第百十七話《煙幕》
「ごちそうさま」
ミーシャは山ほどあった食べ物をペロリと平らげてしまった。どうやったらこんな小さな女の子の腹の中にあんな量の食べ物が入るのか理解できないシンだった。
「おう…」
そんな中シンは変な視線を複数感じていた。殆どが微笑ましい兄妹を見る視線だったがその中に不気味な視線があるのを察知した。
「…ミーシャ、肩に乗れ」
「え?うん」
ミーシャを肩車してシンは勢いよく飛んだ。
「うわぁ!?」
「すまん、驚かせてしまったな」
いきなりのことでミーシャは驚いてしまった。だが少し楽しそうだった。そしてシンは全く人気のない場所を見つけてそこに降り立った。
「ここなら…」
ミーシャを降ろして少し待っていると二人の男が襲いかかってきた。
「キャア!?」
「やっぱり来たか!」
シンは襲撃を予想していた。だから冷静にミーシャを抱えて戦闘を開始した。だが男たちはただ素手で襲い掛かってくるだけだった。
「ふん!」
「グヘェ!?」
「ゴハァ!?」
シンは二人の顎に拳をクリーンヒットさせて倒した。かなり弱かった。襲撃してきた内の一人がまた意識があったので尋問することにした。
「おいお前、話を聞かせてもらおうか」
すると男は笑ってシンにこう持ちかけてきた。
「くっ、お前も、俺たちに、協力しないか?そいつを、使えば、巨万の、富を得ることが、できるぞ?」
「狙いはミーシャか。悪いが話は断らせてもらう」
シンはさらに聞き出そうとしたらシンの足元から煙玉が投げ込まれ視界を奪われた。
「煙幕か、俺には効かんぞ」
だがシンは直ぐにミーシャを抱えて相手の場所を音で察知して逃げようとする男たちに追い打ちを仕掛けた。
「な、なんで場所が分かるんだ!?」
手ごたえがなかったため寸前で躱されたようだ。
「教えるか馬鹿ども」
シンはさらに追い打ちをかけようとしたがどこかから氷の槍が飛んできてそれを弾いて躱した。すると煙幕は晴れると男たちの姿はなかった。
「ちっ、逃がしたか」
「…」
ふとミーシャを見るとミーシャは恐怖で震えていた。またもや面倒くさいことに巻き込まれたみたいだ、とシンは溜息を吐いた。