第百ニ十三話《罰》
シンがお化け屋敷のある教室に向かおうとする最中、物凄く長い行列があった。その行列の正体は並んでいる人の言葉で直ぐに分かった。
「早く会いたいなぁ〜」
完全にユーライン目当てでお化け屋敷に並ぶ人たちの行列だ。こうなる事は予想してユーラインの担当時間を極端に短くしておいたのだが…。
並ぶ人たちを余所目に受付のところまで行くとそこにはもうとっくに担当時間を過ぎているにも関わらずまだ受付をやっているユーラインと申し訳なさそうに手伝っているリンの姿があった。シンは何故こうなったか大体把握した。
早速リンを受付から離し説教を始めた。
「で、どうやったらこうなった?」
「いえ…その…良かれと思ってユーライン様が受付を担当する時間を宣伝してしまいましてね…でもこれで大繁盛してますよ!」
リンは申し訳なさそうに言っていたが最後の最後で開き直ってしまった。これがシンの印象を最悪にしてしまった。
「何のためにユーラインの受付担当時間を短くしておいたのか分かってんのか?ユーラインが受付をしていたという噂を元に来たお客さんを取り込むこととこうやってユーライン目当てのお客さんからユーラインの負担を軽減させるためだ!それに担当時間を短くしておけばユーラインがいたかもしれない程度に収める事が出来るだろ!ユーラインを見るだけのお客さんを出来るだけ減らせるだろ!外まで続くこんなに長い行列は出来ないだろ!」
「そ、そうだったんですね…」
「どーすんだよこれ!もうユーライン引っ込められなくなったじゃないか!」
このままだと態度の悪い客がユーライン何処だと騒ぎ立てたり下手を打てばユーラインが居ないと閑古鳥が鳴く始末になりかねないと頭を抱えるシン。そこにエリスが荷車を二つ押して来た。
「すまん、遅くなった」
エリスを見てシンは閃いた!
「エリス、実はな…」
数分後、そこには元気に接客をするユーラインの姿があった。しかしそれを遠目で見ているシンとエリスの横にもユーラインがいた。
「いらっしゃいませ、お化け屋敷にようこそ」
「声を似せるのは無理だったがユーラインの声なんて聞いたことのない奴らばかりだから誤魔化せてるな」
「本当、凄いですわねあなた…」
「まぁ、ね」
実は接客をしているのはユーラインに変装したリンである。シンが思いついた策とはこうなったらこの事態の元凶であるリンをユーラインに変装させようというものだった。エリスの魔法ならば皮と髪さえあれば変装マスクを作るなんて訳ない。後は休憩と称してユーラインを受付から裏方へ呼び、本物とリンを入れ替えれば完璧である。勿論これは苦肉の索である。後でリンにユーラインが受付をやってる事はデマだと拡散、情報操作させるだけだ。
「あの子、大変ね」
「ま、情報操作は手伝ってやるか」
「そうだな」
「いきなり出てくるなよネビュー…」