第百四話《協力》
「…」
二人の間に緊張感が漂う中、エリスが呟いた。
「やっぱり世界中で陰謀を重ねているのか…」
その一言によりシンはエリスが首謀者ではないと確信を持った。そもそもシンはエリスが首謀者である可能性は薄いと考えていた。あんな簡単な鎌にかけられる人間が首謀者ならもっとボロを出しているからだ。
「疑って悪かった。お前は違うようだな」
「…お前、何者だ?」
「お前と同じ転生者だ。地球では田村心という名前だった」
「私は近藤絵里って名前だった。どうやらあっちでは知り合いってオチではないらしい」
二人が地球での名前を名乗った所でシンは本題へと話を移した。
「だな。さて、お互い首謀者のことを知っているようだし情報交換しようじゃないか」
「そうだな、こっちは凄い数の人が死んだ。この国では王族が滅亡しそうになったらしいな」
「ああ」
そしてシンとエリスはお互いに持っている首謀者についての情報、そして首謀者によって引き起こされた事件の詳細を話した。シンは王族連続殺人事件とブィント軍国王女暗殺未遂事件と白い男の話をした。
トゥール王国で起こった事件は賢者の石事件らしい。ある一人の技術者が首謀者にありとあらゆる物質に変換できる脅威の石、賢者の石の製造方法を話したことが発端で材料が生きた人間だったため数多くの人が行方不明になったらしい。しかもそれが他の技術者の耳にも入りトゥール王国は行方不明者が爆増して大騒ぎになったらしい。ただエリスが賢者の石を造った技術者を全て捕らえて何らかの方法で賢者の石となった人たちを元に戻してどうにかなったらしい。何かどこかで聞いたことのある話だとシンは思ったがこれ以上考えるとヤバいことになる予感がして考えるのを止めた。
「賢者の石ねぇ…トゥール王国にしてみれば喉から手が出るほどの代物だな」
「ああ、数多くの技術者がその石の虜となってしまった。おかげで私はここ数年大忙しだった」
「そうか」
「そっちの方は大変だったみたいだな。二回も国家転覆されそうになるなんて」
「ああ、そっちみたく犯人が分かりやすい事件だったらどれだけ楽だったか」
「さて、これからどうするんだ?」
情報交換を行った二人だったが結局首謀者の正体に近づける有力な情報は得られなかった。
「ああ、さっき言った通り他の転生者が聖火祭に来る可能性がある。そいつと情報交換してから今後のことを考えようと思う」
もう一人の転生者も同じように首謀者の情報なんてあまり持っていないと予想しているが
「そうか、だから自由な時間が取れるように無人でもできるお化け屋敷にしたんだな」
「不可抗力だったがな。協力してくれるな」
「勿論、とっとと首謀者をとっ捕まえたいしな」
こうしてシンとエリスは首謀者を捕まえるために協力することになった。