用も犯罪の抑止力として利用しているからそんなものが確立されれば犯罪件数が増えるとでも思ったのでしょうかね。」


「だ、だがそれが私が8年前の事件の真犯人だという証拠にはならないじゃないか!」


カレイが焦っているのがシンには目に見えて分かった。その発言が暗に自分が犯人だと言っているようなものだとも知らずに。


「そう焦らないで下さい、今から説明しますから。まず殺害方法は風属性の魔法が用いられた、あなたの適正する属性は風と地で間違いありませんね?」


「あ、ああ。だが私には王族が殺害された全ての時刻のアリバイがある!私には犯行は絶対に不可能だ!」


カレイの身振り手振りがだんだん派手になってきた。確かにカレイには王族が殺害された全ての時刻のアリバイがある。警備隊が彼を疑うことが出来なった理由の一つだ。


「確かにあなたには他人によって証明できるアリバイがある、それも全て。ですがそれが意味を持たないとすればどうですか?」


「何……?」


「他の容疑者の中に、あなたのようなアリバイが全て成立する人はいませんでした。だからあなたは疑われることがなかった。ですが、もしも犯行が犯人の手を必要としていなかったらどうですか?ボイルさん例のものを」


それを聞いた瞬間カレイの顔から汗が流れ始めた。そしてボイルはシンにある物を渡した。それは小さな石だった。だがそこらに落ちている石ころとは違い、色も鮮やかな銀色で形も綺麗だった。


「これが何か分かりますよね?だってあなたが王族の教育の担当になるまで熱心に研究していた物の一つですからね」


『放魔石』、文字通り魔力を放出する石だがこの石自体が魔力を放出するのではない。この石の近くにある、もしくは接触しているものが魔力に晒されるとその魔力を吸収、そして放出するのだ。魔法決闘で使われる腕輪はこの石が材料になっている。


「あなたが研究していたことは『放魔石の魔法決闘以外の使い道』で、その中に放出される魔力を属性魔法にする方法というのがありますね?」


「……」


カレイはもう無言だった。だがシンはお構いなしに話を続ける。


「その方法を使えば誰もいない密室の部屋で風属性の魔法で人を殺すことが可能です。王族は見た目を良くするために装飾品を身に付けます。その装飾品を作る過程であなたが細工した魔石を混入させ、あとは魔石が作動するのを待ち、作動する時刻にアリバイを作っておけばあなたが疑われることはまずない。勿論証拠として殺害現場には必ず壊れた装飾品がありました。殺害するときに切られた箇所の近くに付けていた物だったため壊れていてもさほど重要視されませんでした。最後の証拠としてあなたは必ず2週間前に殺害された王族にあれこれ理由をつけて会っています。なぜなら装飾品に混入させた魔石を作動させるためにはあなたの魔力が必要だからです。あなたは風属性の魔法を使いそよ風か何かを発生させ自分の魔力を魔石に伝え、2週間後に作動するようにしたのです。作動させるのに使われた魔力は空気中にある微々たる魔力です。実際にあなたが書いた研究の論文には魔法が使えない人のために微々たる魔力でも使えるように空気中の魔力を使って放出する魔石の開発に成功したと書いています。その方法を用いればただ付けているだけで、いや空気中に触れさせておくだけで魔石の魔力が溜まり、あなたが設定した魔力に到達して装飾品、魔石が王族の肌に触れた瞬間魔法が放出されて、本当に誰もいない部屋での密室殺人が可能になります。もしも王族の着替えや化粧を使用人が担当していればこの犯行は成立しませんでしたけどね」


そこまで言うとシンは頭をうつ向かせているカレイを指さしてこう言った。


「あなたの犯行は完璧でした。アリバイ作り、殺害方法、そして偽の犯人の仕立て方。ですが全てにおいて詰めが甘かったんです。それがあなたの敗因です」


「!?待てシン君!」


そしてシンはボイルの言葉を無視しカレイに近づくために歩き始めた。


「この話は全て俺の推理でしかありません。しかもあなたは英雄です。もし私がこれを警備隊に話しても見向きもされないでしょう。だから私はボイルさんと一緒に人気のない場所であなたに全てを話しそして」


そこまででシンの言葉は止まった、いや止められた。カレイの右手から放たれた魔法により。


その魔法は『暴風砲』、自分の手から暴風を直線に出す風属性の魔法で風で飛ばされた物の落下による二段攻撃が可能な威力の高い魔法だ。その暴風砲はグォオオオオオオオオオオオっ!!!!という轟音を出しあたりの木々も飲み込み、吹き飛ばしていった。ボイルは何とか躱したがシンがどうなったかを見る余裕はなかった。


そして暴風砲が出終わり、ボイルが落ちてくる吹き飛ばされた機微に注意しながら辺りを見ると砂煙が辺りを覆っていて良く見えなかったが周りにあった木々はすべて吹き飛ばされ、シンのいた所は地面がえぐられていた。魔力を放出する腕輪を持ってないシンが生きているとは到底思えないほど無残に。


ボイルはこんな状況になることを不安に思っていたのだ。シンはもしもカレイが犯人でなかった時のことを考えてこんな人気のない場所で話すことを決めたのだろう。だがそれが裏目に出て……


「クソッ!私が人気のない場所で話をするのに強く反対していれば……」


「確かに、少年は死なずに済んだだろうな。君たち警備隊がもっと優秀であればな」


カレイは項垂れているボイルの目の前で歪な笑顔を浮かべていた。


「貴様!」


「フッ、これで私が犯人だとはだれも思うまい。君がいくら私が犯人だと騒いでも権力で押しつぶせる。もっとも今の君にそこまでの発言力が警備隊にあるとは思えんがな」


睨みつけるボイルにカレイはそれをあざ笑うかのようにこう言った。


「しかし彼は賢かったな。もしここで死ぬことがなければ我が国に多く貢献して歴史に名を残せたのにな……まぁ私が殺しにかかることを予想できなかったことを考えるとそこまで頭が良くないと言えるがな」


「残念、俺があなたを呼び出した理由はあなたがこうやって俺を殺しにかかるのを狙っていたからですよ」


その後ろからの声にカレイが振り向く前にシンは右手でカレイの右肩を掴みユーラインに使った魔法『雷掌』でカレイを行動不能にした。カレイはその場に倒れこみボイルはシンに近づきこう怒った。


「なぜここまでする必要があった!下手をすれば君は死んでいたのかもしれないんだぞ!」


「ここまでしないともみ消されるからに決まっているからでしょう。この国で名を知らぬ者がいない英雄ですよ?あなただって初めは信じてなかったでしょう」


「だが……」


「それに8年前の事件の犯人はシューライン・リアスだと世間から完全に認識されているのでそこから真犯人は他の人だと言っても誰が真犯人でも信じてもらえないです」


そしてシンはこう続けた。


「でもこれでシューラインさんの名誉が取り戻せますね」


「ちょっと待ってくれないか?8年前の事件の犯人がカレイだとしたら今起きている事件の犯人は一体……?」


そう、ボイルが聞かされていたのはカレイが8年前の事件の真犯人ということだけ。今起きている事件の犯人が誰なのかは聞かされていない。その言葉にシンは白目をむいたカレイをボイルに渡してこう答えた。


「それに関してはまず俺のお願いを聞いてくれませんかね?」


「お願い?」


「はい、俺をある場所まで連れて行ってください。そしてその場所で警護している人にさっきまでのことを話しておいてください。そうすればこの事件、全てを解決させてみせます」












どうでしたか?まぁこういったものは苦手で駄文になってしまった感があるんですが……。


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