第百二十六話《爆弾発言》
結局あの後エリスとユーラインのためにセリルは帽子を取って正体を露わにした。
「…なんで男装してんだ?」
ネビューがセリルに素朴な疑問を投げかけた。
「なぜって…この聖火祭は他国の人も来るのでしょ?私が何知らぬ顔でいたらいろいろとヤバいじゃない」
「間違ってはない。だが来ないと言う選択肢はなかったのか」
確かに、と納得するネビューだった。シンはだったら来るなよと遠まわしに言った。今面倒事がわんさかと来ているのにさらに騒動の種を持ってくるなよと心の中で怒るシンだった。
「無いに決まってるじゃない」
セリルのこの言葉でシンの心の怒りがさらにこみ上げる。
「女だったのか…分からなかった」
「いや、分かれよ」
が、男らしい女のエリスがセリルの性別を見抜けなかったことにツッコんだところで怒りが少しおさまった。
「…あなたまさかあの時…」
「言うな、頼むから何も言わないでくれ」
ユーラインが何か聞こうとしたがシンは最後まで言わさなかった。
「それにさ、こういう時にしかお義兄さんはお義姉さんになれないんだから」
「…はい?」
「ど、どういうことですの?」
事情を何も知らないユーラインとエリスはセリルの言葉の意味が全く分からなかった。
「おいちょっとこっち来い」
セリルの爆弾発言でシンの怒りが一気に噴出した。シンはセリルを誰もいない教室へ引きずった。ネビューは心配になってついて行った。
「おいシン、まさかと思うが…」
「ああ、なぜか俺の家の養子になった」
「ふざけんなよシン!なんでお前そんないい思いしてんだよ!バラすぞ!女装のこと皆にバラすぞ!」
「やってみろよ」
ネビューは嫉妬でシンの胸ぐらをつかんだがシンの威圧に負けて手を放した。
「…すまん」
「で、何がしたいんだお前は?」
「だってこうでもしないとココロお姉さんになってあの二人に会いにいかないでしょ?」
二人とはシャルドネとルナの事である。ちなみにネビューも事件解決後にボイルからシンの首都での行動を聞かされているためそれが誰なのか知っている。
「当たり前だ!誰が積極的に女装なんてするかよ」
「結構似合ってんのに…」
「そうだそうだ!覚悟を決めろシン!」
「殺すぞネビュー」
シンはなぜか残念そうな顔をするセリルと煽るネビューを視線で殺すような目で睨んだ。
「お前なんか酷くない!」