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第十二話《捜査》












「はぁ……あの子、一向に出て来ないけど大丈夫なのかしら……」


ここ国立図書館の司書、ソラはため息を吐き心配そうにこの図書館の奥にあるとある部屋の扉を見た。


五日前のことである、ソラはいつも通り司書の仕事をしていた。王族連続殺人事件のせいで利用者がなくある程度仕事は減っていたのだが。そこに名のある研究者や学者、もしくは政治家や警備隊の重役といった限られた人しか来ないこの国立図書館には不釣合いな少年がここに来たのだ。この国立図書館はこの国で発行される全ての本を貯蔵していて確かに他の図書館より利用する者が多いと思うだろうが、実際は国にここの利用の許可を申請するなどの手順が必要で、ただ本を読みたい、軽い調べものをしたいと思っている人には敬遠されがちなのだ。


ソラは何かの間違いでここに来たのだろうと思ったが少年はあるメモを渡してきたのでそれを見るとソラは快く利用を許可した。それにソラはこの少年から知識の飢えを感じたのも利用を許可した理由の一つだった。


すると少年は直ぐに調べたい本の場所について質問をしてきた。彼は王族についての本だったり、カレイパリスンについての本、そして8年前の事件の本、という今起きている事件に関係している本ばかりで王族連続殺人事件について調べているのかと思えば、読心魔法の研究者についての本というこれまでの本とは少しずれている本まで幅広い本を読み漁っていた。それに度々この国立図書館のことについての質問もしてきた。勿論その質問にはちゃんと答えてあげた。


そして少年がここに来て半日が経過し、そろそろ帰る時間ではないかと少年に声をかけると少年は図書館の奥にある扉について聞いてきたのだ。そこにはこの国で発行されたあらゆる本の初版が保管されている部屋だと伝えると直ぐに入ってもいいかと聞かれた。勿論部屋の入室は制限されてはいないので入ってもいいと言うと一目散に少年は部屋に入り、それから4日間全く出てこないのだ。


彼は年端もいかない少年で、さらにあのメモを見る限りにはある程度信用できる人とは思うのだがあそこには色々と重大な本もあったりするのでここまで引き込まれるとと不安も少しできてくる。


司書の仕事も終わったのでソラはそろそろ部屋に入って様子を見ようと思ったその時、少年が扉を開けて戻ってきた。その顔は少しやつれてはいるが晴れ晴れとした表情になっていた。どうやら求めていた知識はここにあったようだ。


「ありがとうございました、これで失礼します。このお礼は必ずします」


少年はその一言を空に伝えて直ぐにここを出ていってしまった。ソラは誰もいなくなってしまった図書館で独り言を呟いた。


「あの子、そそっかしいわね。色々と聞きたいこともあったしそれに名前も聞いてないし……一体ルナとどういう関係なのかしら?やっぱり彼氏とかかな?」















____________________________________________________________












そして二話前の状況に戻る。


「腹減ったな……そう言えばあれから何日経ったんだ?てかこれで事件が終息していたらどうしようかな……」


シンは空腹に耐えながら城下町を歩いていた。食べ物にありつけるところはないかと探していたがあたりは暗くどうやら深夜みたいでどこの建物も開いておらずそれどころか一人も出歩いていないのだ。誰だって殺人事件が起きている辺りに深夜に出歩きたくはないと思うだろう。


「しかしあの図書館……というかこの世界には度肝を抜かれたよホント……まぁ今の状況では有難かったけど」


シンがあの部屋に入った理由はシューライン・リアス……いや、シューライン・パリスンが研究していた物の証拠を見つけるためであって4日も籠る必要はなかったのだ。だがなぜこんな結果になってしまったのかというと、調べた本を元の位置に戻そうとしているとある本棚を見つけてしまったのだ。他の本棚とは違った場所に置いてあることから特別な本だとは思ったがあまりにも無造作に置かれていたため気になって一つの本をランダムに選んでパラパラっと読んでみるとその本には30年前の窃盗事件の捜査内容が書かれていたのだ。慌てて他の本を見てみると他の事件の捜査内容が書かれていた。どうやらこの本棚にある本にはこの国で起きた事件の捜査情報が書かれているみたいだった。


