第百六話《錯乱》
この場から逃げたい。今までで一番思ったことだろう。実際リンを置いて逃げたい。だがここで逃げるのは怪しすぎる。
「あ、あの!」
「な、なんだ?」
シャルドネはどうやら緊張している、まさかこの場で気持ちを伝えようとしているんじゃないだろうか。止めてくれとここまで思ったこともない。
するとシャルドネの後ろに誰かいるのに気付いた。リンを迎えにきたネビューだった。シンにはネビューが一瞬だけ救世主に見えた。だが気づいた、こいつは自分が女装をしていたことを知っている。明らかにヤバいことに気づくシンだった。
「おっシン。リンを渡し…」
「黙らっしゃい!」
「!?」
「!?」
シンは錯乱している!
「ほらリンだよ。早く帰れよおい」
「お、おう…」
シンはネビューにリンをを渡して厄介払いした。
「おいここは一年生の階だよ何しに来たんだよ」
さらにシャルドネにも何も言わせずに厄介払いしようとした。
「え、えっと…」
「あ、あーそうか、長…」
するとネビューは何で錯乱しているのか大体わかってしまった。しかしシンはネビューの口から長期休暇の単語を言おうとしたその瞬間素早く腹に正拳突きを食らわして物理的に黙らせた。
「ふんぬ!」
「グハァ!?…俺が何したってんだ…」
そのままネビューは倒れた。今の状況は泡を吹いて倒れるリンと腹を押さえて倒れるネビューと明らかに錯乱しているシン、そしてキャラが崩壊しておどおどしているシャルドネ、言ってみれば混沌である。
「あ、あの…」
「ああん?」
「…なんか面白いな」
エリスはこっそりと錯乱しているシンを面白そうに眺めていた。その後シンはエリスにいじられ続けるのだった。




