第百二十七話《ランクアップ》
「大丈夫か?」
「も、もう駄目です…」
ネビューが接客が全て終わり意気消沈しているリンに話しかけた。
「しっかし…滅茶苦茶儲かったな。まだ初日なんだけど…」
「ユーライン効果でこうなっただけだ。二日目からはこうはならんだろ」
エリスが稼ぎの合計を見て驚いていたところをシンが冷静に分析した。
「全く初日から状況が動きすぎだな」
「そうだな」
初日に起きた出来事をまとめると白い男の襲来、その白い男の主人、転生者との交渉の機会を入手、そしてミーシャと会い誘拐犯との戦闘。初日でイベントが起こりすぎである。
「それで、明日からどうする?」
「俺はあいつの主人に会いに行く。罠はないだろう、あってもどうにかするさ」
「俺たちはどうするんだ?」
シンは少し考えてやはりミーシャのことは伝えた方がいいと判断した。そしてミーシャの事は二人に任せることにした。
「…ちょっとやってもらいたいことがある」
「なんだよそれって」
「…他言無用だぞ」
シンは二人にミーシャのこと、そして襲撃されたことを話した。
「ハァ!?」
「そんなことに巻き込まれてたのか…」
「ああ、だからお前たちはミーシャを速攻で探して見張ってろ。敵が出てきたら拘束して洗いざらい吐かせろ」
「親父には伝えた方がいいか?」
「止めておけ、下手すると聖火祭が中止になっちまう。そうでなくとも怪しい動きを察知されれば相手の行動が読みづらくなる」
相手が何も察知しなければミーシャを攫うという行動しか起こさないだろうという考えだ。
「分かった、でも拘束なんてできるか?俺ぶっ放すことしかできんぞ」
「それはネビューが目暗ましで相手の動きを一瞬でも止めればエリスの魔法でどうにかなる」
「あ、そうか」
ネビューは白い男との戦闘を思い出し納得した。
「取りあえずよろしくな」
「あ、ああ…」
「いいのかお前」
シンがどこかへ行ったのを確認したエリスはネビューに聞いてみた。ネビューは普通の学生だ。なのになんで事件に協力するのか気になったのだ。
「何がだよ」
「かなりまずい事に巻き込まれてることに気づいてないのか?」
「気づいてるさ、でもあいつ一人に全て背負わせるよりましさ」
エリスはネビューの印象がお調子者から友人思いの良い男にランクアップした。