シンは目を疑った、それと同時にシンの心の中が歓喜で満ちた。実はここの本にも8年前の事件の詳細を完全に書かれている本がなく、全ての詳細を知らずに捜査していたら思わぬミスを犯すと不安にもっていたのだ。だがこれでそれも解決した。しかし同時にこんな無防備な場所に捜査情報を置いていてもいいのかとこの国の情報管理に不安を感じた。


そして更に驚いたことにシンは気になってあたりを探索していると地下への階段を見つけ降りていくとその場所には戸籍やら政治の内容が書かれた本まで、この国の情報全てが揃っていたのだ。本当にこの国、この世界は平和ボケが進んでいるなと改めて痛感したシンであった。少し気が引けたがそれも捜査に使わせてもらった。


そうやって夢中で調べていくと8年前の事件の真犯人という確信が持てる人物にたどり着いた。どうやってシューライン・リアスに罪をなすりつけたのかも分かった。あくまで推測の域を脱しないが。


だがもしも犯人だという証拠があっても自分にはそれを問い詰める権限も、逮捕できる権限はない。それどころかあんな無防備に置かれた本に改ざんなんて朝飯前だろう。だから本当の真犯人が改ざんしたのかもしれないという可能性もある。それに今起きている事件の詳細と照らし合わせないと本当にそうだという確信が持てない。しかもその事件の詳細を知る手段がシンにはない。


そう、シンはこれ以上自分でできることは何もないのだ。だから今シンはこのまま一人で捜査を続けるかもしくは自分の推理を警備隊に伝えて事件の解決を他人に託すか悩んでいた。だがシンは今それ以上に腹が減っているのでどこで腹ごしらえするかを悩んでいた。


そうやって空腹に耐えながら歩いていると後ろから懐かしい声が聞こえた。


「そこの君!何をやっている!」


その声に振り替えるとそこには父親の友人で警備隊のボイルがいた。どうやら夜のパトロール中だったみたいだ。シンはボイルに向かってこう言った。


「すみませんボイルさん、食べ物を恵んでくれないでしょうか?」


予想外の一言にボイルの顔が一瞬顔が引きつった。













____________________________________________________________













「すみませんねボイルさん」


「いいんだよ、まさかこんなところで、しかもこんな時間にシン君に出会えるなんて予想できなかったよ」


シンとボイルは警備隊の宿舎にある食堂にいた。勿論シンの腹ごしらえのためだ。ボイルは食べ終わって水を飲んでいるシンにこう質問した。


「ねぇ、どうしてこんな時間に歩いていたんだい?まだ事件は(・・・・・)解決していないんだ(・・・・・・・・・)もしかしたら君が犯人(・・・・・・・・・・)の標的にされていたか(・・・・・・・・・・)もしれないんだよ(・・・・・・・・)


この言葉でシンは理解した。この事件は解決していない、そして警備隊はまだ犯人にたどり着いていない。そしてシンは一応聞いてみた。


「事件って警備隊しか捜査していないんですか?」


「ああ、そうだよ。他の人たちは王宮の警備でこっちには手が回らないんだ」


それを聞いた瞬間、シンはあることを思いついた。これならいけると、これなら犯人を追いつめることができると。早速それを実行に移した。


「ボイルさん」


「なんだいシン君?」


「話しておきたいことがあるんです。この事件でかなり重要なことでね」


「どういうことだい?詳しく聞かせてもらおうか」


シンの言葉を聞いてボイルの顔が先程までの柔らかい表情から真剣なものに変わった。


「話すには条件が2つあります。一つ目はこの事件の捜査情報を全て見せてください。2つ目は調査したいところがいくつかあるのでそこへの同行と調査の手伝いをすることですがどうします?」


「いいだろう」


ボイルの返答は即答だった。それほどに捜査が行き詰っているのかとシンは思った。


「ではまず捜査情報を見せてください。実際俺の推理は全て推測に過ぎませんからね」


シンとボイルは捜査本部のある場所まで歩いていった。捜査本部には深夜だからなのか誰もいなかった。そしてシンはそこでボイルから捜査資料を渡された。それを見るとシンの口元が緩んだ。それもそのはず、自分の予想、推理が全て合っていたからだ。だがそれと同時に悔しさもこみ上げてきた。なぜなら一人の王族それなら後は調査をして完璧に追いつめる材料を集めるだけだ。


「ボイルさん、早速調査に行きたいんですけどいいですか?勿論向かう途中まで俺の推理を教えますよ」


「勿論だ、私もそろそろこの事件に終止符を打ちたいと思っている。そのためならどんなことでもするさ」


そしてシンとボイルはそのまま調査へと向かった。そしてその日の内に調査し終わった。全てがシンの思っていた通りだった。


そしてボイルに自分の推理とそれの実証を行ったところボイルはその場に打ちひしがれた。


「そんな馬鹿な……では私たちは罪もない人を処刑してしまったというのか……」


「落ち込まないで下さいボイルさん、そうやって落ち込むのは全てが終わってからにしてください」


シンは落ち込むボイルを自分なりに励まし、直ぐさま犯人の所へ向かった。その場所は王宮の近くの大豪邸だった。そして一人の男がその家から出てきた。それを見計らってシンは玄関でその男、この家の主人にこう声をかけた。


「すみません、ちょっといいですか?」


「なんだい?生憎私は今から王宮に向かわないといけないんだが」


シンが声をかけると男はそう言ってシンとボイルを無視して通り過ぎようとした。しかしここまではシンの予想通りだった。なぜならその男は自分が犯人だと突き止められるなんて微塵にも思っていないからだ。


「待ってくださいよ、カレイ・パリスンさん。実はですね今起きている事件、いや8年前の事件でお聞きしたいことがあるんですが」


それを聞いた瞬間男、カレイ・パリスンの顔が一気に険しい表情に変わった。


「何が言いたいんだね君は。警備隊特別顧問のボイル君が連れてきているのだからそれには信憑性があるのかね?」


「勿論です、でもここじゃあ俺たちにとってもあなたにとっても都合が悪いです。場所を移しませんか?」


「お、おいシン君!君は一体何を……」


「いいだろう、では少し歩くとするか」


「はい」


ボイルの言葉など気にせずシンとカレイはどこかへ歩き始めた。ボイルは意味不明なシンの行動が理解できなかった。なぜ犯人だと推理した男と人気のない場所で話そうとするのか?一歩間違えれば今までの王族のように暗殺されかねないのに。


しかし悩んでいるボイルを尻目にシンとカレイはドンドン歩いて行った。それを見てボイルは考えがまとまらないまま急いで付いていくことにした。











前作とは違いボイルと一緒に捜査させることにしました。うまくいったかどうかは微妙ですが。



あとなぜ国立図書館に戸籍の書かれた本や国家機密級の政治の詳細が書かれた本などがあるのかというと国立図書館は王宮の書類の保管庫(シンの入った地下の部屋がそれ)になっているからです。

そしてなぜあんな無防備に置かれているのかというと、そういったものが今の今まで悪用されなかったからなんです。戦争の危険性が皆無で執る政策も国民の暮らしを良くするものだけで国家機密なんて名ばかりで別に他国にそれが盗まれてもそこまで困ることもない、凶悪事件も作中の連続殺人くらいで戸籍が悪用される詐欺事件が起きなかったからこの世界ではこういったものはそこまで重要に思われていないんです。


まぁ今回のシンの行動でいくらかは重要視されるかもしれませんが。


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